別の宇宙から来た人。@花の道 夢の道 永遠の道
2006年1月2日 タカラヅカ 麻実れい、うさんくせーっ!!(笑)
『花の道 夢の道 永遠の道』でいちばんウケたのは、他でもないターコさんだ。
いやあ、おもしろかった。大爆笑。
こんなにおもしろい人だとは知らなかった。
登場からして、ハンパではなかった。
第2部はOGコンサート。
まずずんちゃんが出て、その歌唱力で空気を変える。
第1部が小林公平氏による素人指揮と実力がかなりアレな宝塚歌劇団オーケストラの演奏という、「帰ろうかな……」「まちがえたかな。あたし、ここにいていいのかな」と観客をドン引きさせる演目であっただけに。
おまけに、書いてある原稿を読み上げるだけなのに、3行に1回は噛む、素人丸出しの司会者がさらに「大丈夫なのか、この公演」という不安感をあおり、すばらしいわけでもなんでもない素人文章である小林氏のエッセイを褒め称えながらだらだら読み上げるという構成に絶望感が募っていただけに。
それらの空気を、ずんちゃんが払拭してくれた。
『エクスカリバー』の主題歌を朗々と歌い上げたずんちゃんに、返された拍手の温度がちがった。音がちがった。
ああ、観客の心がひとつになっている。
第1部の拍手は、こんな音じゃなかったもの。わたしは午前午後と2回続けてこの公演を観たんだが、2回ともここの拍手の盛り上がり方が同じだったので「みんな同じ気持ちなんだわ」と安心した。
ずんちゃんが出てくるまでのこの公演、かなりやばかったよねええ?(笑)
ずんちゃんが歌い、ドン引きしていた観客がほっと息をついた。
次に登場したいっちゃんで、よーやく「ミュージカルスターのコンサートを観に来たんだ」ということに気づく。
たぶん、歌唱力ではずんちゃんの方が上だろう。でも、表現力で勝っているのがいっちゃんかな。過分にハートフルで、少々暑苦しい歌声(笑)。
持ち歌の「愛と死の輪舞」をトートになりきって歌い、わざわざ衣装を替えて、スカーレットの「明日になれば」を歌う。
わたしは、そのいっちゃんが銀橋で力強く絶唱しているときに、ライトのあたっていない本舞台に気を取られていた。
次のスターが、銀橋でスタンバッているんだわ。
その、姿が。
ごめんいっちゃん。
歌っているあなたより、真っ暗な銀橋で黄昏て立っている麻実れい様に釘付けでした。
なんなのあれ。
おもしろすぎだ。
ただ、立っているだけなんだけど。
片方の肩をあげ、うつむき、入っちゃってるの。
そこに、なんかいる。
立っている。
なんか、とんでもない生き物が立っている。
いっちゃんが拍手と共に去り、銀橋にライトがあたった!
暗闇で黄昏ていた男が、その光にふっと顔を上げる!
シニカルに、セクスィに口元だけで笑い、男は歌い出す。「君はマグノリアの花の如く」、レット・バトラーだ。
丈の長いジャケットに、細身のブラックジーンズ。年齢不詳の色男はお貴族さまのよーな裾巻き毛のロングヘアを無造作に背中に流し、自意識過剰の巻き舌とハスキィヴォイスでねっとりと歌い上げる。
その声、歌い方、仕草、表情、立ち居振る舞いのひとつひとつ、そのすべてが。
胡散臭ぇ。
も、どっから見ても完璧に、胡散臭いのよっ!!(笑)
色男の名は、麻実れい。
年齢不詳、性別不明。
あれはなんですか。人類ですか。
別の宇宙から来た人ですか。
司会の檀ちゃんとのサムいトークのあと(檀ちゃんは誰を相手にしても自爆していた)、麻実れい様は『はばたけ黄金の翼よ』から2曲つづけて披露する。
ねっとりこってりストーカー風ラヴソング「君を愛す」。まさにお貴族様な立ち居振る舞いで、美形オーラをばしばし出して陶酔したまま銀橋を渡る。
すげえ。すげえよ麻実れい。そのトップテンションはなにごと? 恍惚としてらっしゃいますが。
そーやって銀橋中央まで来た彼は、わたしたちに背中を向けた。曲調ががらりと変わる。突然、ノリノリです。麻実れい様はくるりと振り向いて、すばらしい勢いで腰をお振りになり、「いえいっ」な調子で「はばたけ黄金の翼よ」を歌いはじめる。
わわわ。
さらに進化系ですか! あわてて手拍子を入れる観客。麻実れい様はさらにキレよくキザりまくり、恍惚の極地で歌を終えられたのでした。
爆笑。
声を出せないので、口を押さえてじたばたしちゃった。
素敵。
すばらしすぎるよ、麻実れい。
こんな人だったの? ビデオでしか見たことない人だったんだけど。ビデオでだけど、「めちゃくちゃかっこいい!」と思っていた人だったんだけど。『ハムレット』観に行ったけど、こんな人だとはわかんなかったよ。ストレートプレイだったから?
