話題性No.1プリン。
2004年3月18日 家族 緑野家の夕飯には、デザートが欠かせない。
季節のフルーツか、プリンやヨーグルトなどの「つるっと食べられる」お菓子が多い。
本日のデザートは、プリンだった。
しかし、本日のプリンは……。
「なんかコレ、すごくない?」
「すごい。いろんな意味ですごい」
「まず、よくもこんなプリン、作るよね。昭和中期の雰囲気?」
「次にすごいのは、よりによってコレを買ってくることだな」
わたしと弟は、本日のプリンをネタに盛り上がる。
そう、そのプリンは、よくスーパーで売っている「3個で1パック」の安物プリンだった。
そのことはいい。緑野家はいつだって、自分たちのランクに応じた安い食べ物を機嫌良く食べている。
スーパーで安いプリンを買うのは当たり前。
ブランドなんぞ気にしません。
ふつーに食べられれば、それでよいのです。
そんなわたしたちでさえ、震撼させてしまう、本日のプリン。
メーカーは知りません。
チェックしなかった。
見たことも聞いたこともない商品名と、パッケージ。
そう、そのプリンをひとめ見て、わたしと弟は思いました。
うっわー、まずそう。
まるでショーケースの中のイミテーション。安物のプラスチック製のおもちゃにしか見えない。
えーとコレ、食べ物だよね? 食べられるんだよね?
と、不安になってしまうよーなプリン。
「ここまでまずそうな姿をしているのに、そのうえ正気か、このパッケージ」
「あー、ひどいねー、よりショボさを強調しているというか……プリン本体でも安っぽくてまずそうなのに、パッケージがソレに輪をかけて安っぽくてまずそうなのはナニ?」
「カラー印刷なのに何故、よりによってこんなまずそうなデザインにするんだ?」
「ショボいプリンやヨーグルトだと、3色印刷に子どもだましのイラスト、とかあるよねえ。でもコレはわざわざ写真使ってカラー印刷だから、ソレよりはお金かかってそうなのに……このショボさは……」
「プリンのカップひとつずつに印刷しないで、1パックの箱に印刷した方がよくないか?中のプリンが外から見えたら、まずそうなのが一目瞭然でやばいだろ」
「箱の印刷と、プリンのラベルの印刷は、どちらがコストかかるのかねえ」
わたしたちは真剣に、「どんなパッケージにすれば、このまずそうなプリンの印象をよくすることができるか」を討論する。
「でもさ、箱だけおしゃれでおいしそうで、開けてみてこのプリンが出てきたら、消費者は怒るんじゃないか?」
「それもそうか。『詐欺だ!』と思うかもしんないなあ」
「今のパッケージなら、まずそうなのはひとめでわかるじゃん。プリンなんて何十種類も売っているのに、わざわざこんなまずそうな外観のプリンを買う客は、実際に食べてみてまずいからって怒らないだろ」
「たしかに。まずいことを予想して買うだろうから、文句はつけないだろうね」
とまあ、見た目だけでさんざんに言っておりましたが。
先に食事を終えた弟が、問題のプリンを食べようとしました。
……ラベルの品質が悪いので開けにくく、開封するだけで一苦労(笑)。
ぷっちん機能付きカップなので、お皿に伏せて、カップ底のつまみを折ろうとするのだけど、プラスチックの品質が悪いので簡単には折れず、またしても一苦労(笑)。
「なんか、すごくかなしくなってきた……」
こんなびんぼくさい食べ物にバカにされてる気がする。弟はそう言うのだ。
がんばれ弟。
苦労の末、よーやくプリンを試食した弟は。
「見たまんまの味……」
と、言いました。
つまり、まずいわけです。
「砂糖味そのまんま……昭和中期とか、モノのない時代なら、砂糖の味ってことで、よろこばれたかもな」
たべながら弟は、パックの裏の表示を眺めている。
「いや、カラダに悪い成分とか入ってそうな気がして。昔は認可が下りてたかもしれないけど、21世紀の現代では使われてないよーなものが」
見た目からしてまずそうで、カラダに悪そうで、びんぼくさくて、実際にとてもまずい、このプリン。
「誰が買うんだろう……」
