君は白鳥。@長崎しぐれ坂/ソウル・オブ・シバ!!
2005年5月17日 タカラヅカ ケロがいないことを、特に意識することはなかった。
芝居は相当アレなんで、出てなくても心の平穏があるというか……なまじ出られてたら、リピートしなきゃいけなくてつらかったろうな、とか(笑)。
ケロの不在については、『王家に捧ぐ歌』ですでに経験済みだったので、免疫ができていたんだろう。けっこーふつーに観ていた。
せつなかったのは、ショーになってからだ。
「男役」のトウコちゃんが舞台にいるのを見て、なんか突然、ものすごくせつなくなった。
『王家』ではトウコは女の子だったし、『長崎』は日本物、しかもタカラヅカとゆーよりどこぞの演芸場ムードだったんでノーカウント、ショー『ソウル・オブ・シバ!!』になってはじめて、「男役」のトウコちゃんと再会した気持ちだった。
ケロが、抱きしめていた人だよなあ、と(笑)。
ケロを抱きしめ、泣いていた人だよなあ、と。
『ドルチェ・ヴィータ!』以来の再会のように。それ以外でもイベントとかで見ているのに、こうして星組公演の舞台に立っているトウコちゃんこそが、ほんとうの再会のような気がして。
ただ、せつなかった。
ところで、ショーのトウコちゃん、めさカッコよくないっすか?
うわわ、なんなのその長髪。キムタクですか? 背が低くて髪がボリュームあって……って、なんかまんまキムタク系とゆーか。
トウコの方が、絶対カッコいいけどっ。
ストーリーのあるショー、トウコ演じるうさんくさいプロデューサーが最高です。
いちばんの萌えは、トウコの足元にひざまずいて靴を磨くワタルなんですがっ。
金も地位もあります、成り上がりです、てなトウコちゃんのゴーマンぶりが、気持ちいい。
夢があります、未来があります、てなワタルくんのきらきらしたびんぼー青年ぶりが、気持ちいい。
そしてこのふたりの力関係が逆転したとき、小物ぶりを露呈するトウコが、ふるえるほど好き(笑)。
いーなー、小物でヘタレなトウコって。新鮮だわ。いつもいつも、「強い人」だとか「繊細な人」だとか、とにかく観客の愛や同情を得られるキャラを演じてるもんねえ。わたしは人間できてないヘタレ男大好物だから、ショーのトウコちゃんはど真ん中です。うはうは。
今回の公演でわたしは、思い出したの。
わたしがトウコにズキュンとオチたときのことを。
わたしはずーっと雪担で、トウコのことも昔から見ていた。首席入団は伊達じゃない、いろいろ目立つ人だったんで、自然と目についてはいた。
注目したのは史上稀な娘役単独主演新人公演『風と共に去りぬ』(主演・花總まり)のとき。フランク・ケネディ役のトウコを見て、「この子、すごい」と瞠目した。
が、とりたててどうこう思いはしなかった。好きか嫌いかと聞かれれば「好き」と答えるが、ファンかと聞かれれば「べつに」と答える。そんな程度。
なにしろ若くして抜擢され、順風満帆に育ってきた男の子。「なに考えてんだ歌劇団」と首を傾げたり腹を立てたりする抜擢ではなく、実力と美貌に裏打ちされた正しい抜擢だ。なんでもできる優等生。どれだけ大役を与えられても、なんの心配も破綻もない。「ああ、トウコならやるでしょ」と思った通りにずんずん進む。
興味なかった、そんな人。
脇役、ヘタレ男の好きなわたしに、自信満々の若様なんか興味あるわけないって。
トウコちゃんに惚れたのは、彼女の時代が陰ったあと。
同期で成績下のコムちゃんに押し出されるカタチで組替えが決まってから。
あれほど抜擢され、ぶいぶい言わせまくっていた強引自信満々優等生が、エリートコースからはずれた?!
