何故、ドアは2回開いたのか?
2004年4月25日 家族 朝のミステリ。
眠っているわたしの耳に、玄関ドアの開く音がした。
どうやら、誰か家に入ってきたらしい。
もちろんドアは施錠してある。
合い鍵を持っているのは家族だけなので、たぶん家族の誰かだ。
時計を見れば、ちょうど緑野家の朝のラッシュ時刻だった。
ひきこもり人生をしているわたしとちがい、緑野家本宅の家族たちはみな職業がある。彼らは毎朝、熾烈なトイレ争奪戦を繰り広げる。
どうやら、争奪戦に敗れた者が1名、わたしの家にトイレを借りに来たようだ。
気配からして、母だろう。さっきまでわたしのベッドで寝ていた猫が、いそいそと階下へ降りていった。猫の鳴き声と、母の声が聞こえてくる。
答えが推理できたので、わたしはまた夢の中へ戻った。ねむねむ。
だが、それからほんの1時間ほどあと。
再び、玄関ドアが開く音がした。
何故だ?
時間からいって、トイレは関係ない。
ドアは開いたが、人が入ってきた気配はない。
朝のミステリ。
何故、わたしの家のドアは、2回開けられたのか?
起床したわたしは、親の家に行って、聞いてみた。
今朝、わたしの家に来なかった? しかも、2回。
「だってまた、出てこないんだもの」
やはり、母がトイレ争奪戦に負けて、わたしの家のトイレを使いに来たらしい。
また、というのは、彼女が敗北する相手がいつも決まっているためだ。
そう、ウチの弟は、トイレが長い。ヤツに先に入られると、十数分占拠されてしまうのだ。
「そしたらねー、アンタの猫がやってきて、トイレのドアの前でしきりに鳴くのよー。仕方ないからドアを開けてやったら、中に入ってきて、ごろんとおなかを上にしてひっくり返るのよ。撫でろって言うのよー」
はい、ウチの猫はそーゆー猫です。
ひとがトイレ入ってたら、一緒に入ってきて、撫でろだのかまえだのとうるさいよ。洋式便器に坐っているわたしの膝や肩の上に乗ってきたりな。
「仕方ないから、手を伸ばして、撫でたわよ」
猫は気持ちよさそーに撫でられていたらしい。
トイレの床の上で。
今まさに用を足している母の片手で。
「やりにくかったわ……」
どっちが?
いや、答えなくていい。
「それで、アタシがトイレから出て、家に帰ろうとしたら、猫がついてくるのよ。アタシと一緒に行きたいって言うの。でも、飼い主の許可なく連れて行ったらまずいわよねえ? アンタが起きてきて、猫がいなくなってたら、アンタ、びっくりするわよね?」
ここで、謎は解けました。
つまりママ、あなた、連れて行ったのね? わたしの猫を。わたしに無断で。
「だって、一緒に行きたいって猫が言うんだもの!」
飼い主に無断で連れ出したらまずいってわかっていながら、それでも連れ出したのね?
