続きなんで、ひとつ前から読んでくださいな。

 『ドルチェ・ヴィータ!』ぶちこわしにしているのは、ケロじゃないかと思うんだ。

 エピローグでディアボロが、新たに欲する男。
 てのが、よりによってケロなんだわ。

 男S@ワタルは、ディアボロに選ばれ、無限のメビウス・リングに堕ちていったってのに、彼にはディアボロが見えていない。
 ディアボロは異邦人のまま。
 男Sはディアボロの存在も気持ちも知らず、かなしく不幸に「別れと喪失」を繰り返し続けている。自分が果てのないメビウスの輪の中にいることすら、気づいていない。

 なのに、男@ケロときたら。

「海の底だろーがどんと来い! 行ってやろうじゃないか、この世に未練なんかないっつーの!」
 と、高々と晴れやかに、しゃがれ声で歌ってますがな。

 そして、ディアボロの手を握るし。

 えっと、ディアボロは誰にも見えなかったんだよね? 彼は彼の意志で自在に存在を消したり現れたりしていたけど、ちゃんと向き合って、なにもかも納得した上で手を取り合うなんてことは、なかったよね?
 男@ケロは、ディアボロがなんであるかわかったうえで、手を取っているよね?

 まあ、新しい男がそーゆー力強いタイプだというのも、アリだろう。男Sとの差別化という意味で。

 しかしいちばんの問題は。

 男@ケロ、めちゃくちゃうれしそーなんですけどっ?!

 ディアボロと一緒に行くのが、そんなにうれしいかっ。
 この世を捨て、恋人(だよね?)@ちかちゃんを捨て、ディアボロ@トウコと海の底へ行くのがそんなにうれしいかっ。

 ディアボロと男の握手のあと、銀橋で踊るのは、まだ物語の中でしょう? トウコちゃんはちゃーんと「ディアボロ」の顔のまま踊ってるよ。他の男たちもにこりともせずに、物語重視で踊っているよ。
 だって、メビウスの輪の中なんだから。ディアボロの孤独は続くんだから。別れと喪失の物語は続くんだから。

 ああ、なのに。
 なのになのになのに。

 ストーリーをぶちこわしにして、ケロが笑う。
 にこにこにこにこ、うれしそーに、物語を離れ役を離れ、「素のケロちゃん」になって踊っている。
 別れ際に、トウコに親しげなサインを送ったりする。

 ケロ…………。

 ストーリー、ぶちこわしやがな。
 ディアボロの新しい獲物であるアンタが、そんなにうれしそーに前向きだと、話が変わって来ちゃうでしょお?

 ああもお、好きだわケロちゃん!!(笑)

 去年の『巖流』で、小次郎@トウコは役になりきってクールに踊っていたのに、武蔵@ケロはにこにこにこにこうれしそーに笑いまくっていたのを思い出す。
 アンタはそーゆー人だ。愛を隠さない男、愛にあふれた男(笑)。

 別れと喪失の物語。
 回り続けるメビウスの輪。
 永遠に孤独な、かなしいディアボロ。

 なのになのになのに。

 ハッピーエンドじゃん!!(笑)

 よかったね、ディアボロ。
 あなたもう、ひとりじゃないよ。
 あなたを悪魔と知りつつも、あなたの手を握り、あなたの横でうれしそうに笑う男がいるよ。
 なにもかも捨ててあなたのそばにいることを選んだ男がいるよ。
 しあわせそうに、笑っているよ。

 オギー・ショーとしては、ぶちこわしだと思うんだけど。
 こんなオチじゃなかったと思うんだけど。

 
 でも、いいじゃん、ハッピーエンドで!

 もう愛を失う物語を繰り返さないですむよ。
 「相手のため」とか偽善こいて愛を捨てる言い訳を、しないでいいよ。
 手を取ったんだから。
 男は、それをのぞんだんだから。
 ハッピーエンドだ。
 あなたのそばには、愛にあふれた、愛を隠さない男がいるよ。
 長い孤独だったね。
 でももう、いいんだ。
 しあわせになりなよ。

 
 こみあがってくる笑いをかみ殺しながら、思ったよ。泣きながら、それでも笑ったさ。
 せっかくの美しくかなしい物語を、ケロがそのケロらしさで、あったりまえにトウコだけしあわせにしちゃうのが、もー、ツボ直撃で。
 ワタさんとか他のキャラはメビウスの輪の中に置き去りだー。でもディアボロだけはとりあえず、ケロが愛の力ですくい上げたぞ(笑)。

 作品的には、許されないことかもしれないが。
 ディアボロをしあわせにしたいから、男@ケロはあれでヨシ! と思ってしまうのだ(笑)。

 もちろんケロも、全開で笑っているときとそうでないときがあるよ。ちゃんとシリアス・テイストで踊っているときもある。
 物語が正しく終息するのも、まさかのどんでん返しでハッピーエンドになるのも、どちらもヨシ!(笑)

 男@ケロが銀橋で愛にあふれた目で見るもんだから、ディアボロ@トウコはこまったよーな複雑そーな顔をする。ディアボロとしては、「こいつ選んだの、マチガイだったかも……」てなもん? まさかこんなに簡単に、「ディアボロLOVE」になるなんて思わずに口説いただろ?
 ディアボロと男の新生活を考えると、愉快じゃないか。
 愛されることに慣れていないディアボロは、きっと何年も何十年も、とまどったままだぞ(笑)。どう接していいかわからずに、突き放してみたり他の人間に浮気してみたり、いろいろするんだ(笑)。
 それでも男は変わらない。何年、何十年、ディアボロを愛し続けるさ。うれしそうに、しあわせそうに。
 ディアボロの孤独が癒えるまで。
 そうさ、永遠に。

 ファンタジーじゃないか。
 夢じゃないか。
 それこそ、痛くてかなしい、大人の童話じゃないか。
 甘い毒、『ドルチェ・ヴィータ!』さ。

     

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