過ちは、出会ったことでも恋に落ちたことでもない。

 別れたことだ。

 今ならまだ、なかったことにできる。
 相手を傷つけずに済む。

 ……傲慢だ、愚か者め。
 最悪の過ちだ。

 出会ったのだから、恋に落ちたのだから、覚悟を決めろ。
 共に堕ちろ。
 自分のために、この恋のために、不幸になる最愛の人を見届けろ。
 その覚悟もナシに、中途半端に手を離した。
 それが罪。
 それが過ち。

 男のエゴは少女を壊し、終わりははじまりにつながって水面が揺れる。

 男を惑わす女が笑い、黄昏に悪魔がたむろしている。

 見つめ合うふたりに「壊れる音」が響く。
 美しくおそろしい音。

 過ちは出会ったこと、恋に落ちたこと。
 立ち止まることなく惹かれて堕ちる。堕ちる。

 明るい花市場は闇の領域をも内包し、陽気な船上パーティは悲鳴に満ちる。
 光のかたわらに影はでき、足跡が深く残る。傷跡が遠く残る。

 だけどそのあやうさの、なんと美しいことか。
 闇を持つ光のまばゆさと、傷みを持つ微笑みのあでやかさ。

 血も流さないと、腐るのかもしれない。
 涙も流さないと、腐るのかもしれない。

 愚か者め、愚か者め、愚か者め。

 この手を取って、滅びるがいい。
 それが真実。

       

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