最近のタカラジェンヌの名前は、大変愉快なことになっている。
 どう愉快かとゆーと、ソレ、人間の名前チガウやん!! とゆー愉快さだ。
 膨大な数の先輩と名前がかぶってもいけないし、いろいろ縛りやルールがあって、とっても難しいんだろーとは思うさ。そんななかで「芸名」を考えるのは。

 それにしたって、ものすごいよなー、最近の子の名前。おばちゃん、若い子の感性についていけないわぁ、みたいな(笑)。

 そんな現代だからこそ、古風なタカラヅカっぽい名前の方が目立ってしまったりする。

 「紅ゆずる」……その名をはじめて目にしたとき、わたしは言った、らしい。よくおぼえていないが。

「ナンチャッテジェンヌの名前みたい」

 ヅカのファン以外、それこそ「竹の塚」しか見たことないよーな人がてきとーに「ヅカっぽい名前」をつけたら、こんな感じ。てな。

 タカラヅカで見かけたのなら、いくらわたしでもこんな無礼な発言はしない。プログラムや出演者表に載っている名前をつかまえて、こんなことを言ったりしない。
 その名をはじめて見たのは、外部の舞台のロビーでだったんだ。

 ロビーは花で埋まっていた。公演初日だ。わたしとkineさんとサトリちゃんは、お花の贈り主の名をいちいちチェックして回っていた。知った名前があると、なんかうれしいんだもの(笑)。

 タカラヅカ関係の人からのお花も多かった。OGも現役も。
 出演者宛ではなく、みんなもれなく、演出家の先生宛だ。
 ワタさんのよーなトップスターはひとりで大きなお花を贈っている。下級生たちは何人か連名だったり、あるいは「同期一同」というカタチで、それぞれ贈っているよーだった。
 なるほどなー。現役のジェンヌが出演している外部の舞台なのに、そのジェンヌ宛に花を贈ったりしないんだ。あくまでも「先生宛」。ぬけがけナシで連れや同期と一緒に贈ります、か。
 そんななかで。
 たったひとり、横一列の慣例を飛び越えている花があった。

「あ、コレしいちゃん宛だ」

 演出家の謝珠栄先生宛ではなく、出演者のひとりにすぎない立樹遥宛。全部見て回ったけど、タカラヅカ関係者でしいちゃん単体に花を贈っている人は、ひとりもいなかった。
 その花、たったひとつ。
 しかも。

「ひとりで贈ってる……」

 みんな連名なのに。仲間と一緒に横並びに礼儀を示しているのに。
 ただひとり、その花の贈り主だけが、本人のみの名前を表記されていた。

「宝塚歌劇団 紅ゆずる」

 これがファースト・インプレッション。たくさんの花の中、たったひとつの花。
 てか、誰?

 同期と一緒に先生へ、が暗黙のルールみたいな場所で、たったひとりでしいちゃん宛の花を贈っていた紅ゆずる。あまりに浮いていたので、つい「ナンチャッテジェンヌみたいな名前」と言ってしまったのよ。もちろん本気でなく。

 これが、たったひとりで先生宛に贈っているなら「点数稼ぎ」みたいな色眼鏡のかかった見方もできるけど。
 たったひとりでしいちゃんへ、というあたりがなんか……微笑ましくて。
 なんとなくハズしている風なのがまた、かわいらしくて。
 
 そんなところではじめて見た名前は、わたしの記憶の奥の方へ。
 そんなことがあったことさえ、忘れていた。

 バウ公演『それでも船は行く』において。
 1幕で目に付いたすっきり顔の男の子を幕間にチェック。口には出さないが、この子が舞台のあの子だよね? と、ひとりで納得。
 公演が終わったあとにみんなで「気になった子がいるけど、名前わかんなーい」というのをやって、なーんだ、みんな同じ子が気になったんじゃん! と話したとき、はじめてその子の名前を口にした。プログラムの名前や写真を指さしもした。
 それって、紅ゆずるだよ。……ん? 紅ゆずる……どっかで見たことがあるよーな字面。デジャヴ? なんだろなんだろ、なんか引っかかる……。

 紅ゆずるの謎。

「しいちゃんに花を贈った子ですよ」

 アタマを抱えるわたしに、kineさんが答えをくれた。
 そっか、あのときの子か!!
 忘れていたよ、そんなことがあったっけ。

 『タック』のロビーでウケていた、あの「ひとりだけ」ジェンヌか。
 よーやく名前と顔が一致した。

 わたしの大好きなしいちゃんに、お花を贈ってくれた子が、わたし好みの顔の子で、すごくうれしい(笑)。
 着こなしも所作も演技も、なにもかも「これからの課題」の子であったとしてもな(笑)。

 
 ところで。

 わたしの「緑野こあら」って名前、タカラヅカの娘役っぽいよね? と本気で言ってみたんだが、誰からも賛同を得られなかった。えーーっ?(不満の声)


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