花組新人公演『La Esperanza(ラ・エスペランサ)−いつか叶う−』を観てきました。

 
 この話って、カルロスとミルバのラヴストーリーだったんだ? 知らなかったよ。

 
 本公演は数回観てるんだけど、知らなかった。いや、マジで。
 カルロスは登場人物全員から愛されてて、彼自身もたのしそーにあちこちで男女問わずタラシまくっていたけど、特定の相手とどうこうはしてなかったぞ?
 唯一、フアンのことはけっこーマジで好きみたいね、とは思ってたけど。

 ミルバっていう女の子も、そんななかのひとりだと思ってた。
 カルロスがタラシた人のひとり。
 たまたま女の子だったし、カルロスはあの通りあまり深く悩まずそのときのなりゆきで身の処し方を決める男だから、そのまま婚約しちゃったんだと思った。
 ミルバが男であっても、ふたりの精神的な関係は変わらなかったと思うよ、ただ婚約しないだけで。
 それくらい、ミルバって女の子には特別感がなかったんですが。
 結婚しようがどうしようが、ふたりはきっとこの距離感のまま、友だちだか夫婦だかわかんない間柄で生きていくんだろうな、と。
 カルロスは世界中のあちこちで友人(えっち含む)を作ってそうだし。それを悪いとか思わないだろうし、ミルバもまた思わなさそうだし。
 恋人同士というよりは、同志って感じだよなあ。同じ志を胸に生きる人。でも道は別々、みたいな。

 そーゆーのもアリか、世の中のすべての恋人同士がいちゃいちゃラヴラヴで恋以外存在しない視界で生きていられても迷惑だしな(例『花舞う長安』)、と思ってたんですが。

 新公観てびっくり。

 主人公とヒロイン、恋愛してますがな。

 同じ脚本なのに?? 基本は同じ演出なのに??

 なんかすっかり別物。
 カルロスは真面目で、港ごとに女を作るタイプにも見えなかったし。つーか、あまりモテるタイプにも見えなかったが……ゲフンゲフン。
 フアンにしろベニートにしろ色気もなにもあったもんじゃなくて、ホモ萌えする余地もなかったし。

 まっとーな男女の恋愛モノを観てしまった……。

 でも、こうあるべきだったんじゃないの? 恋愛モノのつもりで書いたんじゃないの、正塚せんせ?
 恋愛になってない本公演は、アレでいいの、正塚せんせ?
 疑問が頭をよぎる。
 せっかく本公演は本公演で「これもアリか」って腐女子としてたのしんでたのに。「本来の姿」を新公で見せられたら、本公に疑問持っちゃうよ……。

 とゆーのも、ヒロイン・ミルバ@あすかちゃんが、マジかわいい女の子だったからだ。

 本公でふーちゃんが低い声で話し出している(何故かふーちゃん、最初は低いのにどんどん高くなって、終盤はいつもの声になる)のと対照的に、えらくかわいい高い声で話し出すあすかちゃん。あまり正塚喋りじゃないよーな。新公は演出家がチガウせい?
 軽やかで、不思議な雰囲気のある女の子だ。
 ミュージックボール、ってあるじゃない。独特の美しい音がする鈴。あのイメージ。
 美しいまるい音が、ころんころんと転がってるような。
 ちょっと変わった女の子だなあ、でもかわいいなあ、と思って見ていると。
 いつも陽気でつらいことなんてなさそうに見える彼女が、実はけっこう真摯に生きているのがわかってくる。
 画家になるのが夢だったのに、それを師に踏みにじられて。理不尽な要求を断る姿に、彼女がどれだけ傷ついたかがわかる。
 それでも、カルロスの前で笑って見せて。
「わたしたちがペンギンみたい」
 そう言って。
 新しい生活をはじめたミルバとカルロスが、お互いの存在に気づくシーンには、息をのんだ。
 ふたりが恋人同士になる瞬間。
 「時が止まれば、その恋は本物」だっけ? 某映画の台詞。

 止まって見えたよ。
 ミルバとカルロス。見つめ合うふたりの周りの世界が。

 それまではただの友だちだった。波長が合う。最初に会ったときからずっと、一緒にいると心地いい。
 幸も不幸もリズムが同じ、同じときにつまずいて、同じときに歩き出して。
 だからなんとなく、つづけて会っていた。

 それが、恋に変わる瞬間。
 恋に気づく瞬間。

 必要だった。
 ただなんとなく、じゃない。必要だから会っていたんだ。
 愛しているから。

 すべては、ここにたどりつくまでの運命だったね。
 気づいてしまえば、そのことに納得する。
 うなずくカルロスは、とても深い表情をする。すべての符丁が合った。決められていたことだった。……そんな恋。

 そして物語は一気に1年後、ダンス・コンテスト会場。
 カルロスの隣にあたりまえの顔でミルバがいること、本公演ではけっこう違和感あった。なんであんたがここに? ダンスとあんたは関係ないじゃん?
 でも、新公ではじめて納得した。ダンスと関係なくても、いて当然だよ。だってカルロスの恋人だもん。この1年、ずっとつきあってたんだね。一緒に住んでてもおかしくないよな。と、素直に思った。

 そっかあ、この時点でミルバとカルロスって、1年間つきあっていた恋人同士だったんだなあ。一度も考えたことなかったよ……そーだったのか。

 そして運命は怒濤の変化を迎え、まさかの逆転ホームラン、すべてがひっくり返る。
 一度はあきらめたはずの夢が、またすぐそこにある。夢を叶えるための努力をしてもいいんだと、言ってくれている。
 夢を追う同志として出会った恋人同士のふたりは、夢を叶えるためにいったん別れることになる。
 さよなら旅行はウシュアイア。ふたりの約束の地。
 雪原を歩きながら、ミルバは言う。どうして野生のペンギンを見たかったのか。
 幸福だったはずの想い出が、悲しい出来事のあとにはつらくて直視できなくなる。いつも笑って生きてきた女の子。なにがあってもへこたれない女の子。
 でも彼女は、ペンギンを見に行けない。大好きなはずなのに、両親との想い出がある動物園には、もう行けなくなっていた。
「動物園にも行こうよ」
 彼女は恋人にそう言う。10年以上も封印してきた想い出の場所に、一緒に行こうと言う。

 ミルバにとって、カルロスはもう家族以上なんだね。
 さよなら旅行なのに。これでもう、別れたふたりの道は二度と交わらないかもしれないのに。

 それに対し、カルロスは言う。
「いいよ。でもその前に必ずパリに行くよ、楽団に入って」
 夢を追い、夢を叶え、なおかつミルバを求めると。
 そう答えるんだ。
 さよなら旅行なのに。これでもう、別れたふたりの道は二度と交わらないかもしれないのに。

 ちょっと、せつないじゃないですか、お客さん!!
 こんな話だったんですか? ぜんぜん、知らなかったよ。

「会えるといいね」
「きっと会うよ」

 はかない約束。こんな約束、世の中の恋人同士は5万回はかわしただろう。だけど、そのうちのどれくらいが、叶ったのかい? まもられたのかい?
 はかない約束をかわしながら、ミルバは泣き出す。でも微笑む。
 きっと叶うよ。
 本能は消えない。
 自由なペンギンは、自分の力で生きていくんだから。

 
 ……と。
 本気でラヴストーリーでした。
 ミルバかわいいし、カルロス真面目だし。
 びっくりした。演じる人がチガウと、ここまでちがっちゃうの?
 ヒロインが変わるだけで、ここまで変わっていいの?!

 文字数足りないのでつづく。

       

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