その昔、『新世紀エヴァンゲリオン』というアニメがあった。
 そのアニメを見て、わたしがつくづく・しみじみ思ったことは。

 そもそも第1話で、ゲンドウがシンジに「私はお前を愛している。私のために戦ってくれ」と言えば、すべて済んだんぢゃねーか?
 と、いうことだった。

 それが本心であろうとなかろうと、騙すつもり利用するつもり、いや本心は愛があったのなかったの、そーゆーことは全部置いておいて。

 ゲンドウが息子に、「愛している」と言うだけで、物事はとーっても円滑になったはずだ。
 「親からすら、愛されない」→ 「自分には価値がない」→ 「居場所がない」→ ……など、無限ループにはまっている多感な少年シンジは、とりあえず最強呪文「アイシテイル」を唱えれば嬉々として戦ったと思うけど。どれだけ辛かろうと、傷つこうと、「愛」ゆえに「許し」ゆえに、盲目的にゲンドウに従ったでしょう。

 なのになー。
 なんだかなー。
 あの親子ときたら、ほんとに似たもの親子で。
 無意味に感情表現が下手で、言葉が足りなくて、頑固で、盛大にすれ違ってんだもんなー。

 シンジを操るのなんか、簡単じゃん。
 「愛してる」って言ってやればいいんだよ。あんなにあんなに、愛されたがっていて、それが得られないとわかっているから強がっているだけの子どもなんだから。

 
 …………と、思ったことを、思い出した。
 宙組公演『ファントム』初日を観たときに。

 
 エリックに仮面をかぶせてもいい。地下に幽閉してもいい。
 なにをしてもいいから、とりあえずキャリエールが言えばよかったんだよ。

「私はお前を愛している」 と。

 最初にソレだけ言っておけば、悲劇にはならなかったのに。
 傷のない顔も、両親も家も、未来もふつうの生活も、なにも持たないとしても、それでもエリックはあそこまで不幸にはならなかったはずだ。

 こんなに醜いボクを愛してくれる人がいる。……そのことを救いに、地下の小さな王国で平穏な暮らしができただろう。
 もちろんソレは、ふつうの意味での幸福ではないけれど……ふつーの人間がふつーに得られるふつーの愛や幸福より下位のものであるとは、誰にも言えないだろう。

 キャリエールのいちばんの過ちは、不倫でもベラを見捨てたことでもエリックに父だと名乗らなかったことでも地下に幽閉したことでも殺人を見過ごしてきたことでもなんでもない。
 エリックを抱きしめてやらなかったことだ。

 親だと名乗る必要なんかない。不義の子だと説明してやる必要もない。

 ただ、愛を語れ。
 背景の事情も理屈も関係なく、キャリエール個人が、エリック自身を愛していると、告げろ。

 親としてだとか、真実だとか、それを語るためには弊害がとか、理屈並べてなにもしないくらいなら、なんのしがらみもない赤の他人として「愛している」と告げろ。
 エリックが求めているのソレなんだから。
 エリックが孤独なのは哀れなのは、ソレを得られないためなんだから。

 
 とゆーことで、キャリエール×エリック。

 エリックを救う、いちばん早くて確実な方法。
 ぶっちゃけ、誰でもいいんだから。エリックを素顔ごと愛してやれる人なら。
 ママじゃなくても、クリスじゃなくても。

 
 そんでもって、パターン1。
 例の銀橋ラヴシーンのあとに、ふたりの初***があったっちゅー案。
 告白→ ラヴシーン→ 初***、という、ある意味正しく、性急なあたりが今どきのBLやTLみたいでニーズに合っているかと(笑)。

 エリックはガキなので、恋愛も親子愛も区別ついてないし、性への知識も薄い。ので、自分では親子愛のつもりでいるのに、抱きしめられたら感じちゃった、どうしよう、うろたえ。なにしろ他人との抱擁ははぢめてだ、しかも愛の告白のあとでだ。そりゃ若いんだから反応しても仕方ない。
 まかせて安心、余裕のキャリパパ、やさしく初***突入。
 てのはどうですか、世の腐女子のみなさん。
 「終焉」の予感に急き立てられ、美しくも哀しくがっつんしてもらえたらいいかと。
 
 
 パターン2。
 クリス登場で、エリックの気持ちが不安定。せっかく誰にも摘み取られないよう地下で育ててきた華が、あんな小娘に手折られてどーする?!
 クリスを誘拐したエリックに詰め寄り、冷たく追い払われてしまったキャリパパ。エリックにクリスをあきらめるように、再度説得に向かうが……口で説得するつもりが、あ、あれ? なんか行き過ぎちゃって手が出たっちゅーか、カラダが出たっちゅーか……半分無理矢理?
 エリックの痣だけど、顔だけでなく、カラダにもあるとなおヨシ。いやがるエリックを裸に剥いて、「こんなに醜い姿で、彼女に愛されると思うのか?」とか、鬼畜バージョンで詰め寄って欲しいですなー。
 鞭とアメの使い方絶妙に、キャリパパのテクが冴える! みたいな。

 そーゆー出来事があったと脳内仮定したうえで、本編に戻って。

 それでもなおクリスの愛を信じ、結果悲鳴上げて逃げられ、ぼろぼろに傷つくエリック。
 キャリエールの腕の中で、「この間は追い返してすまなかった」てな台詞を力無く言う本編のエリックは、むちゃくちゃ萌えです。
 どうですか、世の腐女子のみなさん。

 
 パターン3……とか、なんかいくらでも考えられそーなんですが(笑)。
 誰か書いてくんねーかなー。

 
 1列目の下手端はいろいろおいしい席で、出演者が近いのは言うまでもないが、クリスに促され仮面を取るエリックの顔が、ほぼ真正面で見られる位置なんだよね。
 3列目サブセンのときはオペラグラスを持っていかなかったのに、1列目端のときは握りしめていた。
 仮面を取るエリックを見るの!! 鼻息!!
 このときのエリック、最高に、受くさい表情するのよ。
 迷いながら仮面を取り、はにかんだよーな笑顔のような微妙な表情をし、クリスの反応に一瞬空白になり、次に慟哭へ変わる。
 この一連の表情がね……絶品。ハァハァ。

 銀橋ラヴシーンもなかなかドラマチックなアングルだし(キャリパパ正面、エリックは後ろ姿。抱かれる瞬間がすばらしい)、無理して手に入れた甲斐があったというものだ!!

 ただ。
 腐女子として唯一のかなしみは、銃傷を負ったエリックをキャリエールが抱きかかえて隠れるあの萌えシーンが、ものすごーく遠いことです。
 ここだけは「上手に坐りたかったっ」と思ったね(笑)。

 
 ああ、とにかく『ファントム』はすばらしい萌え作品よー。
 多少ストーリー破綻してても、画面が悪趣味でも問題ナシ。

 ああ、君に出会えて良かった。

       

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