デザートローズを探し出して買ったわたしに、弟は「信者、ご苦労様」と言った。失礼ね、ヅカは宗教ぢゃないわよ。@愛・地球博
 この間、『愛・地球博』に行ってきました。
 紆余曲折の末、弟とふたりです。
 なんでいいトシした姉弟ふたりだけで行くハメになったのかは、いろいろいろいろありすぎて、語るのがめんどーなので省略。家庭内の平和を保つために行かねばならんかったのだ。

 まあ、弟はこの世でいちばん気を遣わないでいい相手なので、めちゃ楽なんだけどね、ツレとしては。

 なにはともあれ、最初から最後まで爆笑してました、ふたりで。

 DNAが同じなせいか、ツボが同じでね。
 同じモノ見て笑えるのだわ。

 いちばんツボ直撃したのは、サル池のイベント!!

 正確には『こいの池のイヴニング』とかゆー、夜のイベントだ。
 広い長久手会場の中心にある巨大な池で行われるナイト・イベント。ネズミーランドでいうところのエレクトリカルパレードな。
 いわば「目玉」ですよ。イベントの中のイベント、万博の「顔」とも言える大がかりなイベントですよ。

 恒例のメイン・イベントだけあって、はじまる前からプレ・ステージ的なものがあった。

 池の中央に「噴水のスクリーン」が出来、そこにアニメーションが映るんだ。
 かわいいアニメのおサルさんが映っている。
 つってもわたしは、メール打ったり友会の抽選入力したりと、ばたばたしていたんで、ソレはあまりまともに見ていない。
 だからちゃんと聞いていたわけでもないんだが。
 なんかうっとうしい、下手くそなナレーションが、がなりたてていた。
 ちょっと聞いただけでわかる、素人の声だと。
 あー、声の仕事をするプロじゃないなー。どっかの芸能人とか、ネームバリューだけで選ばれた下手くそかよ、うぜーなー。
 聞いているうちに、黒柳徹子ぢゃねーのか、コレ、と思い、さらにうんざりする。
 べたべたした下手くそな声は、アニメにまったく不釣り合いだった。

 音響の悪さに耳障りさも加わって、ろくに聞いてなかったんだが。

 これからのイベントの主役はどーやらサルらしい。

『大きいスノーモンキーはおかあさん、小さいスノーモンキーはその子どもです』

 てなことを、言っていた。

 登場しているアニメのサルもかわいいし、親子サルのかわいい物語がはじまるんだろうと思っていた。まあ、子どもっぽくするのは正しいよな。こういうイベントは全年齢向けにするべきだろもの。

 ところがどっこい。
 
 イベントがはじまるなり登場したのは。

 巨大な超リアル日本猿の生首だった。

 水中からのそりのそりと浮かび上がる。
 体毛の一本一本までが克明に作られた、リアルな日本猿。
 その首が、池の上に浮かんでいた。

 どれほどリアルかっていったら。

 アナタが「サル顔」と思う中年オヤジの顔を思い浮かべてください。
 ソレが、『こいの池のイヴニング』の主役、スノーモンキーです。

 ツボ直撃しました。

 わたしも弟も、身体をふたつに折って大爆笑した。

 だって、万博のイベントよ? 夜のイベント、いちばん美しくて盛り上がるはずの、たぶん莫大な金額が動いているだろう大イベントなのよ。

 なのに、出てきたのは、オヤジ顔のサル。

 しかもこのサル、動くのよ。
 微妙な動きでねえ。その場でゆーっくり360度回転するの。
 い、意味ねえっ!!

 そして、落ちくぼんだ目を、ゆっくりとまばたきしたりもするの。

 さまざまなライトが彼を照らし出し、体毛がいろーんな色に輝くの。
 顔の色も、いろーんな色になるの。
 ゾンビみたいな顔色とか。

 それだけなの。
 ただ、それだけなの。

 巨大なオヤジが首だけ水面に出して、まばたきしながら360度回転する。

 それだけなのよ、このイベント。

 時計を見たら、10分経過していた。

「ねえねえ、まだ10分だよ。あと20分、ナニするつもりだろ?!」

 固定してあるのだろう、巨大ザルは移動できない。その後ろの水のスクリーンに、アニメのサルが映っている。花が映ったり赤ん坊が映ったりと、スクリーンの映像だけは差し障りのない万博イベントって感じだ。
 しかし、どんなに美しげな映像も、手前にある巨大オヤジ猿のインパクトにかき消されている。つーか、うさんくささを増大させている。

「ただ回るだけかよ?」
「死んでる。目が死んでるよ、あの猿」
「ずっと出しっぱなしなのか、あの猿?」
「回るだけで10分保たせた。でももう限界だろ? あとナニして時間潰す気だ?」

 爆笑するわしら。

 おそろしいことにそのオヤジ猿は、女の声で歌うのだ。

 舌っ足らずのか細い声で、甘い歌を歌う。

「呪い歌?」
「死んだ目をした中年オヤジが、女の声で歌う……これほどブラックなものを見せていいのか?」

 そーいや、あのうぜえナレーションが、「大きいサルはおかーさん」とか言ってたっけ……大きいサルってコレ? ええっ、おかーさんなのか? どっから見てもオヤジなのに?!

 猿の周りを、びんぼくさい小船が光る物体を乗せてうろうろしていたんだが。
 新しい小船が出てきた。

 ミニ猿を乗せて。

 巨大ザルと親子であることは、一目でわかる。
 だって、顔が同じ!

 死んだ目をした中年オヤジ顔をした、二等身の猿!!

 オヤジの二乗。しかも二等身。
 かわいこぶった子猿のふりして、顔はオヤジ!

 わ、笑い死にするかと思った……。

「コレ作ったの、絶対ガイジンだよな」
「日本人のセンスじゃない」
「どーせ名前だけに頼ったんだろ。権威にすり寄って、できたのがコレ」
「名前より、実を取れよ……無名でも、この何億倍すばらしいものを作るアーティストはいくらでもいるだろーに」
「誰か止める者はいなかったのか? 企画段階で、コレがダメなのはわかるだろーに」
「えらいせんせー様に依頼しちゃって、誰も口を挟めなかったんじゃないの?」
「ものすげー金かかってんだろーねー」
「だろーねー」

 爆笑しているのは、わたしたちだけ。
 びっしり埋まっていた観覧席は、どんどん人がいなくなっている。

「どうオチつける気だろ?」
「わけわからんまま20分経過」
「いやあ、ライフポイントがじわじわ削られているよーな、すばらしい悪趣味さだ」
「呪いだよね、これは」

 考えられるすべての無意味な悪趣味を詰め込んだラストは。

「悪魔キターーーー!!」
「ほんとに呪いだったの?!」

 小船に乗って、悪魔が現れた。

 いや、それがなんなのかは、わたしたちにはわからない。
 巨大な白鳥を従えて現れた黒尽くめの巨大な男は、耳がぴんと尖った悪魔としか思えない姿をしていた。

 なんの説明もオチもなく、END。
 とーとつに明かりは消えた。

 笑い疲れたわたしたちが見回せば、観覧席はすでにがらんとしていた。
 みんな、10分見たら、席を立ってしまう。

 そんなイベントって……。
 グローバルなおもしろさでした。
 ブラボー、サル池イベント!!


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