続きなんで、ひとつ前から読んでくださいな。

 無自覚なまま安禄山に惚れている玄宗と、それをなまあたたかく見守っている安禄山。

 安禄山が玄宗に襲いかかるのは、反乱のあと、なにもかも失った玄宗に対して。
 サディズムを満足させるために、どうぞお好きなだけ。……ってことでいいかしら。

 と、最初のうちは思っていたのよ。
 前にも書いたように。

 
 でもなんか最近、それだけだとつまんなくなってきたわー。
 せっかく玄宗があんなにバカで、あんなに安禄山に惚れてるんだからさー。

 安禄山、つまみ食い、しちゃわないかな。

 大丈夫、あんな男、すーぐ堕ちるって。
 口手八丁でてきとーなシチュエーションにもちこんで、さっさと押し倒しちゃえよ。
 瞳に物言わせて愛の言葉なんかささやいたら、絶対その気になるって。
 あとは気持ちよくさえしてやれば、100%リピーターになるねっ。

 てゆーか安禄山に本気で口説かれて、堕ちない女と受はいないだろう!(断言)

 楊貴妃が堕ちてないって? だって安禄山、本気で口説いてないもんよ(笑)。最初からバカにして、せせら笑いながら迫ってたじゃん。落とす気もなかったんだろうな。嫌がって泣くのを、組み伏せる気でいたとしか思えない。
 ただ、あそこまで抵抗されるのは、計算外だった、と(笑)。

 玄宗が一時期楊貴妃のもとから足が遠ざかっていたのは、彼女が疑うよーに梅妃のもとに行っていたのではなく、安禄山といろいろしていたから!ってことで。
 梅妃も十分イライラしてたもんね。そんなに足繁く玄宗が彼女の元に行っていたとは思えない。
 やっぱここは伏兵、安禄山だ(笑)。

 玄宗が楊貴妃に贈った髪飾り。
 アレもさ、安禄山の入れ知恵かもよ?
 「七夕の夜に男女が愛を誓うとしあわせになる」なんて、「誓いのアクセサリーをプレゼント」なんて、玄宗にしては突然すぎるロマンチック路線。
 安禄山に寝物語に入れ知恵されたんじゃないの? 髪飾りも安禄山の見立てだったりして。

 てゆーか。
 玄宗ならいっそのこと、安禄山にも、同じ髪飾りをプレゼントしていて欲しいですな! それくらい突き抜けてバカであって欲しいですな!

 せっかくの七夕の夜に、なかなか楊貴妃の部屋に現れなかった玄宗。
 そう彼は、まず安禄山と一緒にいたのさ。高力士たちも、んなことはとても楊貴妃に言えないから、あんなにあたふたしていたの。なんとか殿でまだお仕事中、なんて言っていたのは、半分だけ本当。本来は仕事をする場所で、安禄山とランデヴー中だったわけだ(笑)。

 楊貴妃のところへ行かなくていいのかと問う安禄山に、
「お前に、これを渡したくてな」
 と、髪飾りを見せる玄宗。
「それはお妃様に……」
「同じものをふたつ作らせた。今宵は七夕、お前が教えてくれた通り、愛を誓う夜だ。天にありては比翼の鳥となり、地にありては(面倒だから略)……さあ、髪に挿してやる。これでふたりの愛は永遠だ」
 あわただしく抱きしめて、キスだけして、玄宗は出て行く。次は楊貴妃、今夜はダブルヘッダーだ忙しい。
 あの黒尽くめの軍装、かぶとむしにしか見えないかぶり物つきの髪に、豪華な髪飾りを挿されてしまった安禄山。
 想像以上の玄宗のバカっぷりにぽかーんとして。

 あきれて、溜息ついて。
 そして。
 そして、愛しそうに、ふと笑ってくれたら、いいな。

 玄宗のことはバカだと思っている。軽んじている。体よく操っている。
 それでいてなお。
 彼のことをそのバカさごと「気に入っている」のも、事実。

 そんな関係。

 …………うっとり。
 玄宗は素敵にバカで、そのからっぽのアタマの中と広い心のうちには、愛がつまっている。
 楊貴妃と安禄山、ふたりの人間を同時に同じだけ深く深く愛せるだけの、たーくさんの愛があったりまえにあるの。

 楊貴妃は女だから、玄宗の愛がどこにあるのか、どれだけあるのかだけに執着し、野心家の安禄山は玄宗を愛で満たすことによって、本来そこにあるべきだった政治やら国の未来やらを払拭したのね。
 そうやって国は傾き、安禄山の乱が起こるんだ。

 
 ああ、すばらしきかな『花舞う長安』。(半ば自棄)

     

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