いちばん好きなキャラは、セシル@まちゃみだ。

 ……まともな感想を書く前に、うっかりホモ萌え話を書いてしまったがために、今さら書いても説得力ないかもしれないが。
 『Le Petit Jardin』の感想。

 わたしはどうも、孤独な女の子に弱いらしい。
 ものすげー萌えるのだ。
 せつなくなるのだ。

 孤独なだけじゃだめだぞ。

 孤独なのに、精一杯つっぱってる女の子が好きなんだ。

「あたしってこんなに可哀想なの」
 と、最初から言いふらす女は、NG。

 なにも言わずにつっぱってて、かなりきつい女に見えるけど、どこかしら孤独の影が見える。
 同情されるのは大嫌い、弱さを否定し、「バカにされてたまるか」とアゴをつんと上げたよーな女の子。

 セシルは、わたしの好みど真ん中だ。

 「父に愛されなかった」という劣等感を持つ彼女。
 まだ家族が恋しい年齢から、寄宿舎で過ごしたという彼女。……同じ寮生でも、帰る家がある子とは、根本的にチガウよね。どこにも行くところがないから寄宿舎にいる、ってのは、施設に預けられてるのと同じだもの。
 友だちの家に遊びに行ったとき、家族そろってわいわい朝食を取るのを見て以来、「朝食は取らなくなった」と言う彼女。「食事に時間を取りたくない」と言う彼女。……ひとりぼっちの食卓はあまりに孤独で、みじめだから。

 彼女を捨てた父は、シェフだった。
 なのに彼女には、「幸福な食卓」がない。

 家族で囲む、しあわせな食卓を、彼女は持たない。

 「幸福な食卓」を持たない彼女は、大学でレストラン学を専攻する。
 復讐のように、「レストラン(=幸福な食卓)」の勉強をする。
 それを否定することで、それに、すがりついている。

 知識を収め、資格を取り、理論で武装して彼女は父の遺したレストランへ乗り込む。
 「Le Petit Jardin」……父が、家族を捨ててまで守ろうとしていた店。
 彼女から父を、そして「幸福な食卓」を奪った、「レストラン(=幸福な食卓)」。

 父が愛したもの、こだわったもの、守ろうとしたもの、すべてを否定し、彼女は自分の得た知識と理論で戦おうとする。
 従業員すべてを敵に回して。眠る時間もなく、努力を続けて。

「勝ちたいのよ!」……こぼした言葉。
 なにに? 父に。

 彼女を不幸にしたものに。
 彼女を愛してくれなかったものに。

 勝つことでしか、彼女は救われない。

 そう信じて、孤独な戦いを続ける。

 
 セシルの孤独が、すげー好み。
 きつい言動をとっているけど、ほんとうはいい子なのが、あちこちでわかる。
 キッズランチのあと、ロワゾー家の子どもたちにお礼を言われたときとか、なにも知らずにエリーヌを傷つけてしまったときとか。
 ほんとうはいい子なのに、わざとそれを押し殺して「悪役」に徹する。
 そのくせ従業員たちから「悪」呼ばわりされると、内心傷ついている。

 本来の姿を曲げてまで、戦い続ける姿が痛々しい。
 そうしなければ生きていけないほど、傷だらけの心がせつない。

 セシルの敵は父であり、父の遺した「Le Petit Jardin」であり……父の意志を継ぐ男アラン@あひである。

 最初からセシルは、アランに父の姿を重ねて見ていると思う。
 アランの愛情がどこにあるのか(エリーヌとの関係)を、はじめの方から気にしているから。もちろん、アランが長身でハンサムだっちゅーのも、関係してると思うけども(笑)。

 アラン(=父)に勝つことが、セシルの目的のひとつになった。
 
 でも。 
 セシルがほんとうに欲しいモノは、父に勝利することでも、父の価値観を破壊して嘲笑することでもない。
 彼女はかたくなにそう信じているけれど。

 セシルが欲しかったのは、「幸福な食卓」だ。家族が微笑みあい、たのしく食べるおいしい食事だ。

 アランを否定したい気持ちと、彼に惹かれていく気持ちが、波のように揺れ動く。

 幸運なことにアランは聡明な大人の男で、セシルのそーゆー部分を見抜いていた。
 従業員たちがとてもわかりやすく「セシルは敵!」「セシルは悪!」と認識しているにも関わらず、彼ひとりが本当の意味でセシルを糾弾することはしない。
 セシルの虚勢の向こうにある孤独を、武装した奥でずっと上げ続けている悲鳴を、ちゃんと受け止めていた。
 だから彼は、一貫して「セシルのしあわせ」を考える。

 そりゃ、惚れるって。
 セシルがアランを愛するよーになるのは、あたりまえのことだ。

 セシルがアランを愛していることを認め、彼に愛されてはじめて、彼女は長い長い呪縛から解き放たれる。

 「父に愛されなかった」という呪縛。

 父が彼女を捨てたことは事実だろう。
 家族よりも料理と自分の店を選んだのも事実だろう。

 だけど、昔。
 たしかに、愛はあった。

 父は愛する娘のために料理を作った。
 野菜嫌いのセシルのために、野菜をおいしく食べられる料理を工夫した。
 誕生日には、特別なソーセージも作った。
 彼女の幸福のために、父はその腕をふるった。

 幸福な食卓があった。
 セシルがそれを忘れていただけ。
 否定していただけ。

 すれちがってしまったけど、別の道を歩むようになってしまったけど、父はたしかに、セシルを愛していた。

 だからこそ、「Le Petit Jardin」をセシルに遺した。
 「幸福な食卓」を、娘に遺した。

 
 セシルの孤独と、押し殺していたそれが徐々に顕わになり、アランによって救われていくところが、ものすごくときめく。

 しあわせになってほしい。
 そう思うのよ。
 この娘に、しあわせになってほしい、って。

 彼女の孤独が痛い分。

 
 もうひとりのヒロイン、エリーヌの孤独と絶望もいいんだけどね。
 彼女の場合、みんなからかわい子ちゃんキャラとして愛されてる分、わたし的に好みから外れちゃうのよねー(笑)。

 セシルとエリーヌ、愛されなくて孤独な女と、愛されていても孤独な少女、で両手に花だよ、まったく。

 アランもまた、心に傷を持っている分、いい男だしね。

 アランがエリーヌでなくセシルに惹かれるのもよくわかるし。
 セシルがアランを最初から「仮想敵」に想定していたのと同じ理由だと思う。
 アランとセシルの間には、最初からずっと「ミシェル・シャンティ」の存在がある。

 セシルにとってアランは、父ミシェルの意志を継ぐ者、すなわち現在の血肉を持った「敵」。
 アランにとってセシルは、敬愛するミシェルの娘、すなわちもうひとりの「愛すべき人」。

 ミシェルの娘がミシェルを否定し、全身針だらけになって虚勢を張って、孤独を押し殺しているのを見たら、そりゃほっとけないでしょ。
 なんとかしあわせになって欲しいと思うでしょうよ。
 しかも、名前が「セシル」、自分が不幸にしてしまった妻と同じ名前。Wパンチだよ。
 なんとかしたいと思うでしょうよ。心から。
 最初はそれだけの想いだったのが、気がついたらそれを超えて恋してたり、するでしょうよ。

 ああ、大好きだ、この展開。
 ヲトメ・ハート全開でときめくわ。

 演じているまちゃみがまた、きれーだし、うまいし。
 セシルの孤独が突き刺さるかのよーだよ。
 わーん、セシル大好き。
 出来過ぎた感のあるアランより、ずっと好き(笑)。


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