あのころは、トウコの組替えは「左遷」だとか「オトコの穴埋め」だとか、さんざん言われたよなあ。
「オトコちゃんが退団しなかったら、主演はオトコちゃんだったのに!」と、オトコちゃんファンに文句垂れられながらのバウ主演。
運命の『花吹雪恋吹雪』で、わたしはトウコ演じる五右衛門様にオチた。そりゃーもー華々しく、ずきゅんと胸を射抜かれた。
あんなに長く見てきた、知っていた子に、今さらめろめろになるとは……、と戸惑うほどに。
五右衛門様は素敵だった。
強くて美しくて、はかなくて壊れていて、彼のすべてが「美しい」人だった。
ああ、実力のある人はいいねえ。なんてすばらしい歌声、着こなし、所作、そしてハッタリ。齋藤吉正最高峰作品、話はぶっこわれているが痛快なエンターテイメント。
「なんで今ごろトウコに……」とうろたえるわたしは、はじめて知るのさ。
五右衛門を演じるトウコを見て。
クライマックス、五右衛門は舞台に裸足で立つシーンがある。
その踵が、ずっと浮いていることを。
トウコは小柄だ。
もし彼女に平均レベルの身長があれば、人生変わっていただろー、という人。
背が低い……本人の努力ではどーにもならない部分でのハンデを持つ人。
それでも首席入団し、若くしてスターの地位にたどりついた人。
その意味を、目の当たりにした、気がした。
踵が、浮いている。
ずっとずっと、あったりまえにトウコちゃんは、爪先立っているんだ。
なにごともないように演技をしながら、その足は、不安定に半分浮かせたまま。
客席からバレバレにならないよーに、わずかだけど、踵を浮かしたまま演技している。
少しでも大きく、かっこよく見せるために。
努力している。
優雅に泳ぎながら、水面下で激しく足掻いている白鳥のように!
もしも彼女にふつーレベルの身長があれば。いや、いっそ長身なら。
必要のない苦労だ。
他の、ふつー以上の身長がある人はそんなことしない。そんな疲れることする必要ないもんよ。
余裕すら感じられる堂々たるスターぶりを見せながら、踵は浮いているの。
優等生で実力派で、破綻なく発見もない、そんな人だと思っていたのに、踵を浮かせているの。
そうやって、闘ってきた人なんだ。
優雅に泳ぐ姿しか知らなかったから、水面下でそんなに足掻いているなんて知らなかったから。
ずきゅんとオチたさ、五右衛門様。
優雅な姿と、懸命に浮かした踵。
そのことを、思い出したよ。
らしゃ@トウコはまたしても、裸足だもんよ。
花道横に坐っていたわたしの目の前を、らしゃが通る。
男らしい歩き方には足音が必要だから、歩くときはわざと踵を鳴らすんだけど、止まるときは必ず踵を浮かせる。
少しでも大きく、かっこよく見せるために。
あたりまえに、踵を浮かせるんだ。
涼しい顔で。
ああ、トウコちゃん。
大好きだ。
ヘタレ好きのこのわたし。
トウコちゃんの強さと美しさ、そして、欠けた部分を埋めようとするそのひたむきさに、ぞくぞくする。
天真爛漫前途洋々だった雪組御曹司時代はまったくときめかなかったのに。
完璧じゃないから、陰があるからこそ、大好きだ。
芝居は相当アレなんで、出てなくても心の平穏があるというか……なまじ出られてたら、リピートしなきゃいけなくてつらかったろうな、とか(笑)。
ケロの不在については、『王家に捧ぐ歌』ですでに経験済みだったので、免疫ができていたんだろう。けっこーふつーに観ていた。
せつなかったのは、ショーになってからだ。
「男役」のトウコちゃんが舞台にいるのを見て、なんか突然、ものすごくせつなくなった。
『王家』ではトウコは女の子だったし、『長崎』は日本物、しかもタカラヅカとゆーよりどこぞの演芸場ムードだったんでノーカウント、ショー『ソウル・オブ・シバ!!』になってはじめて、「男役」のトウコちゃんと再会した気持ちだった。
ケロが、抱きしめていた人だよなあ、と(笑)。
ケロを抱きしめ、泣いていた人だよなあ、と。
『ドルチェ・ヴィータ!』以来の再会のように。それ以外でもイベントとかで見ているのに、こうして星組公演の舞台に立っているトウコちゃんこそが、ほんとうの再会のような気がして。
ただ、せつなかった。
ところで、ショーのトウコちゃん、めさカッコよくないっすか?