「ふつーの人はまず、買わないよね? 安ければ買うか?」
「いや、安いといっても限度があるだろう。他商品と比べてわずかに安いぐらいじゃこんなまずそうなものは買わないだろうし、安すぎればかえって不安になるだろう」
「有名メーカーの商品が安ければ『ラッキー』と思って買うけど、こんないかにも怪しい、カラダに悪そうな商品がものすごーく安かったら、なんかこわいよねえ」
語り続けるわたしたちの後ろで、こんなとんでもないプリンを買ってきた母は、
「アタシは知らないわ。なにも見ないで買ったんだもの! プリンはただプリンでしょう?こあらが大きいプリンを買ったら怒るから、小さいやつが3つ入ったのを買っただけじゃない。だって他には売ってなかったんだもの。あとはみんな大きくて……」
と、誰も聞いていない言い訳を並べ続けている。
母の口癖は「だって(反論)」と「恐れ入ったか!(自慢)」と「私は悪くない(転嫁)」なので、いちいち誰もマトモに取り合わない。
世界一忙しい母は、買い物するときにも商品を確かめたり比べたり選んだりしないのだ。1秒が惜しい人だから。
おかげで我が家には、不思議な食べ物がよく登場する。
このモノがあふれた現代に、何故、よりによってソレを買ってくるかな、とゆーよーなモノが。
わたしたちは、真剣に消費対象者についての考察をした。
「いかにも安っぽくて、まずそうで、子どもだまし……」
「駄菓子屋で売ってそうだよね」
「笑えるほどプリン。プリン以外のなにものでもない、言い訳のようにプリンでしかないデザイン」
「選ぶ権利があれば、まず買わない商品を、どう売るか」
「選ぶ権利のない客に売りつけるとか?」
「ソレだ!!」
結論は出た。
「そーいや、給食についてるプリンってこんなだった」
「あと、お子様ランチについてるプリン」
プリンである、というだけのプリン。
言い訳のようなプリン。
母が出してきたレシートには、業務用スーパーと店名が印字してあった。
やっぱり業務用かい(笑)。
「ところで、ねーちゃんは食わんのか?」
あら。喋るだけ喋ってて、食べるの忘れてた。
品質が悪いためにわたしの力ではラベルを開けることができず、弟に開けてもらい、品質が悪いためにぷっちんできずにカップの端にスプーンつっこんで強引に皿に移し。
食べましたともさ!! 人生は冒険だ!!
まっ・ずー。
いやあ、見た目通りのまずさ。看板に偽りナシ(笑)。
砂糖甘くて、しかもそれを水で薄めたような味。昔、駄菓子屋で買った粉ジュースを水で溶いたときの味だわ。
ちと郷愁に浸ってみたり。
「それにしても、すごい破壊力を持ったプリンだ」
弟が呆然と言う。
「それまで、何の話をしていたか、忘れてしまったよ」
うん、まったくだ。わたしらたしか、『街』の話をしていたはずなんだが……スコーンと抜けちゃったね……。
季節のフルーツか、プリンやヨーグルトなどの「つるっと食べられる」お菓子が多い。
本日のデザートは、プリンだった。
しかし、本日のプリンは……。
「なんかコレ、すごくない?」
「すごい。いろんな意味ですごい」
「まず、よくもこんなプリン、作るよね。昭和中期の雰囲気?」
「次にすごいのは、よりによってコレを買ってくることだな」
わたしと弟は、本日のプリンをネタに盛り上がる。
そう、そのプリンは、よくスーパーで売っている「3個で1パック」の安物プリンだった。
そのことはいい。緑野家はいつだって、自分たちのランクに応じた安い食べ物を機嫌良く食べている。
スーパーで安いプリンを買うのは当たり前。
ブランドなんぞ気にしません。
ふつーに食べられれば、それでよいのです。
そんなわたしたちでさえ、震撼させてしまう、本日のプリン。
メーカーは知りません。
チェックしなかった。
見たことも聞いたこともない商品名と、パッケージ。
そう、そのプリンをひとめ見て、わたしと弟は思いました。
うっわー、まずそう。
まるでショーケースの中のイミテーション。安物のプラスチック製のおもちゃにしか見えない。
えーとコレ、食べ物だよね? 食べられるんだよね?
