レマルクの『凱旋門』を手に入れた。

 長らく絶版だったこの本が、最近復刊されたのは知っていた。わたしも「復刊ドットコム」に登録していたけど、機会を逸したまま、買いそびれてたんだ。
 
 この日記には、小説をはじめとする活字文化作品の感想を書かないようにしているのだけど、ヅカ関係は除く(笑)。
 レマルクの『凱旋門』は、大好きだー。

 原作の『凱旋門』を読んでわたしはさらに、ラヴィックという男を好きになった。
 美しく繊細な物語。

 復刊はとてもうれしいのだけど、叶うことなら現代語訳してほしかった。
 さすがに今の日本語と差異が生じていて、それがわたしみたいなぬるいのーみそしか持っていないものにはつらい。おくりがなの違いや言葉の使い方、誤字なんかが気になるんだよ……。無意識で文章の添削をしてしまって、その都度物語から現実に引き戻されてしまう。
 ふるめかしい喋り方なんかはまだ「味」だと思えるけど。にしてもやっぱ、興をそがれる部分があるなあ、文章の時代錯誤さに。
 美しい現代語訳で出してくれたら、うれしかったなー。

 とまあ、文章自体はそのまんまな復刊なわけだ。
 

 三原順の『ハッシャバイ』の復刊ヴァージョンをブックオフで見かけたことがあったので、漠然と復刊っちゅーのはあんな感じなんだと思っていた。
 かつての姿を忠実に再現してあるが、お値段だけは少部数発行を物語る元定価の数倍、てな。
 だから『凱旋門』もきっと、昔通りの素っ気なくもいかめしい装丁で、値段は当時の数十倍とかするんだろうな、と覚悟していた。なんせ発刊当時はハードカバー本が数百円っちゅー物価だったわけだから。今の文庫本以下の元定価で復刊できるはずがない。
 どんな姿になるかと思いきや。

 値段的には、予想の範疇だった。税抜きで2600円。まー、こんなもんじゃろ。
 だが、装丁がずいぶん予想とちがった。

 ハードカバーじゃないんだ……。
 しかも、大きい。
 そして、活字がでかい……。

 昔の、小さく硬い姿に郷愁を持っていたので、ちと拍子抜け。
 硬い硬い、今よりずーっと融通利かないハードカバーに、小さな活字がぎっしり2段組。ものすげー読みにくい画面だけど、とりあえずコンパクトで「特別感」のある姿。
 『ハッシャバイ』が元の姿まんまだったから、『凱旋門』にも元の姿を期待していたんだよ。

 なーんだ、ものすごーく「今」な感じの装丁。
 今現在、ふつーに新刊として翻訳本コーナーに並んでそうな。
 表紙は映画のヒロイン写真だし。
 ……なまじっか「今の活字」「今の誌面」「今のデザイン」だから、文章の時代錯誤感が目に付いたんだよなー。

 そしてさらに異彩を放つのが、帯。

 トドロキ御大がいらっしゃいます……。

 え、えーと。
 この本って、完全ヅカファン向けなの?
 いちおー文豪作品で映画原作なんだよねえ?
 帯で堂々と「宝塚歌劇原作」と謳われるとびっくりだ。純粋にこの作品のファンで復刊を心待ちにしていた人は、引くんじゃ……?

 たしかに復刊を願っていたひとたちは圧倒的にヅカファンが多かったけどさ。復刊ドットコムの復刊希望コメントはそれ一色に近かったけど。
 
 わたしがこの本を読んだきっかけはたしかにトド様の『凱旋門』だったけど、実際に読んでみれば、「たとえヅカの舞台を観ていなくても、この小説を好きになっただろう」と心から思った。世の中には「あの作品の原作だから好き。そーでなかったらどーでもいー」レベルの作品があふれているというのに。
 アタマのぬるいわたしが読んで理解できて、感動できるくらいまっとーにすばらしい作品なんだから、ふつーにファンがたくさんいそうなもんだが。
 そしてそういうふつーの人たちは、ヅカメイクの顔写真が帯についてたら引くんぢゃねーかー? と、いらぬ心配をしてしまいました。

 いやあ、帯だけでもわたしゃ、そんなことを危惧していたのにねー。

 本の中に、そりゃーもー堂々と、ピンナップがついてましたよ。
 宝塚歌劇の。

 ははははは。
 笑っちゃった。
 帯ごときで心配しちゃってごめんねー。

 これって、一般人のことなんか考えてない本だったんだ。完全ヅカファン向け。ファン以外の購読者を想定していません、てな。
 なーんだ。

 それなら、いっそ表紙写真もトドロキにしちゃえばいいのにー。毒をくらわばだよー。

 ファンアイテムとして開き直った商品だと理解した途端、こちらも開き直りました。
 ああ、トド様ラヴィックが美しいわー。きゃー、すてきー。
 ああ、やっぱりボリスはタータンだよねええ。
 あら、コウちゃんヴェーベルも載ってるのね。
 あー、グンちゃんジョアンはもっときれいに写ってるヤツにしてあげればいいのに……。
 なんにせよ、大切にするわ。

    

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