そしてまだ、星組東宝千秋楽の話をしている(笑)。

 
 ケロの出待ちをして。
 人垣の後ろを一緒に歩いて、車に乗るまでを見届けて。

 他の人も見送りたかったけれど、なにしろわたしの体調がアレだったので断念。みっこさんを見送った段階で手近のお店に移動した。またしてもkineさんとサトリちゃんはわたしの巻き添え。ふたりは最初からわたしの面倒を見る覚悟を決めてここにいてくれたのだと思う。

 ごめんね。ワタさんやしいちゃんを見送りたかっただろうに。
 それから、ありがとう。あなたたちがいてくれて、とても力づけられた。救われた。

 
 祭りの最後は、ドリーさんちでケロ関連映像尽くし。チェリさん持参のスタ小部ビデオでケロの歴史をたどる。

 うわー、江上さんだー、ひさしぶり。
 えーと、「江上さん」は、「えがみ」です。「こうがみ」ではありません(笑)。名前を発音してもらっている映像が公的に流出してないもんだから、いろんなとこでいろんな発音で呼ばれてるよ。日本語ってむずかしいよね。
 あのさわやかな日本兵、カーキ色の軍服を着た若い男の子。出番はろくになくて、めぐみちゃん(同期)とデュエットダンスを踊ったあとは、さっさと死んでいたよーな。ひどい話だったよな、『大上海』。

 なにしろ脇役人生たどった人だから、公式映像にはちらりちらりとしか映ってなくて。みんなでケロちゃん探し。まちかめぐるなんか探してないってばっ(笑)。
 雪組時代の映像には、もれなくまちかめぐるがついてくる……。

 9月2日からはじまったこの祭りの〆は、はからずしも『血と砂』だった。
 意図してこのプログラムを選んだわけじゃない。
 偶然、勝手に、なりゆきで、ビデオが流れてしまった。

 
 汐美真帆の役で、いちばん好きな役は?

 答えはひとつ。
 フアン・ガルラード。

 汐美真帆の出演作で、いちばん好きな作品は?

 答えはひとつ。
 『血と砂』。

 わたしにとって、『血と砂』とフアンは特別だ。絶対特別だ。完璧に特別だ。

 これほど萌えたことはない。
 一度観て、見終わった瞬間から「もう一度みたいっ」と胸の鼓動がおさまらなかった。観劇日を指折り数えて待ちかねた。
 サンタクロースを信じてベッドに入るイヴの夜の子どもみたいな、無条件のときめき。

 作品的には、壊れまくってるんだけどね。
 日本語もめちゃくちゃだし、辻褄も合ってないし、計算式もなにもあったもんじゃない、ものすげーアタマの悪い作品なのに。
 萌えだけはあった。

 わたしがケロを好きなことはデフォルト、不動のことなので、『血と砂』上演当時はプルミタス@ゆうひに恋していた(笑)。「ケロよりゆうひの方が好きかも」と口走るくらいに(笑)ゆーひくんにめろめろだった。
 や、だって、ケロがわたしのダーリンなのは、周知の事実だし!
 わたしが「緑野さんちのこあらさん」なのと同じくらいの事実だし。「じつはわたし、ドイツ人だったのよ!」と言ったところで、わたしを「緑野さんちのこあらさん」だと知っている人なら「はいはい、またなんか変なことほざいてるよ(薄笑)」ってスルーするだけのことでしょ?
 なにを言ったところで、なにに萌えて盛り上がっていたって、わたしのいちばんがケロなのは変わりようがないから、安心してゆうひくんにきゃあきゃあ言っていたよ。
 ケロに萌えるだけでなく、ケロの相方に萌えるのは、それくらい魅力的な相方を持つケロの株が上がるって気もしていたし。
 とにかく複雑怪奇に、萌え狂っていた。

 『血と砂』が魅力的なのは、すべてが「いっぱいいっぱい」だった、てのもあると思う。

 あれほど、余裕のない汐美真帆を見たことがない。

 9月2日以降のケロちゃんも、忙しすぎて大変そうだったけど。
 それとは別の追いつめられ方だったよなあ、『血と砂』は。

 ほんとうに、ぎりぎりのところで戦った結果が、あの舞台であり、作品であったのだと思う。
 フアン・ガルラードだったのだと思う。

 あのぎりぎり感が、さらに凄味を加えていた。

 美しかった。
 葉を透かして見える、葉脈みたいに。
 硝子の破片が切り取る、プリズムみたいに。

 追いつめられて、余計なモノ全部削ぎ取られて、ぎりぎりそこに「ただ、在った」その美しさ。

 
 『血と砂』は、いちばんの萌え作品。
 出演者も観客も、燃えまくり一種異様な空気をまとって爆走した作品。

 わたしもチェリさんもドリーさんも、フアン・ガルラードがいちばんな人なんだよね。

 ケロファンとひとことに言っても、たぶんこの「いちばん好きな役」がちがう人とは、感性が合わないと思う。
 他にいくらでも魅力的な役はある。
 もっと余裕のある、本人もたのしそうに演じていた役だとか、客観的に見てもかっこいい役だとか、わかりやすくとっつきやすい役だとか、いくらでもあるんだよ。
 そんななかで、この追いつめられた、切なく痛い男を選んで愛するってのは……きっと、感性が近いんだと思うよ。

 フアンを愛しているわたしたち3人がそろったのは、偶然じゃないね。

 
 ひさしぶりに見るフアン・ガルラードはとても美しく、そしてなによりセクシーだった。
 ほんとにいやらしー男だ……顔に、「犯してくれ」って書いてあるよな。
 てなことを、真夜中モードのわたし(夜になるとわりと自然にエロワードOKになります、わたし。普段は淑女なんですが)は勝手に口走っており、他のふたりに嫌がられていたのもまあ、ご愛敬(笑)。

 祭りにつきあってくれていたワタ担kineさん、しい担サトリちゃんは話についてこられるはずもなく、次々脱落していった。ごめんね、ケロ担だけで暴走しちゃって。

 
 祭りの終わりは、白々と。
 疲れ切って自由解散。
 ありがとうみんな。
 ほんと、お世話になりました。
 楽園だったよ、HOTEL DOLLY。

 忘れられない日々だった。

 
 何年か、何十年かして。
 すっかりばーさんになったわたしは、ぜんぜん関係ない人生のある一瞬に、思い出すんじゃないかと思う。

 『ドルチェ・ヴィータ!』を。
 あの美しい世界を。
 見つめていたわたしたちの、あの熱さを。

 フラッシュバックする。
 白昼夢のように。

 きっと。

 
 何十年かあとに見る、あるいは来世に見る、なつかしい夢を、今、魂に刻んでいたのだと思う。

 

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