と、不安になってしまうよーなプリン。
「ここまでまずそうな姿をしているのに、そのうえ正気か、このパッケージ」
「あー、ひどいねー、よりショボさを強調しているというか……プリン本体でも安っぽくてまずそうなのに、パッケージがソレに輪をかけて安っぽくてまずそうなのはナニ?」
「カラー印刷なのに何故、よりによってこんなまずそうなデザインにするんだ?」
「ショボいプリンやヨーグルトだと、3色印刷に子どもだましのイラスト、とかあるよねえ。でもコレはわざわざ写真使ってカラー印刷だから、ソレよりはお金かかってそうなのに……このショボさは……」
「プリンのカップひとつずつに印刷しないで、1パックの箱に印刷した方がよくないか?中のプリンが外から見えたら、まずそうなのが一目瞭然でやばいだろ」
「箱の印刷と、プリンのラベルの印刷は、どちらがコストかかるのかねえ」
わたしたちは真剣に、「どんなパッケージにすれば、このまずそうなプリンの印象をよくすることができるか」を討論する。
「でもさ、箱だけおしゃれでおいしそうで、開けてみてこのプリンが出てきたら、消費者は怒るんじゃないか?」
「それもそうか。『詐欺だ!』と思うかもしんないなあ」
「今のパッケージなら、まずそうなのはひとめでわかるじゃん。プリンなんて何十種類も売っているのに、わざわざこんなまずそうな外観のプリンを買う客は、実際に食べてみてまずいからって怒らないだろ」
「たしかに。まずいことを予想して買うだろうから、文句はつけないだろうね」
とまあ、見た目だけでさんざんに言っておりましたが。
先に食事を終えた弟が、問題のプリンを食べようとしました。
……ラベルの品質が悪いので開けにくく、開封するだけで一苦労(笑)。
ぷっちん機能付きカップなので、お皿に伏せて、カップ底のつまみを折ろうとするのだけど、プラスチックの品質が悪いので簡単には折れず、またしても一苦労(笑)。
「なんか、すごくかなしくなってきた……」
こんなびんぼくさい食べ物にバカにされてる気がする。弟はそう言うのだ。
がんばれ弟。
苦労の末、よーやくプリンを試食した弟は。
「見たまんまの味……」
と、言いました。
つまり、まずいわけです。
「砂糖味そのまんま……昭和中期とか、モノのない時代なら、砂糖の味ってことで、よろこばれたかもな」
たべながら弟は、パックの裏の表示を眺めている。
「いや、カラダに悪い成分とか入ってそうな気がして。昔は認可が下りてたかもしれないけど、21世紀の現代では使われてないよーなものが」
見た目からしてまずそうで、カラダに悪そうで、びんぼくさくて、実際にとてもまずい、このプリン。
「誰が買うんだろう……」
「ふつーの人はまず、買わないよね? 安ければ買うか?」
「いや、安いといっても限度があるだろう。他商品と比べてわずかに安いぐらいじゃこんなまずそうなものは買わないだろうし、安すぎればかえって不安になるだろう」
「有名メーカーの商品が安ければ『ラッキー』と思って買うけど、こんないかにも怪しい、カラダに悪そうな商品がものすごーく安かったら、なんかこわいよねえ」
語り続けるわたしたちの後ろで、こんなとんでもないプリンを買ってきた母は、
「アタシは知らないわ。なにも見ないで買ったんだもの! プリンはただプリンでしょう?こあらが大きいプリンを買ったら怒るから、小さいやつが3つ入ったのを買っただけじゃない。だって他には売ってなかったんだもの。あとはみんな大きくて……」
と、誰も聞いていない言い訳を並べ続けている。
母の口癖は「だって(反論)」と「恐れ入ったか!(自慢)」と「私は悪くない(転嫁)」なので、いちいち誰もマトモに取り合わない。
世界一忙しい母は、買い物するときにも商品を確かめたり比べたり選んだりしないのだ。1秒が惜しい人だから。
おかげで我が家には、不思議な食べ物がよく登場する。
このモノがあふれた現代に、何故、よりによってソレを買ってくるかな、とゆーよーなモノが。
わたしたちは、真剣に消費対象者についての考察をした。
「いかにも安っぽくて、まずそうで、子どもだまし……」
「駄菓子屋で売ってそうだよね」
「笑えるほどプリン。プリン以外のなにものでもない、言い訳のようにプリンでしかないデザイン」
「選ぶ権利があれば、まず買わない商品を、どう売るか」
「選ぶ権利のない客に売りつけるとか?」
「ソレだ!!」
結論は出た。
「そーいや、給食についてるプリンってこんなだった」
「あと、お子様ランチについてるプリン」
プリンである、というだけのプリン。
言い訳のようなプリン。
母が出してきたレシートには、業務用スーパーと店名が印字してあった。
やっぱり業務用かい(笑)。
「ところで、ねーちゃんは食わんのか?」
あら。喋るだけ喋ってて、食べるの忘れてた。
品質が悪いためにわたしの力ではラベルを開けることができず、弟に開けてもらい、品質が悪いためにぷっちんできずにカップの端にスプーンつっこんで強引に皿に移し。
食べましたともさ!! 人生は冒険だ!!
まっ・ずー。
いやあ、見た目通りのまずさ。看板に偽りナシ(笑)。
砂糖甘くて、しかもそれを水で薄めたような味。昔、駄菓子屋で買った粉ジュースを水で溶いたときの味だわ。
ちと郷愁に浸ってみたり。
「それにしても、すごい破壊力を持ったプリンだ」
弟が呆然と言う。
「それまで、何の話をしていたか、忘れてしまったよ」
うん、まったくだ。わたしらたしか、『街』の話をしていたはずなんだが……スコーンと抜けちゃったね……。
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