なんかひさしぶりに、升毅の正しい使い方を見た気がする。
 升さんはこーでなくちゃねー、と、その存在のうさんくささのみに感心していた。

 『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』 鑑賞。
 見る予定はまったくなかったんだが、映画の日の恐怖。きんどーさんと待ち合わせて某シネコンに足を運ぶと、見る予定だった映画が完売。どうするどうする? 代わりになんか見る? 罪なく笑えそうだから、という理由でチョイス。

 にしても、『誰も知らない』を見に行って、『ハットリくん』を見てしまう人生の急転直下ぶりはどうよ?(笑)

 忍者の服部カンゾウ@香取慎吾は、修行のために江戸……東京へやって来た。そこで最初に会った人を主君とするそーで、うっかり出会ってしまったヘタレ小学生ケンイチ@知念侑季が主になった。
 ケンイチのもとでハットリくんが修行?しているうちに、世間では奇妙な事件が起こっていた。謎の変死と、その陰にうごめく超人……忍者の存在。その真相は……?
 監督・鈴木雅之、出演・香取慎吾、田中麗奈、ゴリ。

 
 ひさしく、「いい人」の升さんしか見てない気がしたからさー。
 升さんって、『沙粧妙子・最後の事件』の怪人・梶浦なのよー。あのうさんくさい役をやってしまう人なのよー(笑)。

 わたしが升毅と最初に会ったのは、近松門左衛門作品をテーマにしたお芝居だった。タイトル忘却。
 WHITEちゃんからチケットを渡されても、自分がなにを観るのかさっぱりわかってなかった。誘われるとなんでもほいほいOKしてしまうタチなので、そーゆーのはよくあることだ。映画や芝居の内容もそりゃ大事だが、わたしにとっては「友だちとデート」「わたしと一緒に観たいと思ってくれた」ってことも大事。誘われたことがうれしくて、芝居のタイトルさえ理解してなかった。
 そのときWHITEちゃんがわたしを誘った理由ははっきりしていた。上演場所が、わたしの家から徒歩5分だったからだ。
「他の人は誘えないよ、こんな場所」
 だそーだ。たしかにな(笑)。市民文化ホールの小ホールなんてところ、地元民だが入ったのは後にも先にもそれ1回こっきりだ。まあさらにもうひとつ、
「アンタ、国文科なんだから近松知ってるでしょ」
 というのも理由だったよーな。たしかにわたしの専攻は近世文学だから、近松も範囲だったけどさー。でもわたしのゼミは「男色大鑑」だったのよー。卒論は「西鶴が愛したホモのカタチ」てなテーマで、ホモの勉強で手一杯、近松はまったく門外漢だったのよー。のよー。のよー。

 しかし、そのときの芝居が、めちゃくちゃおもしろかった。
 全編ギャグとテンポ命の会話で進められていくんだが、実はミステリで、どんでん返しが爽快。ギャグだと思ってスルーしていたころに伏線ばりばり。
 プロットが緻密な話が好きなもんで、この物語には魅了された。相関図とか自力で書いて、何度も思い出しては感心したさ。……パンフレットさえ発売されてなかったんだよなー、あるのはちらし1枚だけ。なんなのこのショボさ。
 その芝居の主役が、升毅だった。今から10年くらい前だろうか。

「おもしろかったわ」
 とわたしが言うとWHITEちゃんはとてもよろこんでくれて、さらに芝居に誘ってくれた。升毅主宰劇団の公演に。

 なにを観たんだっけかな。あのころ升さんのお芝居立て続けに観たんで記憶が混同。
 なんにせよ、わたしは生の升毅を見て、おどろくことになる。

「ええっ、ハンサム?!」

 ものすげー色男ですがなっ。びっくり。

「なにを今さら」
 とWHITEちゃんは言うけれど。
 だってだって、わたしが市民文化ホールで観た升さんは、よぼよぼのじじい役だったじゃない。腰曲がってて顔は皺とシミだらけで。
「……そういえば、そうか」
 素顔の升さんは知らなかった。こんな男前だったの?
 そして升さんの美形ぶりにおどろいたその公演のロビーに、でかでかと貼ってあったさ。「テレビドラマ『沙粧妙子・最後の事件』に出演! 見逃すな!」と。

 ええ、見ましたとも、『沙粧妙子』。愉快なドラマだったわ。
 しかしテレビで見る升さんはくどすぎて、受け付けなかった。
 なんか、存在も演技も浮いてる……怪人役だから、それでいいのか?

 『沙粧妙子』以来、升さんはテレビに出ずっぱりだけど、どれもふつーな役ばっかで、わたし的には不満だった。
 最初に見たのがトリックスターのじじい役だったからなー。そしてテレビで最初に見たのが、怪人・梶浦だったからなー。
 ふつーに「いい人」は物足りない……。

 ……だもんで、ほんっとーにひさびさに、見たい升毅を見た気がした。
 『忍者ハットリくん』の、敵役。
 どこぞの映画のパクリのよーな安直なキャラだとしても、ぜんぜんOK(笑)。
 うさんくさくて、大仰で、二枚目で。
 いいなあ、升毅(笑)。
 こんなうさんくささを、モノにしてしまう個性はいいですよ。
 華のない人がやると、失笑ものの薄っぺらい悪役ですからなっ。

 
 映画自体は「こんなもんー?(語尾上がる)」って感じでした。
 罪なく気軽に見て笑って、それでおしまい。意義は果たしているんじゃないかな。『スマスマ』のコーナーのひとつであってもかまわない程度のノリだとしても。
 わかって見ているので、気にならなかった。
 お約束の嵐で、全体的に「テキトー」な感じもまた、親しみやすくていいんじゃないかと。慎吾がかわいいから、それでいいんだと思う。

     

コメント

日記内を検索