うわわ、なんなのその長髪。キムタクですか? 背が低くて髪がボリュームあって……って、なんかまんまキムタク系とゆーか。
トウコの方が、絶対カッコいいけどっ。
ストーリーのあるショー、トウコ演じるうさんくさいプロデューサーが最高です。
いちばんの萌えは、トウコの足元にひざまずいて靴を磨くワタルなんですがっ。
金も地位もあります、成り上がりです、てなトウコちゃんのゴーマンぶりが、気持ちいい。
夢があります、未来があります、てなワタルくんのきらきらしたびんぼー青年ぶりが、気持ちいい。
そしてこのふたりの力関係が逆転したとき、小物ぶりを露呈するトウコが、ふるえるほど好き(笑)。
いーなー、小物でヘタレなトウコって。新鮮だわ。いつもいつも、「強い人」だとか「繊細な人」だとか、とにかく観客の愛や同情を得られるキャラを演じてるもんねえ。わたしは人間できてないヘタレ男大好物だから、ショーのトウコちゃんはど真ん中です。うはうは。
今回の公演でわたしは、思い出したの。
わたしがトウコにズキュンとオチたときのことを。
わたしはずーっと雪担で、トウコのことも昔から見ていた。首席入団は伊達じゃない、いろいろ目立つ人だったんで、自然と目についてはいた。
注目したのは史上稀な娘役単独主演新人公演『風と共に去りぬ』(主演・花總まり)のとき。フランク・ケネディ役のトウコを見て、「この子、すごい」と瞠目した。
が、とりたててどうこう思いはしなかった。好きか嫌いかと聞かれれば「好き」と答えるが、ファンかと聞かれれば「べつに」と答える。そんな程度。
なにしろ若くして抜擢され、順風満帆に育ってきた男の子。「なに考えてんだ歌劇団」と首を傾げたり腹を立てたりする抜擢ではなく、実力と美貌に裏打ちされた正しい抜擢だ。なんでもできる優等生。どれだけ大役を与えられても、なんの心配も破綻もない。「ああ、トウコならやるでしょ」と思った通りにずんずん進む。
興味なかった、そんな人。
脇役、ヘタレ男の好きなわたしに、自信満々の若様なんか興味あるわけないって。
トウコちゃんに惚れたのは、彼女の時代が陰ったあと。
同期で成績下のコムちゃんに押し出されるカタチで組替えが決まってから。
あれほど抜擢され、ぶいぶい言わせまくっていた強引自信満々優等生が、エリートコースからはずれた?!
あのころは、トウコの組替えは「左遷」だとか「オトコの穴埋め」だとか、さんざん言われたよなあ。
「オトコちゃんが退団しなかったら、主演はオトコちゃんだったのに!」と、オトコちゃんファンに文句垂れられながらのバウ主演。
運命の『花吹雪恋吹雪』で、わたしはトウコ演じる五右衛門様にオチた。そりゃーもー華々しく、ずきゅんと胸を射抜かれた。
あんなに長く見てきた、知っていた子に、今さらめろめろになるとは……、と戸惑うほどに。
五右衛門様は素敵だった。
強くて美しくて、はかなくて壊れていて、彼のすべてが「美しい」人だった。
ああ、実力のある人はいいねえ。なんてすばらしい歌声、着こなし、所作、そしてハッタリ。齋藤吉正最高峰作品、話はぶっこわれているが痛快なエンターテイメント。
「なんで今ごろトウコに……」とうろたえるわたしは、はじめて知るのさ。
五右衛門を演じるトウコを見て。
クライマックス、五右衛門は舞台に裸足で立つシーンがある。
その踵が、ずっと浮いていることを。
トウコは小柄だ。
もし彼女に平均レベルの身長があれば、人生変わっていただろー、という人。
背が低い……本人の努力ではどーにもならない部分でのハンデを持つ人。
それでも首席入団し、若くしてスターの地位にたどりついた人。
その意味を、目の当たりにした、気がした。
踵が、浮いている。
ずっとずっと、あったりまえにトウコちゃんは、爪先立っているんだ。
なにごともないように演技をしながら、その足は、不安定に半分浮かせたまま。
客席からバレバレにならないよーに、わずかだけど、踵を浮かしたまま演技している。
少しでも大きく、かっこよく見せるために。
努力している。
優雅に泳ぎながら、水面下で激しく足掻いている白鳥のように!
もしも彼女にふつーレベルの身長があれば。いや、いっそ長身なら。
必要のない苦労だ。
他の、ふつー以上の身長がある人はそんなことしない。そんな疲れることする必要ないもんよ。
余裕すら感じられる堂々たるスターぶりを見せながら、踵は浮いているの。
優等生で実力派で、破綻なく発見もない、そんな人だと思っていたのに、踵を浮かせているの。
そうやって、闘ってきた人なんだ。
優雅に泳ぐ姿しか知らなかったから、水面下でそんなに足掻いているなんて知らなかったから。
ずきゅんとオチたさ、五右衛門様。
優雅な姿と、懸命に浮かした踵。
そのことを、思い出したよ。
らしゃ@トウコはまたしても、裸足だもんよ。
花道横に坐っていたわたしの目の前を、らしゃが通る。
男らしい歩き方には足音が必要だから、歩くときはわざと踵を鳴らすんだけど、止まるときは必ず踵を浮かせる。
少しでも大きく、かっこよく見せるために。
あたりまえに、踵を浮かせるんだ。
涼しい顔で。
ああ、トウコちゃん。
大好きだ。
ヘタレ好きのこのわたし。
トウコちゃんの強さと美しさ、そして、欠けた部分を埋めようとするそのひたむきさに、ぞくぞくする。
天真爛漫前途洋々だった雪組御曹司時代はまったくときめかなかったのに。
完璧じゃないから、陰があるからこそ、大好きだ。
コメント