月組バウホール公演『愛しき人よ』感想その2。
 
 
 さて。
 ふつーになってしまった分、つまらなくなっているとはいえ、フェチの齋藤らしいこだわりは随所にあった。

 齋藤くんほんと、ナチス好きだね……。
 てゆーか、軍服コスプレ好きなんだよね……。

 この話さあ、はっきり言って、ナチス出す必要ないじゃん。

 ただの軍服萌えだよね、ナチス絡めたのって。あの軍服を美男美女に着せたかっただけでしょ? 意味もなく女性将校がいるあたり、齋藤くんの趣味全開だわー。

 舞台は1930年代のパリ、日本軍の青年将校、遠藤和実@きりやんは極秘任務中の事故で、ある男を死に至らしめてしまう。そして、うっかり知り合っちゃったその男の娘、ジョセフィーヌ@あいちゃんと愛し合うことに。でも、彼女の父親を殺したのは俺だし、このままでいいはずがない、てことで和実は真実をジョセフィーヌに告げる。混乱した彼女の前に、どーゆーわけだか昔の恋人ミシェル@のぞみちゃん登場。
 父親の仇だろーがなんだろーが、和実はジョセフィーヌを愛してる、ってことで、彼の次の任務先である上海だっけか満州だっけかに一緒に行こうとジョセフィーヌに事実上のプロポーズ。手ぬるいのは、コレを実際に会って言わずに手紙にしちゃったこと。求愛の手紙は、恋敵ミシェルが握りつぶしちゃって、ジョセフィーヌのもとには届かず。
 あわれ和実もジョセフィーヌも、失恋だと思い込んだまま、それぞれパリを後にした……。
 そして舞台は、上海だか満州だか、そのあたりに。プログラム買ってないんでよくわかんないけど、和実の新しい任務はあのラストエンペラー溥儀の護衛だった。
 そこでは、最高級にアタマのぶっ飛んだ男装の麗人、川島芳子@るいるいが手ぐすね引いて待っていた……。

 というストーリーなのに、どーしてナチスが必要あるよ?
 物語の軸は、和実とジョセフィーヌと、満州なんだよね。
 べつに、ナチスを出す必要ないし、そこの青年将校ケビン・ヒルデブラント@さららんなんてキャラは、不要。
 だってさ、あきれるくらい、ケビンと和実の物語は別物なんだもん。
 主人公の物語に一切絡まない準主役なんてもんは、物語の邪魔だから出さなくていいよ。プロットの段階で削られても仕方ない設定だわ。
 なにがなんでもケビンを出したかったのなら、和実の物語に絡めなくちゃダメだよ。
 ジョセフィーヌがポーランド人だとか、ケビンが彼女を愛しているだとか。
 あるいは、ケビンと和実の友情が本物で、破滅していくケビンを和実が本気で支えるだとかな。……和実は結局、ケビンのこと大して友だちだとは思ってないんでしょ? 破滅していく彼のために、なにひとつしてやってないしな。見殺しだしな。ただの仕事上の知人ってだけなら、それもふつう。もしもアレで親友なら、和実ってば薄情すぎ……。
 結局ケビンは物語の筋とは関係ないところで大騒ぎして、関係ないところで勝手に死んでいった。

 ナチス側のエピソードは全部不要。
 なのに無理矢理とってつけたのはすべて、齋藤くんの趣味だよね?
 彼が軍服萌えな人だからだよね?
 本来なら2番手は、恋敵のミシェルか、副官の大門あたりをやるべきなんじゃないの? それをわざわざ役の重さを変えてまで、不必要な役を捻出したのは、すべてただの趣味ってやつでしょう?

