正しい物語なのに。@ワンピース 呪われた聖剣
2004年3月11日 映画 世の中に職種はあまたあり、それに従事することによって「プロ」となる。
プロ、エキスパート、専門家、熟練者、職業人。
呼び方はいろいろあるわな。
プロっちゅーのは、それによって糧を得ている、という意味もあるが、ここでこだわりたいのはやはり、熟練度だわな。
誰だって、やるだけならできる。
パンを作ることだってそばを打つことだって、小説を書くことだって、舞台で歌い踊ることだって、やろうと思うなら今すぐにでもできるよ。
うまい下手は別としてな。
道具と材料とレシピがあれば、わたしにだってパンは作れるよ。そばは打てるよ。1日体験教室で、たのしく作ったさ。
でも、わたしが作ったパンも、打ったそばも、職人さんの作るものには遠く及ばないさ。てか、比べること自体失礼さ。
それくらい、プロと素人の差ってのはあるんだ。
べつにソレ、いちいち言わなくてもいいくらい、当たり前のことだし。世の常識だし。
わたしは、プロの仕事ってのはすごいもんだと思っているのよ。
ひとつの事柄を極めるってのは、すごいことだよ。
真似できない技術なんだよ。
傍目には「なんてことない」ものに見えても、そこにはとびきりの技術と経験と工夫があるものなのさ。
だから、プロの仕事を大切にして欲しい。
傍目には簡単でも、やってみたらものすごーく難しいんだから。
誰にでもできるというなら、その職に「プロ」がいるわけないじゃん。わざわざ「専門家」がいるってことは、それが「必要」だからだよ。
プロの仕事を、軽んじないで。
と。
心の底から思いました。
『ワンピース 呪われた聖剣』鑑賞。
映画館にいるガキは超絶苦手なので、災難に遭遇しないために鋭意努力中。ガキの見る映画は、春休みになる前にとっとと見てしまわなくては。
つーことで先日、公開すぐに見に行きました。
子どもはいなくて、泣かれたり暴れられたり蹴られたり髪の毛ぐしゃぐしゃにされたりはしなかったけど、かわりにオタクがうるさかったです。はー、なんであんなに喋りまくるんだろーねー。
いつものことだが、予備知識はナシ。
『ONE-PIECE』命!のWHITEちゃんがなにやら浮かれたことを口走っていたが、あまり記憶には残ってない。サンジファンの彼女は、サンジ中心にしか喋らないからな。WHITEちゃんの話だけだと、サンジ主役の映画に聞こえるよ……。
芸能人が声優として出演する旨のニュースは目にしたけど、それも興味がなかったのでスルーしていた。
わたしの頭にあったのは、「『ONE-PIECE』の映画、2本目」ということだけ。
ポケモンだっけデジモンだっけかと同時上映だったヤツは、「映画」のうちのカウントしてません。単独上映になってからが、「映画」。だからこれが2本目。
1本目がおもしろかったから、期待していた。
まっとうな「映画」としての作り。徹底したエンタメ力とサービス精神。売れている作品の余力のある勢い。1本目は、それらがとても気持ちのいい作品だったから。
そして、今回の『ワンピース 呪われた聖剣』。
……たのしくなかった……。がっくり。
他タイトルと同時上映だったころの『ワンピ』は、むきだしのエンタメであり、ストーリー以前のお約束だけのサービスアイテムでしかなかった。
ソレを経て晴れて単独上映となり、テレビシリーズで培った土壌をバネに「独立した物語」を作った。彼ら麦わら海賊団が、原作には描かれていないところで出会っていた冒険のひとつとして、長編ならではの起承転結のある「正しい物語」を展開した。
映画であることの、わくわく感。テレビとはチガウ、「いつもよりすごいことになるにちがいない」という期待を裏切らず、「いつも」を大切にしたまま、「いつもより派手に愉快に」ぶちあげてくれた。
さて、ここまではとても正しい作りだ。
娯楽作品シリーズの流れとして、とても王道であり、まっとうな構成だ。
では次は?