「だって、猫が行きたがるんだもの!」
この誘拐犯め(笑)。
「拉致して帰ったのはいいけど、猫ったらすぐにアンタの家に帰りたいって言い出すんだもの。仕方なく、またアンタんちに猫だけ返しに行ったのよ」
それが、2回目のドアの音ね。ドアが開いた音はしたけど、人が入ってくる気配はなかった。
まったく、朝からなにやってんのよ、猫に振り回されて。
「猫ってば、ちょっと目を離した隙に、ウチの玄関口でおしっこしたのよ。サンダルがひとつ、被害に遭ったわ」
母は言う。
「トイレを借りに行って、代わりに猫のトイレにされて。さんざんだわ……でもま、猫がおしっこしたのは、弟のサンダルだから別にいいんだけど」
弟にトイレを占領されたがゆえに、すべてが起こった。
そして、災難は弟に収束し、朝のミステリは終結する。ちゃんちゃん。
眠っているわたしの耳に、玄関ドアの開く音がした。
どうやら、誰か家に入ってきたらしい。
もちろんドアは施錠してある。
合い鍵を持っているのは家族だけなので、たぶん家族の誰かだ。
時計を見れば、ちょうど緑野家の朝のラッシュ時刻だった。
ひきこもり人生をしているわたしとちがい、緑野家本宅の家族たちはみな職業がある。彼らは毎朝、熾烈なトイレ争奪戦を繰り広げる。
どうやら、争奪戦に敗れた者が1名、わたしの家にトイレを借りに来たようだ。
気配からして、母だろう。さっきまでわたしのベッドで寝ていた猫が、いそいそと階下へ降りていった。猫の鳴き声と、母の声が聞こえてくる。
答えが推理できたので、わたしはまた夢の中へ戻った。ねむねむ。
だが、それからほんの1時間ほどあと。
再び、玄関ドアが開く音がした。
何故だ?
時間からいって、トイレは関係ない。
ドアは開いたが、人が入ってきた気配はない。
朝のミステリ。
何故、わたしの家のドアは、2回開けられたのか?
起床したわたしは、親の家に行って、聞いてみた。
今朝、わたしの家に来なかった? しかも、2回。
「だってまた、出てこないんだもの」
やはり、母がトイレ争奪戦に負けて、わたしの家のトイレを使いに来たらしい。
また、というのは、彼女が敗北する相手がいつも決まっているためだ。
そう、ウチの弟は、トイレが長い。ヤツに先に入られると、十数分占拠されてしまうのだ。
「そしたらねー、アンタの猫がやってきて、トイレのドアの前でしきりに鳴くのよー。仕方ないからドアを開けてやったら、中に入ってきて、ごろんとおなかを上にしてひっくり返るのよ。撫でろって言うのよー」
はい、ウチの猫はそーゆー猫です。
ひとがトイレ入ってたら、一緒に入ってきて、撫でろだのかまえだのとうるさいよ。洋式便器に坐っているわたしの膝や肩の上に乗ってきたりな。
「仕方ないから、手を伸ばして、撫でたわよ」
猫は気持ちよさそーに撫でられていたらしい。
トイレの床の上で。
今まさに用を足している母の片手で。
「やりにくかったわ……」
どっちが?
いや、答えなくていい。
「それで、アタシがトイレから出て、家に帰ろうとしたら、猫がついてくるのよ。アタシと一緒に行きたいって言うの。でも、飼い主の許可なく連れて行ったらまずいわよねえ? アンタが起きてきて、猫がいなくなってたら、アンタ、びっくりするわよね?」
ここで、謎は解けました。
つまりママ、あなた、連れて行ったのね? わたしの猫を。わたしに無断で。
「だって、一緒に行きたいって猫が言うんだもの!」
飼い主に無断で連れ出したらまずいってわかっていながら、それでも連れ出したのね?
「だって、猫が行きたがるんだもの!」
この誘拐犯め(笑)。
「拉致して帰ったのはいいけど、猫ったらすぐにアンタの家に帰りたいって言い出すんだもの。仕方なく、またアンタんちに猫だけ返しに行ったのよ」
それが、2回目のドアの音ね。ドアが開いた音はしたけど、人が入ってくる気配はなかった。
まったく、朝からなにやってんのよ、猫に振り回されて。
「猫ってば、ちょっと目を離した隙に、ウチの玄関口でおしっこしたのよ。サンダルがひとつ、被害に遭ったわ」
母は言う。
「トイレを借りに行って、代わりに猫のトイレにされて。さんざんだわ……でもま、猫がおしっこしたのは、弟のサンダルだから別にいいんだけど」
弟にトイレを占領されたがゆえに、すべてが起こった。
そして、災難は弟に収束し、朝のミステリは終結する。ちゃんちゃん。
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