1日ずれてるけど、30日に『BOXMAN』を観てきました。2回目の観劇ね。

 思ったんだが、ケビンってさ、恋に壊れる男なんじゃないか?

 恋したあととそれ以前の彼は、別人なんですけど……。

 ケビンってほら、かっこいー男じゃない。ハンサムでちょいと謎めいていて。それなりに社交的だけど、どっか底が見えないとこがあるというか。会社にこんな男がいたら、女子社員は噂の種にしていそうだな……高嶺の花として。
 話しかければ相手もしてくれるし、お酒にもつきあってくれそーだが、それ以上を求めたらぴしゃっと線を引かれるというか。いい男よねー、カノジョいるのかなぁ、そりゃいるでしょうよ、と噂するだけで遠巻きにしているしかないっちゅーか。
 怒らせたらこわそうだし、穏和そうに見えてどこか冷たい雰囲気あるし。
 ……そんな男だったのに、ケビン。

 ドリーと両想いになったあとのにやけっぷりはなんですか!!(笑)

 恋愛は本来、彼のテリトリーにはないのでしょう。
 ドリーを愛していること自体、気づくのが遅すぎ。チャンプが悪人だとわかり、こんな男とドリーを結婚させるわけにはいかない!と思ったのに、まだ気づかない。相手が悪人だから結婚反対なんじゃなくて、ドリーが他の男と結婚するのが嫌なんだって、どーして気づかないかな。
 ドリー本人にそこをつっこまれて、「そうか、相手云々じゃないんだ、俺がドリーを愛してるんだ」と気づいたときも、なんとゆーかまだるっこしい感じだったし。
 自分のテリトリー外の事態に気づき、「どーしたもんか」と困惑している。恋をしている自分、というものを、もてあましているような。

 なのに、いざ両想いになったら。

 突然笑顔満面、いちゃいちゃ開始、ピンクの花びら飛び散らせ、ラヴラヴエンドレス。

 うわ、ケビンが壊れた。

 人格、別モノになってますがな? いいのかソレ。

 ふたりが両想いになると同時に芝居も終わりで、ふたりのダンスがそのままフィナーレに突入なわけだから、仕方ないのかもしれない。
 あそこまでケビンが壊れるのは、フィナーレとしてのファンサービスなんだとわかってはいる。
 いるが……あそこまで彼をめろめろにする必要はあったのか、正塚せんせー?

 ケビンが壊れた。
 と、思う。
 それまでの彼と、ドリーといちゃいちゃ歌い踊る彼はあまりに別人。

 ああ、だけど。
 だけどわたし、あの壊れたケビン、すげー好き!(笑)

 あのクールな男が、とろけそーにしあわせな顔でカノジョといちゃいちゃしまくってるのって、見ていてすっげーツボなんですが。
 乙女心がきゅんきゅんします(笑)。
 世界中のすべてに冷たい男なのに、彼ったらわたしにだけはめろめろなのー、わたしにだけは超やさしいのー。
 という、ときめきですわ。
 彼のこんな顔を見れるのは、わたしだけなのよー!という。
 少女マンガの定番ですわ。
「世界中を敵に回しても、俺はお前だけを守る」
 てな男に、ヲトメがころりと落ちるよーなもんですわ。
 誰にでもやさしい男にやさしくされてもときめかないが、いつも冷たい男にやさしくされたらときめくよーなもん。それこそ、不良だと言われている男の子が、捨て猫にエサをやっているところを見て恋に落ちるよーなノリで(笑)。

 個人的にわたし、「ケビンの片膝に坐るドリー」に死ぬほど萌えたんですがっ!!
 うわ〜〜んっ、いいないいな、あんなのいいなー。
 ケビンが長身の二枚目だからこそできる技。
 あの広い胸と長い脚で、女の子を守るよーに坐らせちゃうのねー。
 ああ……久しく忘れていたときめきだわ……そーよわたし、女の子だったんだわー。てな(笑)。

              
 素直に、恋愛ドラマを見るノリで、たのしみました、『箱男』。

 画面がおしゃれで、主人公が少女マンガそのままのハンサムで、ヒロインに感情移入できて、と。

 正塚氏の脚本でうまいなと思うのは、台詞の少なさなんだよね。
 台詞で解説しないこと。
 日常会話にしか聞こえない、登場人物同士でのみ通じている短い台詞の応酬で、背景を浮かび上がらせる。

 今回、いちばん感心したのが、ドリーの「恐怖症」。
 ドリーは頭ごなしに怒鳴られるのがダメ。身体がすくんでなにもできなくなる。ただ苦手なだけじゃなく、精神的な疾患にまで至っている。彼女が意気地なしだから、というわけではなく、たぶんきっと……トラウマなんだろう。子どものころに、精神を深く傷つけられることがあったんだろう。
 それについての説明はなにもない。
 だから観客は、それに対して想像するのみ。
 彼女が父不在の家庭で孤軍奮闘していることからして、父親が原因なんじゃないかと思う。本来気の強い彼女が、あそこまで震え上がるのはたぶん、「大人の男性」に「上から」怒鳴りつけられることによって起こるんじゃないかと。「上から」ってのは、背の高さじゃなくて、「立場」ね。
 絶対に逆らえない相手から、一方的に罵られ命令され否定されること。……幼いころに、相当深い傷を受けたんじゃないか?

 そんな、自分ではどうしようもない傷をかかえて、それでも病気の母を抱えてがんばって男社会で戦う彼女。
 そんな彼女に対して、ケビンがものすげーふつーに、さりげなく、やさしい。

 ケビンがいい人だという「説明」はないけれど、ドリーに対する言動でわかるんだよね。一見クールな彼が、実はやさしい男だということが。
 すくみあがるドリーに対して、無神経な男ならさらに怒鳴り散らしていると思う。そーゆー男は世の中多い。
 これだから女はダメだとか、怒鳴られるのがこわいなんて甘えているからだとか。病気のせいにするな、単にやる気がないだけだとか。
 いくらでも責めることはできるのに、ケビンはそんなふうには受け取らない。
 ドリーが震えているのは彼女が甘ったれているからでもヘタレているからでもなく、どーしよーもない部分でのことなんだと理解し、咄嗟に手をさしのべている。
 また、ドリーのミスゆえに怒り狂う社長を前にして、「立っているだけでもやっと」てな感じのドリーを、ケビンはあったりまえってな感じに、支えている。彼女の腕に、手を置いてるんだよね。社長が怒鳴っている間、ずーっと。

 そりゃ、ドリーはケビンに恋するでしょう。
 自分がいっぱいいっぱいで、どん底で立ち上がることもできないでいるときに、恋人でもないただの同僚が、矢面に立って自分を守ってくれてるんだよ? 支えてくれてるんだよ?
 声高に主張するわけでなく、すごーくさりげなく。クールな顔で、なんでもないよーに。

 惚れるって。
 その手に、すがりつくって。

 その手に支えられて、トラウマを乗り越え、怒鳴り散らす社長に反対にくってかかりもするって。

 ……恋愛ドラマとして、とてもたのしかったのよ。
 ドリーに感情移入しまくりだったよ。
 だからこそ、あのクールなケビンが最後、ドリーとラヴラヴいちゃいちゃで壊れきってるのがまた、愛しい(笑)。

 ああ、ヲトメ心。
 腐女子ハートはちょっとよそへ置き去りにして、女に生まれた醍醐味を堪能しました。

 もちろん、ケビンに「いい男」があらわれてくれても、ときめいたとは思いますが(笑)。受かな、攻かな、ケビン。相手次第だよね?

               

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