1本目は「いつもより派手に」で、きれいにまとめることができた。
じゃあ2本目はどうしよう。「派手に」するのは基本だけど、それには限界がある。
そして来ました、これまた王道。
「仲間割れ」。
いつもの仲間たちで派手にするのが限界なら、仲間同士で戦わせればいいんだ。
物語作りの基本中の基本、テンプレといってもいいネタです。
王道OK、お約束上等。
エンタメとはお約束をどう料理するかですよ。
だから、ゾロが敵になる、というネタは直球ど真ん中キターー!てなもん。
この王道ネタを、エンタメ力の安定したスタッフがどう見せてくれるのかを、期待していましたよ。
で、実際に見て思ったことは。
えーと。
さすがです。
お約束でありテンプレであるので、なんの問題もなく、料理しきってました。
敵となったゾロと戦うのが、ルフィではなくよりによってサンジだというのも、キャラを理解したうえでのことだとわかります。ニクいなぁ、と思います。
ゾロという男のシンプルな頭の中には、ルフィというくっきりはっきりしたキャラの他は「仲間」というややぼけたビジュアルのキャラが数人いて、あとはくっきりした「宿敵」とか、顔のない「敵」とか「その他の人」とかがいるんだと思っています。
だから、ゾロがルフィと戦うのは、NG。戦わせるならもっとちゃんとした前振りと深い物語が必要。どーぶつ並のゾロの頭の中で、唯一無二の位置にいるのが、彼の認めた「海賊王」なのだから。
じゃ、残りの仲間のうち、誰と戦わせるか。……消去法でサンジしかいないでしょう。ゾロは弱いモノに剣は向けないから。女にも乱暴はしないから。戦闘員であるサンジくんになら、多少ナニかしても大丈夫です。
「お約束」だけでいうなら、いちばん盛り上がるのは対ルフィだとわかっていながら、あえてルフィとは戦わせず、対サンジなのが、スタッフが「作品世界」を大切にしているんだなと思わせてくれる。
……腐女子的にも、ゾロVSサンジはオイシイはずだしな(笑)。
作品の構成はまちがっていない。
キャラの人格と言動を大切にし、オイシイネタをあちこちふりまいて、つっこみどころも満載だが元気よく派手に盛り上げてくれる、正しいエンタメ。
なのに。
わたしには、たのしめなかったんだわ……。がっくり。
なんでかなあ。
なんでこんなに、世界に入りにくいのかなあ。なんでこんなに覚めた気持ちで、萎えた気分で、「長いなあ、今何時? まだ終わらないのかー」なんて考えながら見てしまったんだ?
物語としての構成がまちがってないのに、オイシイのに、ここまで萎える原因。
頼むから、素人を出演させるのはやめてくれ。
これに尽きるのだわ……。
ヅカを観ていて、ときどき椅子から転げ落ちそうになる下手な歌を聴いたりするが、この映画では歌じゃなく通常の「演技」で、椅子から転げ落ちそうになった。
歌なら、1時間半の芝居の中の数分ですむけど、演技だと、そいつらが出ている時間全部が、苦痛でしかないのよ……。
つーことで、冒頭のプロうんぬんの話になるわけだが、ここで文字数限界。つづく。
プロ、エキスパート、専門家、熟練者、職業人。
呼び方はいろいろあるわな。
プロっちゅーのは、それによって糧を得ている、という意味もあるが、ここでこだわりたいのはやはり、熟練度だわな。
誰だって、やるだけならできる。
パンを作ることだってそばを打つことだって、小説を書くことだって、舞台で歌い踊ることだって、やろうと思うなら今すぐにでもできるよ。
うまい下手は別としてな。
道具と材料とレシピがあれば、わたしにだってパンは作れるよ。そばは打てるよ。1日体験教室で、たのしく作ったさ。
でも、わたしが作ったパンも、打ったそばも、職人さんの作るものには遠く及ばないさ。てか、比べること自体失礼さ。
それくらい、プロと素人の差ってのはあるんだ。
べつにソレ、いちいち言わなくてもいいくらい、当たり前のことだし。世の常識だし。
わたしは、プロの仕事ってのはすごいもんだと思っているのよ。
ひとつの事柄を極めるってのは、すごいことだよ。
真似できない技術なんだよ。
傍目には「なんてことない」ものに見えても、そこにはとびきりの技術と経験と工夫があるものなのさ。
だから、プロの仕事を大切にして欲しい。
傍目には簡単でも、やってみたらものすごーく難しいんだから。
誰にでもできるというなら、その職に「プロ」がいるわけないじゃん。わざわざ「専門家」がいるってことは、それが「必要」だからだよ。
プロの仕事を、軽んじないで。
と。
心の底から思いました。
『ワンピース 呪われた聖剣』鑑賞。
映画館にいるガキは超絶苦手なので、災難に遭遇しないために鋭意努力中。ガキの見る映画は、春休みになる前にとっとと見てしまわなくては。
つーことで先日、公開すぐに見に行きました。
子どもはいなくて、泣かれたり暴れられたり蹴られたり髪の毛ぐしゃぐしゃにされたりはしなかったけど、かわりにオタクがうるさかったです。はー、なんであんなに喋りまくるんだろーねー。
