ゆうひくんが好きだ。
 風花舞サヨナラバウ公演『LAST STEP』で一目惚れして以来。

 ゆうひくんの好きなところはいろいろあるけれど、なんといっても「一目惚れ」、つまり外見が好きなんだよな。

 美しいから。

 そのことを、再確認させられたのが、今回の『エリザベート』。

 ごちゃごちゃ言う気はない。
 美しいから、それでいい。
 わたしは美しいものを見たいのだから。

 
 悲劇の皇太子ルドルフを演じる第一条件は、「美しいこと」だと思っている。
 史実がどうだったとか、他の舞台ではどうだったとかは関係ない。
 タカラヅカ版のルドルフは、美しくなくてはならない。そーでなければ、存在意義が崩壊する。ヅカでやる意味がない。
 多少歌がアレでも演技がありゃりゃでも、なにをさておき美しくなければならないんだ。

 それが、タカラヅカ版『エリザベート』における、ルドルフの意味だと思っている。

 BL……ボーイズラブ的な自己愛によって。

 BLにおいて、多くの場合、読者は受に感情移入する。受は男性でありながら受け身で、愛を精神的・肉体的に受ける者、つまり女性の特質を持つ。
 つまり、読者の女性にとって、受とは自分自身でありながらも、恋愛可能な「異性」である。
 この距離感がいいんだと思う。
 自分自身を愛しながら、同時に「理想の恋人」を愛す。女でありながら男である。
 「受の**ちゃんが好き」と思うのは、ほんとーに第三者としてその「**ちゃん」を好きなんだよ。それでありながら、その**ちゃんの物語を読んでいるときは、「**ちゃん」と読者自身がシンクロする。
 BLの醍醐味さね。

 そして、タカラヅカ版のルドルフ。
 彼はこのBLの受と同じ位置にあると思う。

 観客との距離感と同一化において。

 物語において主人公は視点であり、観客自身である。だもんでいろいろ不満があったり、理解できるところやできないところがでてくる。『エリザベート』は女が主人公、女(観客)はヒロインに厳しいので、「あたしならあんなことしない!」とか思ったりもする。

 ルドルフはヒロインの息子であり、ヒロインのもうひとつの姿である。
 ヒロインに対しては厳しく批判的だったりする観客も、ルドルフには視線が優しくなる。
 何故か。
 彼が、「異性」だからだ。

 ストレートに「観客自身」となるヒロインの位置とはちがい、ルドルフは「ヒロインの息子」というワンクッションがある。
 観客自身の姿だけど、観客自身ではない。
 同じだけど、同じじゃない。
 BLの受と同じ。もうひとりのわたしだけど、わたしが恋愛してもいい「異性」である。

 自己愛と恋愛が、ひとりの人物でまかなえる存在。

 だからこそBLの受は美しくなければならないし(かわいい、でもいいが、とにかく美的価値が必要)、ルドルフは美しくなければならない。

 観客の自己愛を満たすために。
 四の五理由をつけず、とにかく「かわいそう」と思わせるためには、美しさが必要なのよ。
 それが自己愛の一種なんだってことは気づかせず、無責任に「第三者として」眺めさせるためにも。

 美しいことが、第一条件。

 
 そーゆー意味で、わたしはひたすら、今回のルドルフに期待していた。
 「美しさ」ってのは個人感覚だから、趣味によって変動する価値観なのよね。人間ひとりずつチガウわけだから。

 わたしにとっては、ゆうひくんのビジュアルはとてつもなく好みで、そんな彼が「美しくなくてはならない」ルドルフ役をやるというので、心からよろこんだ。
 学年的にはありえないから。ルドルフっちゅーのはふつー、もっと若い、青い男の子が演じるべき役だから。

 学年がどうあれ、実年齢がどうあれ、ゆうひくんの持ち味はルドルフに合っている。
 なによりまず「美しく」、「陰」の魅力を持ち、「破滅」していく「色気」がある。

 ゆうひくんの持つ得難い魅力のひとつに、「ゆっくりと壊れていく、アンティーク硝子のお城のよーな色気」がある、と思う。
 暗い輝きを放つどこか歪んだ美しい城。はかなく鋭利で、鈍い華美さがあって、それがゆっくりと、壊れていく。闇を含んだ黄昏の色気。

 それはべつに、彼が努力で得たものじゃないでしょう。持って生まれたんだよね。それを美しく見せるための努力はしているし、技術も得たのだろうけど、根本は「天分」、持ち味ってやつ。

 きらきらした太陽オーラはないけれど、物憂い月の魅力を持つ男。

 その持ち味まんまで勝負できる役、ルドルフ。

 
 ただひたすらに。
 その美しさを堪能しました。

 
 ええ、そのために取った最前列ですからっ。
 トートとルドルフの「闇が広がる」は銀橋の下手からセンターまでしかないんすから! 下手最前列は必須ポイントですよ!!

 目の前にルドルフ殿下がいて、くらくらでしたともっ。

 意外にガタイがよくて「男」としても素敵なトート閣下が、軍服の殿下を翻弄しちゃうわけですよ。抱きしめちゃうわけですよ。

 最後のキスも、したまんまセリ下がりじゃなくて、カオ上げやがるし。トート閣下鬼畜。愛がないわっ(誉め言葉)。

「あの位置から、そこまで見えたんですか」
 と、チェリさんにいわれちゃったけど、ええ、なにがなんでも見ますわよ、そのために来たんだからあたしゃ(笑)。

 誰より先に観たかった、月組『エリザベート』。
 あさこシシィを見たかったのよ。さえトートを見たかったのよ。

 そして。
 ゆーひルドルフを見たかったの。

 
 きっとこれからどんどんよくなっていくんだと思うよ。
 ひとりずつが。
 そして組全体が。

 初日はなにしろ、握り拳なだけで、クオリティは論外だから(笑)。

 そしてルドルフも。
 これからどんどん、色気をぶっちぎっていってくれることでしょう。

「ゆうひちゃん、ちゃんとトートのこと愛してましたね」
 と、チェリさんは笑って言うし。
 ははは。
 「人を愛する演技ができない」我らがゆーひくん。誰も愛せないまま、とまどった瞳をしているところも好きよ。
 トート閣下にはいちおー愛情が見える(爆裂的に愛してはいない・笑)ので、今後に期待。

 美しく、エロく、退廃的に。
 わたしを一目惚れさせた「不機嫌な女神」に乾杯。


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