ヅカの舞台でナマで見るのは2回目、1回目は『ノバ・ボサ・ノバ!』の前夜祭で、しいちゃんに、「将来トップになる」とかなんとか言っていたことしかおぼえてねえ(笑)。
こんなにすばらしいキャラクタだったとは。
麻実れい様と入れ違いで大階段に登場したのは、言わずとした大御所、鳳蘭。キラキラ付き黒燕尾でこれまたトップテンション。「ハッ」とか「ウッ」とかゆーノリで「セ・マニフィーク」熱唱。腰振り振り。
こちらは、濃い。派手。
いいも悪いもなく、場を盛り上げてしまう。
こってこての「タカラヅカ」。吉本に通じる脂ぎった空気感。
ああ、「時代」の差だな。と思った。
これは「現代」ではない。大昔、こんな時代がたしかにあったんだろう。タカラヅカは時代錯誤に「現代」とは別のところにある文化だけど、それでも時は流れているんだ。鳳蘭は、たしかに「過去」の人だ。
でも、この人のすごさは、「過去の人」であるにも関わらず、現代を「自分の時代」に引き寄せてしまうことだ。自分が遅れている、終わっている、なんて認めない。自分のいるところこそを「今」にする力。
すげえなあ。
ときめくことはないが、素直にその「力」に敬服。一生この人はこのままなんだろう。かっこいいよそりゃ。
おもしろかったんだよ、鳳蘭。
関西のおばちゃんそのもののトークがではなく、キャラクタそのものが。
その濃くくどく、攻撃的で露悪的で時代錯誤な芸風を含め。
いやあ、こってこて。おもしろー。
わたしはそれでも現代人だから、この昭和中期のまま時が止まった人に惚れ込むことはないし、タカラヅカがこの人の時代まで戻ってしまったら嫌だけど、たまにこうして「過去のタカラヅカ」を味わうのもいいかもしれない。と、はじめて思った。
たまになら、すげーおもしろい。
タイムマシン感覚。
昭和中期の日本がそこに。
続く〜。
『花の道 夢の道 永遠の道』でいちばんウケたのは、他でもないターコさんだ。
いやあ、おもしろかった。大爆笑。
こんなにおもしろい人だとは知らなかった。
登場からして、ハンパではなかった。
第2部はOGコンサート。
まずずんちゃんが出て、その歌唱力で空気を変える。
第1部が小林公平氏による素人指揮と実力がかなりアレな宝塚歌劇団オーケストラの演奏という、「帰ろうかな……」「まちがえたかな。あたし、ここにいていいのかな」と観客をドン引きさせる演目であっただけに。
おまけに、書いてある原稿を読み上げるだけなのに、3行に1回は噛む、素人丸出しの司会者がさらに「大丈夫なのか、この公演」という不安感をあおり、すばらしいわけでもなんでもない素人文章である小林氏のエッセイを褒め称えながらだらだら読み上げるという構成に絶望感が募っていただけに。
それらの空気を、ずんちゃんが払拭してくれた。
『エクスカリバー』の主題歌を朗々と歌い上げたずんちゃんに、返された拍手の温度がちがった。音がちがった。
ああ、観客の心がひとつになっている。
第1部の拍手は、こんな音じゃなかったもの。わたしは午前午後と2回続けてこの公演を観たんだが、2回ともここの拍手の盛り上がり方が同じだったので「みんな同じ気持ちなんだわ」と安心した。
ずんちゃんが出てくるまでのこの公演、かなりやばかったよねええ?(笑)
ずんちゃんが歌い、ドン引きしていた観客がほっと息をついた。
次に登場したいっちゃんで、よーやく「ミュージカルスターのコンサートを観に来たんだ」ということに気づく。
たぶん、歌唱力ではずんちゃんの方が上だろう。でも、表現力で勝っているのがいっちゃんかな。過分にハートフルで、少々暑苦しい歌声(笑)。
持ち歌の「愛と死の輪舞」をトートになりきって歌い、わざわざ衣装を替えて、スカーレットの「明日になれば」を歌う。
わたしは、そのいっちゃんが銀橋で力強く絶唱しているときに、ライトのあたっていない本舞台に気を取られていた。
次のスターが、銀橋でスタンバッているんだわ。
その、姿が。
ごめんいっちゃん。
歌っているあなたより、真っ暗な銀橋で黄昏て立っている麻実れい様に釘付けでした。
なんなのあれ。
おもしろすぎだ。
ただ、立っているだけなんだけど。
片方の肩をあげ、うつむき、入っちゃってるの。
そこに、なんかいる。
立っている。
なんか、とんでもない生き物が立っている。
いっちゃんが拍手と共に去り、銀橋にライトがあたった!
