「魔法のエレベータさん、魔法のエレベータさん。わたしの願いを聞いてください。素敵な人に、会わせてください」

 と、お願いしたわけじゃ、なかったんだが。

 星組下級生の群を抜けて飛び乗ったエレベータ。
 そこから降りたわたしたちの前に現れたのは、しいちゃんだった。

 うひょー!!
 しいちゃん登場。
 相変わらずの大きな口、大きな笑顔。わたしの癒し系の君が、目を合わせてにっこりしてくれますがなっ(たぶん、誰にでも笑顔をくれる人なんだろー)。いつ見てもきれいな人だー。ほわほわ。

 わたしたちとすれ違い、しいちゃんは例のエレベータへ。

 しいちゃんの後ろに、数人の生徒たちが続く。
 しいちゃんとの思いがけない遭遇にばくばくしているわたしが判別できたのは、まとぶんのみ。

 さすが千秋楽、みんな来てくれたんだ……。
 愛だね。ほろり。

 感動しつつも、まずは席取り合戦。
 受付を済ませるまでテーブルはわからない。
 わたしのテーブルは、感動の最前列センターだった……どどどどーしよおっ。初日よりさらにいい席ですがなっ。あたし、もう終わり? これでもうあたしの世界は終わってしまう? 一生分の運を使い果たした?!
 うろたえまくった……。
 それでも、シビアに席取りがんばった(笑)。
 
 そうして。
 ディナーのあと、ショーの間際にドリーさんの部屋へ戻ったわたしは、例のエレベータでケロちゃんと遭遇することになったわけだ。

「魔法のエレベータさん、魔法のエレベータさん。わたしの願いを聞いてください。素敵な人に、会わせてください」

 と、お願いしたわけじゃ、なかったんだが。
 扉が開くまでマジに一度も、想像したこともなかったよ。燕尾姿のケロに会えるなんてこと。
 ええ。その前に記念撮影しているケロちゃんを見てしまったので、そのことでアタマはいっぱい、まさかその直後に彼らがエレベータに乗ってくる可能性があるなんて、カケラも考えなかった。すでに舞い上がっていたから。

 思いがけず、ドアが開いて。
 ケロちゃんが、立っていて。
 わたしを、見ていて。

 世界に、わたしとあなたのふたりきり。

 テレビとかであるじゃん。ただひとりの人だけ原色で、あとの背景は全部紗がかかったみたいに見えなくなるの。
 わたしの目には、ダーリンだけ。
 いや、たしかに映っているよ。他に4人娘がいたこととか、手前のエレベータ呼び出しボタン前にホテルの人がいたこととか。
 情報として目の端に入っているんだけど、真ん中にいるケロしか、わたしの目は見えていないの。

 世界が全部色を失って、あのひとだけしか、見えないの。

 おそろしいことに、マジです。
 大袈裟でも比喩でもなくて。

 そんなことが、現実にあるんだ……。

「うそーっ、うそーっ、うそーっ」
 と、ひとりになったエレベータの中で、声に出してつぶやいていた。
 ひとりごとを言ってしまうくらい、取り乱していた。
 それでいて、「エレベータの中で喋っちゃダメだ、上に聞こえてしまうかも」と思う冷静さもあった。
 エレベータの中の声って、けっこう全部の階に聞こえてしまうもんなんだよ。エレベータのある縦長空間が伝声管の役目を果たして。

 ああ、なんてこったい、魔法のエレベータ。

「魔法のエレベータさん、魔法のエレベータさん。わたしの願いを聞いてください。素敵な人に、会わせてください」

 と、お願いしたわけじゃ、なかったんだが。

 ディナーショーが終わったあと。
 家庭のあるチェリさんは早々に帰宅、入れ替わるよーにkineさんと合流、ドリーさんと3人で部屋に行くために、例のエレベータに乗った。

「このエレベータで、ケロちゃんやしいちゃんに会えちゃったのよー」
 と、本日初エレベータ搭乗のkineさんに説明。しいちゃんと会ったのはエレベータから降りたあとだったけど、このエレベータが結びつけてくれたわけだしな。

 力いっぱい油断したまま、目的階に着き、ドアが開いた。

 すると目の前に。

 すずみんがいた。

 うおーっ、こう来ましたかーっ。
 わたしとkineさん、大ウケ。

 だってだって、わたしとkineさんだけなんだよ? すずみん好きなのって。
 あとはみんな、すずみん苦手って人ばっかなんだもん、わたしの周り。チェリさんが今ここにいなくてよかったな、とか思ってみたり(笑)。
 どーしてよりによって、すずみん好きなわたしとkineさんがそろったこのタイミングで、すずみんなの。素敵、ハズさないわ、魔法のエレベータ。

 ドリーさんの部屋に戻ってから、わたしたちはうきゃうきゃ騒ぐ。

「ちっ。ディナーショーの締めが、すずみんかよ」

 ドリーさん、真顔で舌打ちするし。
 それでまた、わたしたちは笑うし。

「締めはすずみんじゃなくて、コトコトよ。そう思うことにする」

 ドリーさんは必死。
 ああ、そういえば小柄な娘役さんも一緒にいたわ。わたし、すずみんだけ見てたから、顔を見そびれちゃった。コトコトだったのかー。ちゃんと見ればよかった。残念。

「あ、ディナーショーのプログラムカードがどうって日記にあったから」
 と、kineさんはわざわざ、しいちゃんディナーショーのプログラムカードを持ってきてくれた。
 わたしがあまりに今回はショボいショボい、豪華だったのはトド様だからなの? と書いていたから。

 しいちゃんディナーショーのプログラムカードは、豪華でした。

 きれいなフルカラー印刷で、しいちゃんがきらきら微笑んでますがなっ。
 わーん、こんなカードがよかったよう。

「出演者がどうというより、新阪急ホテルがえらいってことじゃないですか?」
 と、kineさん。そーゆーことなのかなぁ。

 少しの間お喋りをして、夜も遅いし解散しましょう、と3人そろって部屋を出た。ドリーさんはフロントに用があるんだって。
 そして、例のエレベータ前にやってきた。
 本日最後、いや、人生最後のこのエレベータ。

「魔法のエレベータさん、魔法のエレベータさん。わたしの願いを聞いてください。素敵な人に、会わせてください」

 と、お願いしたわけじゃ、なかったんだが。
 エレベータにわたしたちが乗り込んだとき、廊下の方で話し声がした。誰かやってくる気配。

 それが誰であれ、エレベータに乗るだろう人が近づいてきたら、「開く」ボタンを押すよね? ドアを開けてあげて、その人も乗せてあげるよねえ?
 そりゃま、誰かジェンヌさんかも? とは、思ったけど。だからって、目の前でドアを閉めるのも変だし。(燕尾服姿のケロ除く)

 現れたのは、すずみんだった。

 アンタ、さっき帰ったんじゃなかったんかいっ。エレベータ前にいたじゃん!!

 わたしは笑いの発作を押さえるのに必死。
 またか。またすずみんかー。なんでこの人はこう、タイミングいいんだろー(笑)。

 あ、コトコトもいました。一緒にエレベータに乗って、ロビーまで。

「また、すずみん……っ」
 ドリーさんは肩を落とすし。
 わたしとkineさんは大ウケしてるし。

 ありがとう、魔法のエレベータ。
 サプライズと笑いをありがとう。

 一生忘れない。

       

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