やっぱり変だよ、あのラスト。
 ……ってことで、『愛しき人よ』の感想その3。

 なにもしないヒロインなら、出さなくていいよ。

 だって和実@きりやんには、大門@めおちゃんがいるし。

 さて、腐女子語りいきます。

 大門×和実
 初見では大門くんのひとり上手ぶりに微苦笑してましたが、2回目の観劇時には、彼がものすっげーツボでした(笑)。

 この作品の中で、もっとも和実を愛してるのって、大門だよね?

 それも、崇拝に近いラヴっぷりだよ。見返りを期待しない、究極の愛だよ。
 大の男が、和実のこと褒め称えて女神様みたいに愛しちゃってるよ。

 実際、遠藤和実くんは「ふつーである」というだけの人でしかなく、奇人変人の中にあってその「ふつーさ」が「誠実さ」とかに変換されているにすぎない。ポカもいろいろしているし、軍人としてもあまり優秀だとは思えない。
 だけど大門くんの目には、「大尉殿すげえ。大尉殿かっくいー」としか、映ってないんだよな……。
 瞳きらきらさせて、「大尉殿は素晴らしい方です!」とか宣言している大門くんを見ると、「落ち着けよ、お前」と思ってしまう。
 白い羊の中に、毛色のチガウ羊がいたら、それを「すげえ」と思ってしまうクチだろ、君。「ヒーローが乗るのは白馬。つまり、白馬に乗っているのはヒーロー」とか、ものすごーく短絡な思考回路してるだろ、君。
 物語を冷静に見ると、べつに遠藤大尉は大した男じゃないんだが(そりゃ演じてるのがきりやんだから、いい男だけどさ)、大門ひとり目にフィルターかかったまま爆裂LOVEしている。
 川島芳子@るいるいのように奇声を発したりしないから一見落ち着いて見えるけど、大門くんも相当暴走してるよなー。
 と、1回目の観劇のときは、微苦笑。
 めおちゃんときりやんの並びは、映りがよくてたのしいので、それだけで十分萌えさせていただきました。うまうま。

 2回目の観劇時は、最初から「大門×和実を堪能する」という確固たる目的があったもんでな。

 たのしいのなんのって(笑)。

 いいよー、大門。
 君のその半分妄想入ったよーな「大尉殿LOVE」っぷりが、じつに気持ちいい!!
 BLの軍人モノが好きな人には、おすすめ。
 さすがタカラヅカ、日本軍の軍服もかっこよく作ってある。(日本軍の軍服って、かっこわるいよねえ? 色もデザインも鈍くさいっちゅーか)
 めおちゃんが長身できりやんが小柄なのがまたヨシ。つーかふたりの身長差はけっこーすごい(笑)。
 でかくて体格のイイ部下と、小柄な上官が、軍服姿で踊っちゃったりする、ああタカラヅカは素敵なところ。

 大門は副官の鑑っていうかね、「耐える男」なんだよね。
 主役はあくまでも和実で、大門はその補佐に徹している。そーやって主役を活かすことに生き甲斐を感じている男ってのは、イイよね。
 そして耐える男大門、どれほど和実を愛していても、決して表には出さない。尊敬しているだとかお仕えするとか、忠誠心や友情の範囲のこっ恥ずかしい台詞は堂々と言うが、愛の告白は決してしない。

 一生、和実についていくつもりなんだもんね。

 たとえ日本が敗北し、戦犯にとわれることがあったとしても。
 軍人でなくなっても。
 和実の目が見えなくなっても。

 大門は、和実のそばにいる。
 彼のためだけに、生きていく。

 ラストシーン、満開の桜を見て和実は「変わらないもの」を想う。
 そこでわたしは、心の中で台詞を書き足しましたよ。

 いろんなことがあった。
 激動の時代だった。
 それでも変わらないのは、桜と、そして大門だけだ。

 盲目の和実と、そんな和実の世話を甲斐甲斐しくする大門。
 あー、一緒に暮らしてんだなー、こいつら。
 よかったな大門、すげーしあわせそうだ。

 という、じつに美しいシーンだっただけに。

 戦前戦中戦後、苦難つづきだった和実を支えたのは大門だったのに、突然、なーんにもしなかった女がのほほんと現れ、和実をかっさらっていく、というオチには納得できないものがありました(笑)。
 しかもこのシーン、『二人だけの戦場』にやたら似てるしなー。納得いかんなー(笑)。