暗闇で黄昏ていた男が、その光にふっと顔を上げる!
シニカルに、セクスィに口元だけで笑い、男は歌い出す。「君はマグノリアの花の如く」、レット・バトラーだ。
丈の長いジャケットに、細身のブラックジーンズ。年齢不詳の色男はお貴族さまのよーな裾巻き毛のロングヘアを無造作に背中に流し、自意識過剰の巻き舌とハスキィヴォイスでねっとりと歌い上げる。
その声、歌い方、仕草、表情、立ち居振る舞いのひとつひとつ、そのすべてが。
胡散臭ぇ。
も、どっから見ても完璧に、胡散臭いのよっ!!(笑)
色男の名は、麻実れい。
年齢不詳、性別不明。
あれはなんですか。人類ですか。
別の宇宙から来た人ですか。
司会の檀ちゃんとのサムいトークのあと(檀ちゃんは誰を相手にしても自爆していた)、麻実れい様は『はばたけ黄金の翼よ』から2曲つづけて披露する。
ねっとりこってりストーカー風ラヴソング「君を愛す」。まさにお貴族様な立ち居振る舞いで、美形オーラをばしばし出して陶酔したまま銀橋を渡る。
すげえ。すげえよ麻実れい。そのトップテンションはなにごと? 恍惚としてらっしゃいますが。
そーやって銀橋中央まで来た彼は、わたしたちに背中を向けた。曲調ががらりと変わる。突然、ノリノリです。麻実れい様はくるりと振り向いて、すばらしい勢いで腰をお振りになり、「いえいっ」な調子で「はばたけ黄金の翼よ」を歌いはじめる。
わわわ。
さらに進化系ですか! あわてて手拍子を入れる観客。麻実れい様はさらにキレよくキザりまくり、恍惚の極地で歌を終えられたのでした。
爆笑。
声を出せないので、口を押さえてじたばたしちゃった。
素敵。
すばらしすぎるよ、麻実れい。
こんな人だったの? ビデオでしか見たことない人だったんだけど。ビデオでだけど、「めちゃくちゃかっこいい!」と思っていた人だったんだけど。『ハムレット』観に行ったけど、こんな人だとはわかんなかったよ。ストレートプレイだったから?
ヅカの舞台でナマで見るのは2回目、1回目は『ノバ・ボサ・ノバ!』の前夜祭で、しいちゃんに、「将来トップになる」とかなんとか言っていたことしかおぼえてねえ(笑)。
こんなにすばらしいキャラクタだったとは。
麻実れい様と入れ違いで大階段に登場したのは、言わずとした大御所、鳳蘭。キラキラ付き黒燕尾でこれまたトップテンション。「ハッ」とか「ウッ」とかゆーノリで「セ・マニフィーク」熱唱。腰振り振り。
こちらは、濃い。派手。
いいも悪いもなく、場を盛り上げてしまう。
こってこての「タカラヅカ」。吉本に通じる脂ぎった空気感。
ああ、「時代」の差だな。と思った。
これは「現代」ではない。大昔、こんな時代がたしかにあったんだろう。タカラヅカは時代錯誤に「現代」とは別のところにある文化だけど、それでも時は流れているんだ。鳳蘭は、たしかに「過去」の人だ。
でも、この人のすごさは、「過去の人」であるにも関わらず、現代を「自分の時代」に引き寄せてしまうことだ。自分が遅れている、終わっている、なんて認めない。自分のいるところこそを「今」にする力。
すげえなあ。
ときめくことはないが、素直にその「力」に敬服。一生この人はこのままなんだろう。かっこいいよそりゃ。
おもしろかったんだよ、鳳蘭。
関西のおばちゃんそのもののトークがではなく、キャラクタそのものが。
その濃くくどく、攻撃的で露悪的で時代錯誤な芸風を含め。
いやあ、こってこて。おもしろー。
わたしはそれでも現代人だから、この昭和中期のまま時が止まった人に惚れ込むことはないし、タカラヅカがこの人の時代まで戻ってしまったら嫌だけど、たまにこうして「過去のタカラヅカ」を味わうのもいいかもしれない。と、はじめて思った。
たまになら、すげーおもしろい。
タイムマシン感覚。
昭和中期の日本がそこに。
続く〜。
コメント