「かっこいい」役が、かっこよく見えない。
 それはかしげのせいだろう。
 セクシーな持ち味のある人が演じれば、ローリーの持つ「暗い過去」「愛の傷」等の「設定」も活きていたと思う。

 ローレンスというキャラをぶち壊しているのは、かしげなのか……。

 雪バウ『DAYTIME HUSTLER』の話。

 そこにいるのは、いつもかしちゃんで。
 いつもとちがうのはビジュアル系を意識したよーな髪型と、目をすがめる変な表情。
 あとは、ふつーにいつものいい人。ほっこりあたたかい、まぬけな善人。みんなのお友だちキャラ。
 イケメンホストに変身して、思い切りかっこつけて登場して、「ぷっ」と観客に笑われていたりする男。いやその、実際わたしの隣の席の人、かしげがバリバリキザにキメて出てきた瞬間吹き出してたし。

 「設定」と「現実」が乖離しているかなしい姿。
 かっしー、それでいいの? イケコ、それでいいの?

 わたしがこの作品にのりそこねた理由のひとつは、ソレだろう。

 
 初見のときに壮トニーに引っかかり、初見・再見と通じてかしローリーに引っかかり、再見の折りによーやくいづシルヴィアに首を傾げた。

 えーと。

 いづるん演じるヒロインのシルヴィア、微妙に演技、やばくない?

 かっしーは「いつものかっしー」なので、見慣れたものなのよ、わたしにとって。
 なのに、かしちゃんの演技があちこち浮いて見えた。空回って見えた。
 何故か。
 それを考えたの。

 かしちゃんの演技が空回って見えるときって、相手がいつも決まっていた。

 壮トニーといづシルヴィア。
 ……2番手とヒロインかよ……とほ。

 このふたり以外の人と演技しているときは、別に浮いてない。
 逆に言えば、このふたりが浮いているということだ。

 壮くんはいつも素敵に浮いている人なので、かしちゃんに限らず誰を相手にしても噛み合わせが悪いのはいつものことだから置くとして、意外だったのはいづるん。
 男役時代、いづるんの演技に対してそんな風に思ったことは一度もない。
 むしろ地味で堅実、繊細な演技をする人だと思っていた。

 なのに、どうして?

 2度目の観劇のときに、答えに辿り着いた。

 こんなに「女」に特化した女、いねえって。

 シルヴィアは、あまりに「女」だった。
 言動や立ち居振る舞いが、「男性の演じる女性」的だった。
 オカマさんが、本物の女性以上に女っぽい仕草をするような。
 ちょっとしたことが、いちいち大袈裟に「女」を意識し、「女」であることをアピールしていた。

 大劇場でドレスを着て時代物を演じる分には、べつに気にならないかもしれない。
 でもここは小さなバウホールで。
 インターネットだのメールだの、イケコが大好きなイマドキ(笑)な単語の飛び交う「現代」で。
 いづるんの演じるシルヴィアは、あまりにも大仰だった。

 かしちゃんはふつーな、わりと自然体な演技をしている。
 でもいづるんは大仰な女おんなした演技。

 ……そりゃ、噛み合わないわ……。

 そこに、やはり熱意をこめて空回りしている壮くんが加わるわけだ。

 ……すごい……すごいことになってるよ、ママン。

 
 えーと。
 繰り返すけど、演技ってのは「好み」の問題だ。共感を呼ぶ部分が人間ひとりずつチガウわけだから、ある人にとっての「演技巧者」がある人にとっては「大根役者」かもしれない。
 わたしにとって共感できない演技をする人が、大根役者だとは限らない。

 だから、わたしが今ここで書いていることなんて、わたし個人の「好み」の問題でしかなく、正解であるはずも世の評価であるはずもない。

 ただわたしには、主要人物3人の演技が、ものすげー不協和音を奏でているよーに感じられた。

 のれないわけだわ……。
 作品はふつーに、よい作品なのに。高尚ではないけど罪のない、よくある娯楽作品(誉め言葉。お約束遵守の作品は心地よい)なのに。

 
 とまあ、ここまで書いておいて。

「かしちゃんローリーに、一瞬ときめいちゃったわ」

 と言ったら、kineさんに真顔で「どこに?」と返されちゃいましたが。

「ローリーがシルヴィアのことを、はじめて『お前』って呼び捨てるところ。かしちゃんに『お前』って呼ばれたい」

 と言ったら、これまた真顔で「ほんとにファンなんだ」と返されましたが(笑)。

 だからファンだって言ってるじゃん!!
 言いたいことは山ほどあるけど、結局は好きだから仕方ないのよ(笑)。

 イケコの素敵なワンパターン「障害物越しのラヴシーン」で、鉄格子越しに愛を歌うローリーとシルヴィア。

「お前に会いたい」

 ……って、言われてえ!!
 かっしーに言われたいよーーっ!!(笑)

 
 どーにもこの公演にはのれないとわかったので、観劇は2回で打ち止め、ヘビロテする必要はナシと思ったけれど。
 『アメパイ』くらいチケットが束になって階段下で売られていたら、もう少し通っていたかもしれない。

 ローリーはたぶん、「設定」上では、「脚本」上では、「いい男」だと思う。「いい人」ではなく。
 「いい人」にしてしまったのは、かしげ。かっしーの持ち味。そんなかしちゃんに情けない思いはあるんだけど、そーゆー情けなさも好きだったりするから仕方ない。
 彼の欠点は認めた上で、それでも通うことはできる作品だよ。

 ふつーにおもしろい脚本だから。ツボを押さえた演出がしてあるから。
 そりゃまあ、まちがってるとこはあるけどさ(笑)。「懸命に若ぶってスベってるおじさん」的センスに充ちていること(それがイケコ・クオリティ)や「少女マンガ的というよりは女々しい男のドリーム」的な突っ込みどころがあって、いろいろ見ていて恥ずかしいこととか。
 そんなのは些細なことさ。
 いい作品だと思う。
 あて書きはしていないと思うので(飛鳥くみちょが悪人を演じている段階で、「イケコ、絶対あて書きしてねえ(笑)」と証明されているよな)、どこの組の誰が演じてもいい作品だ。むしろわたしは、他の人たちで観たかっ……ゲフンゲフン。

 主要3人の演技が噛み合っていなくて、主人公とヒロインの恋愛が唐突に見えて「いつどこでそんなことに?」とびっくりしちゃうのに、それでも、主演クラス俳優のファンなら複数回観るのもたのしいだろうと思える。
 という、ちゃんとした物語だ。

 チケット事情がちがえばもう少し通ったろうし、そうすれば別なたのしみ方もできただろう。
 いろんなサブキャラがごちゃごちゃ魅力的なのもイケコらしいので、そのあたりで萌えを探すこともできただろう。

 なんか壮くんの空回りっぷりが愛しいしな……。後ろから膝かっくんしてやりてえ(笑)。
 主要3人が、互いの話をぜんぜん聞かずにそれぞれ勝手に暴走しているところに、かえって萌えがある気がするの。つつきたくなる連中だ。

 たのしかったよ。


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