たら・れば話は、意味がないとわかっているが。

 もしもケロがいたら、ぼら役だった。
 と、みんな口をそろえて言う。

 『長崎しぐれ坂』の話。

 最初に聞いたとき、わたしはなにしろ作品にヘコんでいたし、ぼらという役にも気持ち悪さしか感じていなかったので、そのままスルーしていた。
 何回目かにその話を耳にしたときに、よーやくのーみそが動き出した。

 ぼらがケロか。
 あー、ケロならきっと別人になってただろうなあ。あの人は、良くも悪くも、下っ端が似合わない人だったから。
 きっともう少し賢く……じゃなくて、狡猾なキャラになっていただろー。腰低くへらへらしていても、なんか腹に一物系というか。絶対裏があるだろ系というか。

 狡猾なぼらか……それはそれでアリだよなー。
 宝塚歌劇の範囲の悪役になっただろう。

 しかし、そんなことはこの際どーでもいー。
 アタマが動くよーになったわたしが瞠目したのは、「ぼらがからむ相手」についてだ。

 ぼらが絡む相手って……らしゃ@トウコじゃん。

 奉行所の手先(中年。妻子あり)とおたずねものの不良少年。
 敵同士の関係なのに、密会を続けるふたり。

 伊佐次はじめ、周囲はらしゃを止めるけれど、らしゃはそんなの耳に入らない。
「ぼらはいい奴」「ぼらに会いたい」と、いそいそと会いに行く。
 恋人の美少女芳蓮@となみといちゃいちゃしているときでも、「ぼらが来た」と聞くと「俺を探してるんだ」と芳蓮を置いて走り出す(着物の裾は太腿までまくりあげる)。

 らぶらぶ?
 しかも、トウコの方がケロに惚れているという、世にもめずらしい力関係?

 しかしぼらは、らしゃを利用しているだけだった。

 いちおーぼらも、らしゃのことは「好き」で、「かわいい」と思っている、と、公言している。
 伊佐次たちに問いつめられるときに、そう言うもんな。「らしゃがいちばん好き」「あいつはかわいい」と。
 へー、かわいいんだー。ぼらがケロなら、きっと観客も、「かわいい」までしか耳に入れないだろー。そのあとの「母親思いで」という台詞はスルーされるはず(笑)。

 ぼらに騙されたらしゃが、ぼろぼろになって戻ってきて、恨みをこめてぼらを刺殺するのも、確実に意味が変わってくる……。

 無理心中?

 でもって、重なり合って死ぬし。

 
 ケロトウでやれば、ものすげーラヴロマンス?

 エンディーだと誰も萌えないし、そんなヨゴレたことは考えないみたいだけど。エンディー氏、キヨラカだから。

 しかし、ケロならっ。
 ものすげー話になってるよ……。

 『長崎…』が別の話になる。

 伊佐兄ィがらしゃにぼらのことで釘を刺すのも「遊ばれてるだけなのが、わからねぇのか」とゆー意味になるし。「堅気の男相手に不倫はやめとけ」ってことよね。「いずれ泣くことになる」って、兄貴は心配してるんだよね。
 らしゃがぼらに呼び出されて出て行った、と泣く芳蓮。つまり「らしゃとぼらが、駆け落ち?!」ということだよね。ぼらを信じていない伊佐次が血相変えるのは、「駆け落ちなんて言って呼び出されて、騙されて酷い目に遭うのはわかりきってる」と心配しているんだよね。
 ぼらがらしゃに恋を仕掛けて愛欲まみれに絡め取ったのは、伊佐次をおびき出すため……伊佐次を愛している卯之助も李花も見抜いている。

 って、そーゆー話になるわな。

 最後は卯之助と伊佐次で「愛の小舟」で終わる話なんだから、いっそこれでも正しいのかもしれんが。

 あー、ぼらがケロなら、腐女子は通ったんじゃなかろーか、この芝居。
 熱い書き込みが、あちこちの掲示板に華開いたんぢゃなかろーか。
 ケロとトウコがラヴいことをするたびに、大喜びする女子はたくさんいたみたいだし。今でもそんなワードで検索は毎日やってくるし。

 
 たら・れば話は、意味がないとわかっているが。
 そして、エンディー氏がすばらしいジェンヌだとわかっているが。このまま素敵に舞台人生活を続けて欲しいと熱望しているが。

 パラレルワールドのどこかで、ケロがタカラヅカの舞台に立ち続けてる世界があれば、行ってみたいと思う。
 心から。


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