いつものことだが、予備知識はナシ。
『ONE-PIECE』命!のWHITEちゃんがなにやら浮かれたことを口走っていたが、あまり記憶には残ってない。サンジファンの彼女は、サンジ中心にしか喋らないからな。WHITEちゃんの話だけだと、サンジ主役の映画に聞こえるよ……。
芸能人が声優として出演する旨のニュースは目にしたけど、それも興味がなかったのでスルーしていた。
わたしの頭にあったのは、「『ONE-PIECE』の映画、2本目」ということだけ。
ポケモンだっけデジモンだっけかと同時上映だったヤツは、「映画」のうちのカウントしてません。単独上映になってからが、「映画」。だからこれが2本目。
1本目がおもしろかったから、期待していた。
まっとうな「映画」としての作り。徹底したエンタメ力とサービス精神。売れている作品の余力のある勢い。1本目は、それらがとても気持ちのいい作品だったから。
そして、今回の『ワンピース 呪われた聖剣』。
……たのしくなかった……。がっくり。
他タイトルと同時上映だったころの『ワンピ』は、むきだしのエンタメであり、ストーリー以前のお約束だけのサービスアイテムでしかなかった。
ソレを経て晴れて単独上映となり、テレビシリーズで培った土壌をバネに「独立した物語」を作った。彼ら麦わら海賊団が、原作には描かれていないところで出会っていた冒険のひとつとして、長編ならではの起承転結のある「正しい物語」を展開した。
映画であることの、わくわく感。テレビとはチガウ、「いつもよりすごいことになるにちがいない」という期待を裏切らず、「いつも」を大切にしたまま、「いつもより派手に愉快に」ぶちあげてくれた。
さて、ここまではとても正しい作りだ。
娯楽作品シリーズの流れとして、とても王道であり、まっとうな構成だ。
では次は?
1本目は「いつもより派手に」で、きれいにまとめることができた。
じゃあ2本目はどうしよう。「派手に」するのは基本だけど、それには限界がある。
そして来ました、これまた王道。
「仲間割れ」。
いつもの仲間たちで派手にするのが限界なら、仲間同士で戦わせればいいんだ。
物語作りの基本中の基本、テンプレといってもいいネタです。
王道OK、お約束上等。
エンタメとはお約束をどう料理するかですよ。
だから、ゾロが敵になる、というネタは直球ど真ん中キターー!てなもん。
この王道ネタを、エンタメ力の安定したスタッフがどう見せてくれるのかを、期待していましたよ。
で、実際に見て思ったことは。
えーと。
さすがです。
お約束でありテンプレであるので、なんの問題もなく、料理しきってました。
敵となったゾロと戦うのが、ルフィではなくよりによってサンジだというのも、キャラを理解したうえでのことだとわかります。ニクいなぁ、と思います。
ゾロという男のシンプルな頭の中には、ルフィというくっきりはっきりしたキャラの他は「仲間」というややぼけたビジュアルのキャラが数人いて、あとはくっきりした「宿敵」とか、顔のない「敵」とか「その他の人」とかがいるんだと思っています。
だから、ゾロがルフィと戦うのは、NG。戦わせるならもっとちゃんとした前振りと深い物語が必要。どーぶつ並のゾロの頭の中で、唯一無二の位置にいるのが、彼の認めた「海賊王」なのだから。
じゃ、残りの仲間のうち、誰と戦わせるか。……消去法でサンジしかいないでしょう。ゾロは弱いモノに剣は向けないから。女にも乱暴はしないから。戦闘員であるサンジくんになら、多少ナニかしても大丈夫です。
「お約束」だけでいうなら、いちばん盛り上がるのは対ルフィだとわかっていながら、あえてルフィとは戦わせず、対サンジなのが、スタッフが「作品世界」を大切にしているんだなと思わせてくれる。
……腐女子的にも、ゾロVSサンジはオイシイはずだしな(笑)。
作品の構成はまちがっていない。
キャラの人格と言動を大切にし、オイシイネタをあちこちふりまいて、つっこみどころも満載だが元気よく派手に盛り上げてくれる、正しいエンタメ。
なのに。
わたしには、たのしめなかったんだわ……。がっくり。
なんでかなあ。
なんでこんなに、世界に入りにくいのかなあ。なんでこんなに覚めた気持ちで、萎えた気分で、「長いなあ、今何時? まだ終わらないのかー」なんて考えながら見てしまったんだ?
物語としての構成がまちがってないのに、オイシイのに、ここまで萎える原因。
頼むから、素人を出演させるのはやめてくれ。
これに尽きるのだわ……。
ヅカを観ていて、ときどき椅子から転げ落ちそうになる下手な歌を聴いたりするが、この映画では歌じゃなく通常の「演技」で、椅子から転げ落ちそうになった。
歌なら、1時間半の芝居の中の数分ですむけど、演技だと、そいつらが出ている時間全部が、苦痛でしかないのよ……。
つーことで、冒頭のプロうんぬんの話になるわけだが、ここで文字数限界。つづく。
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