 趣味と言えば、もうひとつ。

 和実の昔の恋人、一乃宮若菜お嬢様役がゆら姐さんだってのも、齋藤くんの趣味ですか?
 熟女に10代の少女のコスプレをさせて、ぶりっこ喋りをさせるのが、齋藤くんの萌え? 趣味?
 マニアックだな。
 そういった性癖を持たないわたしは、盛大に引きましたよ……。
 どーして10代の女の子の役を、わたしと同い年のゆら姐さんにやらせるんだ……ふつーに若い女の子に演じさせてはならなかったのか?
 ゆら姐さんは舞台では実年齢より上の役を演じることの多い女役さんだよ。その彼女に、何故10代……。
 あまりに意味のないキャスティングだから、これはつまり、齋藤くんの趣味全開ってことよね。
 さすがだ、フェチ齋藤……濃い……濃すぎる趣味だ……。

 
 あと、作品がみょーにエロいってのも、齋藤くんの特徴だよね。
 ストーリーがどうというより、パーツがエロいの。

 今回は、女たちがエロかった(笑)。
 川島芳子@るいるいがぶっ飛ばしてるからさー。

 チャイナドレスの美女ふたりのタンゴ、って、どうよソレ。

 タンゴって、男同士で踊ってもエロいけど、女同士もエロくていいねえ。わくわくするわ。
 川島芳子がナチュラルに両刀で、女コマシまくってるのが、男前でいいですなあ。
 あの傍迷惑な妖怪キャラ(高笑いはお約束)は、やはり齋藤くんの趣味なんですかね……。
 齋藤くんは、攻女好きだよねえ。強い女が、繊細な男をコマすのが彼の萌えなんだよね。
 それにしても川島芳子、強すぎるだろ、アクが……。(宇宙からの電波を受信しているにちがいない女だ)

 
 とまあ、齋藤色が薄れたとはいえ、やっぱり彼の趣味が反映された作品でしたな。

 物語は破綻しているので、わたしにはわからないことばかりです(笑)。
 どうしてそうなるのか、そこで何故そうなるのか、小一時間問いつめたいことばかり。
 それでもなんとなく軸の一本線だけは通っているので、かろうじて物語としての体裁は持っています。セーフ。

 主人公の和実は、なんつーかもー、すげー「ふつうの人」です。
 現代なら、エリートビジネスマンなんだろーな。
 会社の命令でフランスだの中国だの出張してんだろーな。
 裏切られたら傷つくし、仕事は途中で投げ出せないし、という、ごくふつーの感覚を持ったふつーの人なんだなー。

 彼のふつうっぷりはいいです。
 彼の片腕である大門少尉@めおちゃんが絶賛かますほど「素晴らしい人」だとはカケラも思えませんが、周囲の人間が奇人変人大集合なので、ふつうだ、というだけで和実がすごい人のように見えてきます。

 いいよなあ、人間やっぱり、ふつうがいちばんだよ。
 と、しみじみしてしまうわ。

 そして主人公がふつうなので、周囲の奇天烈さとストーリーのわけわからなさを乗り越えて、物語自体はわかりやすいハッピーエンドに着地します。
 よかったねえ、和実。ジョセフィーヌが君のもとへ戻ってきてくれて。

 ……とは、残念ながらわたしは思えなかったんだけどな(笑)。

 ジョセフィーヌが和実のもとへ戻るなら、なにもかも終わって平和な春、にやってきても遅いっちゅーの。
 裁判に間に合うよーに戻って来いよ。
 今まさに裁かれている遠藤和実大尉を救うために、登場しろよ、ジョセフィーヌ。
 彼がいちばん大変なときはひとりにしておいて、おいしいとこだけ取りに来るなよー。
 事情があってあのタイミングが精一杯だったとか、じつは裁判でも彼女は活躍していたとかの言い訳はナシよ。物語としてエンタメとして盛り上げるなら、あの登場の仕方はないだろ、と思うわけだ。
 裁判で和実を救い、それでも彼にはなにも告げずに去り、改めて、なにもかも終わった平和な春に会いに来ればよかったんだ。そうすれば、同じラストシーンでOKだよ。
 なにもしてない女が、ご都合主義まんまに現れて終わり、だなんて、作品の質をさらに下げてるよ。
 ハッピーエンドだからってことで、観客はすべて許しちゃうだろうけど、やっぱり変だよー。

 
 文字数足りないから、つづく。

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