 構成が壊れている作品だから、いちいち言っても仕方ないんだけど、2幕目は主人公とヒロインが実際に会うのがラストシーンだけなんだよー。すげー無理があるって。
 カップルを「会わさない」で恋愛モノとして盛り上げるのは、高等技術が必要。腕に覚えがあるならしてもいいけど、空回りする確率がとても高いんだってば。
 もちろん、この作品では盛大に空回ってます。
 観客が「主人公とヒロインの愛の成就」を前提として観ている(希望している)からごまかしが利いているだけ。
 善良な観客は、「主人公とヒロインがハッピーエンド」ってだけで、他のことは全部忘れて感動してくれるから、それに甘えているだけ。

 
 てゆーか。
 本当のところ、この作品のヒロインは、和実だから!

 齋藤くんの作品はいっつもそうよね。
 主人公の青年は、いつもヒロイン(笑)。
 複数の攻たちに愛されたり憎まれたりとっても大変♪な、可憐な受が主人公。
 ハーレムものなんだよね、彼の作品は。
 主人公と、彼を愛する者たち、という構図。

 同じ構図で作品を書き続けるのが谷正純だけど、谷せんせーの場合は主人公が攻で、彼を愛する理想の妻たる受が登場するんだよなー。(ただし、役者の個性で受攻属性は変化する)男ふたりの愛憎であっても、とても封建的で男尊女卑的なものがある。
 谷作品は、とても男性的なんだ。

 齋藤作品は女性的。
 主人公はいつも、繊細な受青年。
 受がちやほやされるBL。

 だもんで、ヒロイン和実の大河ラブロマンスとして考えた場合、ジョセフィーヌはダーリンとして弱いんだよなー。なんせ、なーんにもしてないからなー。もちろんそれは、作者が悪いんだけど。

 いいじゃん、大門で!
 フェルゼンに恋したオスカルは、ずっとそばにあったアンドレの愛に気づくんだよ。
 ずーっと外国にいたり、他の女に夢中だったフェルゼンが、フランス革命を無事に乗り越えて静かに暮らすオスカルのもとに、突然現れて「オスカル、ほんとーは君を愛していたんだ」と言われても、「ハァ?」てなもんでしょうが。
 じゃあ、ずっとそばでオスカルを支え続けたアンドレの立場は? てなもんでしょうが。
 だからいいじゃん、大門で。
 ジョセフィーヌは美しい想い出の人。
 和実のそばには、いつも大門が。

 
 大門と和実のラヴストーリーだと思えば、ほんとにたのしい作品ですよ〜(笑)。
 和実、女絡みでナニかあるときは必ず、大門を頼るしな。
 大門は寡黙に従うしな。
 いやあ、ツボをわきまえてますぜ。

 つーことで、腐女子のたしなみとして考えました。
 ラストシーン、同棲しているだろう大門と和実。このふたりは、デキているかそうでないか。
 ……もちろん、デキてなどおりません。
 それどころか、この期に及んでもまだ、和実は大門の気持ちを知らないのです。
 耐える男大門、それでも恋を口にせず。
 大尉殿のおそばにいられるなら、それだけで……(はぁと)、なんて、手ぬるいことを考えておったのです。
 しかしそこに、終わったはずの過去の女、ジョセフィーヌが!!
 大門、ピーンチ!
 その夜遅く、ひとり帰宅した和実に、待ちかまえていた大門はついに……!

 つづく。

  

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