えー、あるところに、ヘタレでケンカが弱くて、あまり利口でもなくて、でもカオだけはとびきりいいおにーちゃんがいました。
 おにーちゃんはヘタレなんだけど、義弟のことをとっても愛し、なんとか世間の荒波から義弟を守りたいと思っていました。
 だもんでおにーちゃんは、「こうすれば弟を守れるはず!」と思いつきでいろんなことをしでかします。
 はっきり言って、とんでもないことばっか、やらかします。
 ちょっと待て兄、ソレやったらシャレにならないから!! てなことを本人必死にやっちゃいます。

 そしてそのしわ寄せは、全部弟にやってくるのです。

 えー、あるところに、めちゃケンカが強くて美形で、たぶんアタマもいいんだろー、そのくせ控えめで情愛にあふれた、出来過ぎの弟くんがいました。
 そんな弟くんは義兄を敬愛してきました。いつか兄を支え、守りたいと思ってきました。
 しかしおにーちゃんはなにしろヘタレ。ろくでもないことばかりやらかします。それでも弟くんは、兄のやるとんでもねー失敗に振り回され、ぼろぼろになってもなお、「だっておにーちゃんは『弟のため!』だと思ってやってくれたんだから……」どんなにありがた迷惑だから!なことをされても、健気に耐えるのです。

 阿呆な兄と、それに振り回されるよくできた義弟。

 ちょっと待て。そんな話、たしかどっかで観なかったか? たしか、大劇場でバカ兄が「青い鳥」を探して右往左往して、弟を巻き込んでなかったか?

 
 雪組ドラマシティ公演『睡れる月』を観てきました。

 カオがいいだけの阿呆な兄が、ろくでもないことをして、血のつながらない弟を引っかき回す。

 なんか、この間の大劇場公演と同じなんですけど。

 コムちゃんてばまた、阿呆な兄に迷惑かけられる弟の役?!

 でも、同じ阿呆にかけられる迷惑でも、トド兄はムカついたけど、かしげ兄にはムカつかないわ!!(笑)

 てゆーか。

 ものすげー、たのしかったです。

 
 テーマは「兄弟愛」ですか?
 それとも。
 ずばり、「ホモ」ですか?

 
 いやあ、なんかどえらいもん観ちゃったよ。

 ホモをここまで美しく演じられるのはタカラヅカだけだよなあ、と、しみじみした。

 式部卿宮@かしげは、時の将軍・足利義教@ヒロさんのお稚児さんとして、飼われていた。家と家族を守るために、その身をさしだしたわけね。
 自分ひとり、義教のペットになっていれば、家族……とりわけ、愛する義弟・浜松中納言@コム姫を守ることができると。

 ところが。
 好色な義教は、美しい青年に成長した中納言を見初めてしまった。
 式部にーちゃんピンチ! 弟だけは、スケベ中年義教のおもちゃにされてなるものか!
 にーちゃんは、義教暗殺のクーデターに参加する。

 にーちゃんはいつもいつも、弟のために。
 弟は、にーちゃんが家族を守るために好きでもない男に抱かれているのを知っているから、なんとかにーちゃんの力になりたいと思っている。
 クーデターなんてやめてほしい。静かに暮らすのがいちばん、権力なんていらないのに。
 でも、事が起これば弟は兄を助けに武器を握る。
 だってにーちゃん、ケンカはめちゃ弱なんだもの。ボクが守ってあげなくちゃ!!

 クーデターの中心であり、実行犯だっつーのに、要領の悪いヘタレ兄は、その後の政界でも見事に席取り合戦に敗れ、結局最下層の虫けら人生。
 どこまで役立たずなんだ、兄。
 貧乏くじ引いただけかよ。苦労して愛人の男をその手に掛けて、手を汚して心を汚して、そのあおりで妹・大君@まーちゃんまで殺されてるっちゅーに、なにも得るモノはないという、のーなしっぷり。

 そうまでして守りたかった最愛の弟は、大君を失った傷心を抱いて、吉野に行ってしまったまま帰ってこない。
 どーやったらまた、家族一緒に暮らせる? 権力がないとだめだ。どーすればいい?
 ヘタレにーちゃんは、権力を得るためにまた、ろくでもない政治的謀略に荷担する……。

 
 このバカ兄、誰かなんとかしろ(笑)。

 野放しにするなこんなぶっそーなバカ。
 クーデターだの戦争だの、ろくでもないことしかしでかさない。

 にしても、濃かった。

 義教はほんとーに、式部卿宮を飼っていたらしい。
 はしばしにそれが出てくる。
 そして次は、その弟の浜松中納言に目をつけたんだ……「男でも女でも、美しいものが好き」なんだそーだ。
 この義教@ヒロさんの、スケベぷりっときたら!!

 鬼畜絶対君主ですよ!! ひざまずく美青年のアゴを、閉じた扇でくいっと持ち上げちゃいますよ!!

 うわー……トバしてんなあ、と、感心して観てたんだが。

 
 2幕になると、もっとすごいよ。

 わざわざ、幼い式部卿宮が、義教に**されるシーンが、回想シーンで再現されます。

 着物は着てるけど。
 布団も出てこないけど。
 ひざまずき、義教の足に接吻させられる式部卿宮(まだ少年)。
 いやがるのを、後ろから抱きすくめられる式部卿宮(まだ少年)。
 
 びびった。

 な、何故、このシーンが必要なの?!

 そこまで描かなくても、十分わかるから!
 てか、描かれてもこまるから!

 しかも。
 この回想シーン、式部卿宮(大人)が、少年の日の性的虐待の日々を思い出して、カオを歪めておるのですよ、同じ舞台の上で!!

 な、なんでー??
 なんでここまで、そんな。

 少年時代の**シーンだけでも、こまるのに。

 大人になった式部卿宮に、苦悶の表情されちゃっても、なおこまるんですけどっ。

 
 あー……タカラヅカでよかったー。
 コレ、ヒゲすね毛ばっちり、どんなにきれいでもカオでかいです、足短いです、の本物の男ふたりでやられたら、キツかったなあ(笑)。

 タカラヅカだから、本気のホモを舞台の上でやっても、少女マンガかボーイズラブ・マンガみたいにきれーだから、救われるわ。

 
 あまりに真正面からホモで(時代的に、そーゆーもん、てのもあるんだろーけどさー。にしてもあまりに題材にし過ぎだよなー・笑)、びっくらこいて笑いが止まらなくて、わたし的にはいちばんのトピックスだったのに。

 幕間に、後ろの席で観ているもずえさん・白木蓮さんコンビのところに感想を話したくていそいそ駆けつけたら。

 もずえさんたちの第一声は。

「まちかめぐる、大活躍ですね」

 ソコへ行きますか!!
 この耽美極まる舞台を観て、何故に何故に、第一声がまちかなの?!

「そーなのよ、プロローグからまちかに釘付けさ!!」

 わたしも何故、まちかを語っているの? WHY?!


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