火曜日に帰宅して、木曜日にモリナ姉さんとデートして、金曜日にまた旅立つ。……そんな人生、まちがってる気がしないでもない(笑)。

 木曜日、モリナさんとお茶しているときに組替え発表があった。

「まとぶん、花組だって。じゃあ星の3番手は誰になるんだろう」
 と言ったわたしに、モリナさんはものすごーく素で答えた。

「しいちゃんじゃないんですか?」

 そしてわたしもものすごく素で、返した。間髪入れずに。

「絶対ナイ」

 ……………………ごめん、しいちゃん。

          ☆

 予定はなかったのに、今週末もまたLet’s東宝、HOTEL DOLLY。
 それもこれもドリーさんが、「毎週、なんて無理、ですよね? 4列目のチケットあるんですけど」と言ってくれたため。
 4列目ですとっ?! ぜんぜん無理じゃないです、行きます、もちろん! ありがとう。
 チケット付き宿泊プランもアリなんですね、HOTEL DOLLY(笑)。

 そして、東宝に日参している?(笑)ドリーさん、サトリちゃん、わたし以上に毎週完璧に東宝に現れているkineさんも合流。
 濃いわ……なんかすっげー濃いんですけど。

 先日の観劇で、ついうっかり「あちら側」に行ってしまったわたしは、ほんとのところ、迷ってました。

 あの記憶のまま、封印するべきじゃないのかって。

 ハンパな席でハンパな気持ちのまま『ドルチェ・ヴィータ!』を観て、あの感動がべつのもので上書きされてしまうことを恐れた。

 晃さんに譲ってもらった1階センター席チケットと、ドリーさんに譲ってもらう4列目のチケットの2枚しか持たずにはるばる東宝まで行ったのは、そんな迷いがあったため。
 どうせ行くなら、4公演4枚分のチケットを押さえてから行くべきなのに。
 観られなかったら、それはそのときのこと。
 そんなふうに、ちょっと後ろ向きな気持ちで旅立ったんだ。

 結果として、4公演全部観られたんだけど(笑)。

 
 あの愛しい楽園は、もう彼岸にしかありませんでした。
 どんなに焦がれても、たどりつくことはできない。

 わたしは「こちら側」で、せつなく眺めておりました。

 
 ところで。

 「過去」と「未来」のどちらが好きかと問われて、「未来」と答える人はどれくらいいるんだろう。

 わたしはもちろん、「未来」の方が可能性とか希望とかにあふれていて、わくわくするものだと思っているよ。
 物語でも詩でもそうじゃん。「未来」や「明日」を語る方がすばらしいって!

 わくわくするのは「未来」。
 でも。

 好きなのは、「過去」。

 愛しいのは、過去だ。昨日だ。

 だからきっと、『ドルチェ・ヴィータ!』がこんなに好きなんだろうなあ。

 過去が好きだよ。昨日が愛しいよ。
 バカで幼くてまちがいだらけの自分ごと。

 会いたい人たちがいる。
 もう二度と会えない人。
 今でも声をおぼえている。夢の中では、ふつーに出てきて、生活している。

 失ってしまったものがある。
 もう二度と手にすることはできない。
 のぞんで捨てたわけじゃない。選ばなかった、だから残らなかったもの。

 いとしい、いとしい、いとしい。
 だいすき。

 過ぎてきた時間のひとつひとつ、出会ってきた人、感じたこと、全部がいとしい。

 過去が愛しい。

 だからわたしは、『ドルチェ・ヴィータ!』に囚われる。

 フィナーレの歌手たちは、口々に「昨日」と「別れ」を歌う。
 主題歌の「マスカレード」、とても長い歌だけど、タイトルと同じ“マスカレード”という単語が出るのはただ一度。
 エトワール(笑)であり、このショーの方向をカタチ付けたひとり、ケロが歌う。……愛されてるね、ケロ。ありがとう、オギー。

 うしなったものがいとしくて、せつなくて、涙が止まらないそのときに。

 太陽が、現れる。

 太陽の申し子@ワタルくん。
 “新しい一日”を、「明日」を、「未来」を、高らかに歌う。

 ふさがりきらず、濡れたままの傷口に、あたたかいものがふりそそぐ。
 わたしだからじゃなく、なにか理由があるからじゃなく。
 この光は、すべてをつつむんだ。
 すべてを癒すんだ。

 なんとゆーか。

 これほどまでに、ワタルくんに感謝したことはなかったよ。

 ディアボロと白いスーツの男が、銀橋から去っていったあと、大階段にひとり立つワタルくん。
 フィナーレでただひとり、「未来」を歌うワタルくん。

 すくってくれて、ありがとう。

 美しい悪夢のなか、甘い闇のなか、現世を忘れ現実を否定し、心地いい絶望のなかで眠りたくなるわたしを、「こちら側」に連れ戻してくれて、ありがとう。

 こちら側が、この世界が、現実が、美しいことやさしいことを、思い出させてくれて、ありがとう。

 ワタさんの存在は、救いなんだ。

 そのまっすぐさ。おおらかさ。やさしさ。あかるさ。すこやかさ。
 その、つよさ。

 太陽があるから、わたしは闇を愛し、心の穴にフタをすることができるんだ。

 
 「過去」を愛し、焦がれながらも、「未来」にわくわくする。
 そーやって、生きていく。

        

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