『不滅の恋人たちへ』は、最悪。作者のマスタベ作品、作者だけが気持ちいい、美しい画面があるだけの熱帯魚の水槽のようなもの。
 と、前述した。
 そのことにまちがいはない。
 出演している生徒にも、そのファンにも同情したし、自分の好きな人がこの作品に出ていないことに胸をなで下ろしもした。

 しかし。

 ごめん、ある意味わたし、この作品の「存在価値」を認めているの。

 『不滅の恋人たちへ』って、たしかにどーしよーもない駄作だけど、主演ファンにはオイシイよね?

 この作品の主役ミュッセは、ほとんど一人芝居という出番の多さだ。出ずっぱりで、さらに衣装がすごい。豪華かつ美しい衣装をとっかえひっかえ、意味もなく着せ替え人形状態。台詞も多いし、歌もある。
 たとえ、「内容的に言えば真の主役はチャルさん」であったとしても、とりあえず出番が多いんだから、ファンはたのしいだろう。
 そして、なにより。

 ラヴシーンが多い。

 いろいろ取りそろえてます。
 愛を語り、愛に悩み、愛に壊れる。
 恋愛モノを見たい、というファンのニーズにぴったり。

 さらに。

 すみれコードぎりぎり?! な愛欲シーン有り!!

 いやその、タニちゃんがやるからお笑いになっちゃってるけど、ふつーはものすごくエロいシーンだからコレ!
 みんなが見たい、鼻息まじりに見たい、ものすごいシーンのはずなんですってば。

 ストーリーがなくても、ミュッセとその影のふたりしか登場人物いなくても(相手役のサンドすら、存在価値薄い……)、わけわかんなくても、どーしよーもない駄作でも、この「床をごろごろ愛欲シーン」があるだけで、お釣りが来ます!

 駄作上等、ファンなら通え!! ……という作品です。

 それは、「タカラヅカ的に正しい」と思うの。
 どれだけ正しくおもしろく作られた作品でも、ファンが「こんな**ちゃん、見たくない!」と思うよーなものは失敗だと思うように。

 『不滅の恋人たちへ』は駄作だと思っているよ。作劇的にダメだろコレ、と思っている。
 「タカラヅカ」でやるな。エンタメ書けない、同人誌を作りたいだけなら、ひとりでやれ。と思っている。
 だけど、それと同時に、「タカラヅカ」だからかろうじてOKとも思っているんだ。矛盾するようだけど。

 現に、タニちゃんファンは絶賛しているんじゃないの? わたしはよく知らないけど。
 わたしやわたしの周囲の友人たちには、タニちゃん演じるエロシーンは「童貞くんがすげーがんばってるなあ。経験豊富に見せようとして盛大に自爆してるなあ」てふうにしか見えないけど、ファンにはきっと、「タニちゃんてばなんてエロいの! ドキドキ! キャー!!(鼻息)」てなふーに見えてるんじゃないのかしら。ファンってそういうものでしょ?

 その「ドキドキ! キャー!!」だけで、ファンはお金を出せる公演だと思う。

 タニちゃんの演技が実際どうかはこの際問題ではないのよ。
 ファンがよろこぶものでさえあれば、いいんだもの。

 演技には相性がある。
 わたしはタニちゃんのキャラクタとその「光」を愛でているけれど、演技とは相性がよくないようで、彼の「大人の男」や「セクスィなラヴシーン」は心に響かず、どっちかっつーと笑いツボ直撃してしまうんだわ。
 おそらく演技の相性のいい人たちが彼のファンになっているのだろうから、わたしに響いてこなくても無問題。要はタニちゃんファンがよろこんでさえいればいい。
 ……うれしいよね? この作品、この愛欲シーン。

 だってさ。
 笑いの発作を必死にかみ殺しながらわたし、考えていたもの。タニちゃんだから笑えて仕方ないけど、これがともちだったら、わたし大喜びしているもの。

 とんでもない駄作だわ、太田め!
 と、文句を言いつつも。

 床をゴロゴロ転がってエロエロしているのがともちだったら、わたし、他の全部ゆるしてる(笑)。
 それだけでドキドキして、それだけを見に、リピートしていると思う(笑)。

 だから「正しい」作品。「タカラヅカ」として。

 
「ミュッセがともちだったら、きっとエロかったよー」
 と言ったら、友人たちから同意の声が返った。
 きっとあひくんでもそうだよね。
 そりゃま、「ともちが転がったら、バウ狭すぎ」とかいう声も上がったがな(笑)。

「ともち主演だったら、それだけで通える」
 と言ったら、それにも同意の声が返った。

 主演のファンが「通える」シーンがある、それなら成功。それなら正しい。
 わたしのあの人が主役だったら、と考えさせる、それなら成功、それなら正しい。

 同意の声に後押しされて、わたしはさらに言いましたともさ。

「まっつがミュッセだったら、よろこんで通うもん」

「……ええ〜〜?」(語尾下がる)

 ちょっと待てMyフレンズ。何故そこで疑問の声。

「まっつはないでしょ」
「まっつが床ゴロゴロ? 笑うでしょソレ」
「ビスクドールの美貌よ? 金髪だとか薔薇色の頬だとか台詞にあるのよ?」

 笑わないわよっ、似合うわよっ!!

 まっつはクラシカルだから、太田芝居が似合うって前にわたし書いたわよ。口跡はっきり声のいい人だから、太田の朗読劇は得意分野よ。シリアス芝居できる人なんだからっ。
 てゆーかまっつきれーだってばっ。そりゃタニちゃんみたいな美貌の妖精さんじゃないけど、そこまできれーじゃないけど、でもでも美形だってば、美形になれるってば。
 床ゴロゴロだってできるってば。てゆーか想像するだけでドキドキしますってば。

 なによーっ、みんなまっつのことお笑いキャラだと思ってる? ヘタレ男だと思ってる? ……いやその、否定はしないけど、つかわたしもそのよーな愛で方をしてきたけど……ゴニョゴニョ。

 でもとにかく、まっつならゆるす。この駄作『不滅の恋人たちへ』。
 どれだけ作品嫌いで作者のスタンスが嫌いで、「まちがいまくりだ、作劇!」と怒っていても。
 まっつが主役なら、すべて許して鼻息荒く通ってる!

 ……つまりは、そういうことだ。

 駄作上等、ファンなら通え!!
 主演ファンにだけは「名作」になり得る作品。

 よかったね、タニちゃんファン。きっと、たのしいよね?
 

 ただ。

 主演以外で贔屓がこの作品に出ていたら、怒り心頭だったと思う(笑)。
 出てないから、こーやって「所詮外野」としてのんきにしていられるけど。


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