アニメを想像してくれ。
 主人公たちは街の不良少年グループだ。ちょっとワルでワイルド。
 グループのなかで、いちばんの美形少年。女嫌いで気は荒いが、じつは繊細でハートフルな愛すべき男の子。いつも楽器を持ち歩いている。
 アリでしょ? そーゆーキャラって、あるよねえ?

 それが、しいちゃんでした。
 立樹遥外部出演ミュージカル『タック』

 ふつー外部出演っちゅーと、「女」役じゃないですか。
 女の子が男役をするのは宝塚歌劇ならでは。他の舞台では、男の役は男の人が演じる。だから男役の外部出演は微妙。宝塚に在団している貴重な時間を、女の役なんかで消費して欲しくない。女優は女である限りいつでもできるんだから。
 しいちゃんの役は、「男みたいな女の子の役」だと聞いていた。
 だからヅカの男役が演じても大丈夫、みたいな言い方。
 それでもやっぱり、割り切れないものが残る。男役のしいちゃんが見たいよ。

 つーことで、『タック』初日観劇。わたしとkineさんとサトリちゃん。

 しいちゃんの役は、たしかに「男みたいな女の子」だった。
 でもさー。
 ふつー「男みたいな女の子」ってのは、女だってことをみんな知ってるけど、わざと男ぶって見せたりしている女の子、だよねえ?

 ウクレレ@しいちゃんは、男の子でした。
 だって仲間の男たち、全員彼女を男だと思ってるんだよ?!
 えええ?!
 その「世界」で「男」ってことは、どんなにほんとーは女っていう設定があるにしろ「男役」だよねえ?

 しかもかっこいいんですけどっ。

 ウクレレ少年、めちゃかっこいー。

 「『ガンバの大冒険』でいうところの、イカサマのポジションですよ」と、チェリさんに解説したら、すごく話の通りがよかったぞ(笑)。
 つまりはそーゆー役だ。

 本物の男の人たちの間で、素顔で、なんでそんなに男前なんだ、立樹遥。
 周り、男優だよ? 素顔だよ? なのにしいちゃんがいちばんハンサムでした(笑)。体格も負けてないしな(笑)。やっぱ背高い〜。

 そして、こんなに踊りまくっている立樹遥を、はじめて見た。

 なんだよー、踊れるんじゃん、しいちゃん。
 べつに今まで、踊れない人だとは特に思ったことなかったけどさ。踊れる人だとも思ったことなかったから。
 てゆーか所詮タカラヅカなダンスしか見たことなかったしなー。

 しいちゃんは男の役なので、男たちとほぼ同じダンスをガシガシ踊ってました。
 もちろん、男性の筋力でしかできないアクロバティックなダンスは無理ですが、それ以外の振り付けはほぼ同じ。

 男言葉に乱暴な話し方、低い声。
 くすんだ服、汚した顔。
 ひねくれた、ぎらぎらした瞳。

 かっこいいんですけどっ。

 ど、どーしたんだ立樹遥。
 立樹遥なのにかっこいいぞっ?!
 うろたえ。

 そしてそして、どんなにすさんだ少年の役をやっていても、きらきらしているのよ、しいちゃんの瞳は!!(笑)
 すごい。なんでひとりだけそんなにきらきらしてるのよー。目になんか入れてるのー?(笑)

 サトリちゃんのおかげで4列目センターにいたわたしとkineさんのもとには、目線来まくり。ぐわっ、し、心臓がっ。
 心臓に悪いよ、しいちゃん。かっこよすぎっ。ハァハァ。

 
 なんかふとね、思っちゃったよ。
 こんなにかっこいいのに、きれいなのに、どーしてヅカの舞台では、この何分の一の魅力しか発揮していないんだ、この人は。

 もったいない……。

 もっともっと、たくさんの人に見て欲しい。
 この立樹遥を、見て欲しい。

 この立樹遥を見たら、見直す人、惚れ直す人、続出だろうに。
 でもしいちゃんファン以外、見に来ないよね……しょぼん。

 ウクレレくんがあまりに魅力的な男の子(ほんとは女の子)だから、この子がこれからどんな大人になるのか、知りたくてしょーがないよ。
 てゆーかあの仲間たち、ウクレレがほんとは女だって知ったら、どんなリアクション取るかな。
 恋が生まれるとしたら、どの男とだろう? と、ヲトメハートがうずきますわ(笑)。
 
 
 さて。物語は自体はどーってことのないファンタジー。
 古き良き時代のアメリカ、裏町の不良少年たちの前に、タック@坂元健児という男が現れた。
 トラウマがもとで喋れなくなってしまった少女ミュー@堀内敬子を中心に、生きることに精一杯の貧しく荒んだ少年たちは、タックと出会ったことで、心を開いていくわけだ。
 どーせオレたちなんか、とすねて、ひがんで、あきらめていた少年たちは、誠実でなにごとにも一生懸命なタックの姿に失っていた夢を取り戻すのね。

 ストーリーは単純なので、あとはひたすらダンスと歌、キャラクタの魅力だけに集中できる作りになっている。
 ミューのために、タックが賭けボクシングに手を染める、というストーリーラインからわかるよーに、かなりアクティブなビジュアルの物語だ。動くぞ、ほんとに。汗が飛び散ります系。
 
 単純で普遍的なテーマを、激しい動きでたたみかけるよーに表現するので、いったんその渦に巻き込まれると一緒に翻弄されてしまうので、ものすごーく消耗する。
 集中して、出演者と一緒になって、くたくたになって観るのが醍醐味かと(笑)。

 エンタメの基本、見終わったあとに「生きることはつらいけど、でも、わたしもまたがんばって生きていこう」と思わせること。
 それをちゃんと体現してくれる作品。

 なにかしら、背中をぽんっと押してくれる作品。

 
 見終わったあとに、隣の席のkineさんが、
「私もやりなおせるかなぁ」
 とつぶやいた。

 なんだよ、泣かせること言うなよ。

 やりなおせるに決まってるじゃんか。
 人生いつだって握り拳だ。

 と、ひとごとなら言っちゃうけどな。
 自分はいつも停滞前線。てへ。

 
 マジにいい作品なんで、機会を作れるよーならぜひ観てくださいよ〜。

 残念ながらわたし好みの「毒」はないので、萌えないけどな。
 ストレートな陽だまり作品。
 あるのは「天使の翼」、「闇」や「棘」はない。
 ……あまりに饒舌にテーマをまくしたてるので、ちと赤面する感はあるが、こーゆー「正しい」作品は好きだ。

 前へすすめ、翼を持たない天使たち。

 

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