星組公演『1914/愛』の話の続き。

 物語は、「嘘からはじまった恋」の主人公アリスティド@ワタルくんとアデル@檀ちゃんを中心にして進む。
 このでこぼこカップル、とってもお似合いなんだけど、どーしてこう元気に全力疾走で回り道をするかな(笑)、というふたりをかわいらしく描いてある。

 このふたりだけしか、物語らしい物語はない。
 ああ、世界はふたりのために。

 アリスティドとアデルが出会って恋して誤解していったん離れてでもやっぱり愛してる! というだけの話。
 話の内容が少ないから、破綻していない、というのもあるとは思うよ。
 でもそれ重要だし。
 決められた時間内に起承転結やらなきゃなんないんだから、欲張ってあれこれ詰め込んでも破綻するだけさ。
 潔く、単純な物語にしたのは正しい。

 このバカップルの物語に、ちょいと絡めてみたのがアポリネール@カシゲ他、芸術家たちの物語。

 ええ、絡めただけ。
 本筋にちょっとばかし。

 時代を説明するため、主役ふたりの立場を説明するため。
 それだけの扱い。

 ……主役以外の、ある程度スターな生徒のファンなら、怒るかもな。この扱い。
 極端な話、ふたり芝居でもOKだったもんよ。
 芸術家たちなんか、いなくても話は通る。

 わたしは主役以外のある程度な人のファンで、その人はいつ出てくるんだと心配してしまうくらい出番がなかったが、そんなのべつに、気にならない。

 作品が壊れていないことの方が、重要だ。

 主役の背景と立ち位置がはっきりわかって、彼と彼女が中心に物語が進み、テーマなんかぶちあげながら、一生懸命生きて元気にハッピーエンド。
 それでいいじゃん。

 そう。
 わたしはこの作品、大好きだ。

 ツボなのよ、ツボ(笑)。
 そーいやわたし、『タンゴ・アルゼンチーノ』も好きだったわ。

 夢に向かう若者たちの物語が好きなの。

 夢を見て、夢のために、あるかないかわからない才能を信じて、ときに疑って、世間を恨んだり壁にぶつかったり、自暴自棄になったりしながら、それでも、夢を捨てきれずに走り続ける。
 自分を壊しながら、作品をつくりつづける。
 そうすることでしか、生きられないから。

 呼吸をするように、夢を必要として。
 そうやって生きることしかできない若者たちの物語だから。

 現実は、過酷だけれど。

 シリアス部分はアポリネール@カシゲ担当でしたな。
 主役カップルがコメディ一直線のなか、カシゲはシリアス一直線。
 冤罪で拘留されるわ、失恋はするわ、戦争に行くわ。
 たぶん、おいしい役なんだと思うよ。かっしーがやってるから、どーにも影が薄いけど。
 詩を書くために戦場に行く、と言い切る姿が胸にせまったわ。詩人としての建前かもしれないけれど、たぶん本音だと思うから。
 モノを創る人間なら、作品のために自分の命ぐらい危険にさらして平気でしょうよ。そうやって心のひだを深くすることを望むでしょうよ。それくらい、壊れていてこそでしょう? 芸術家なんて。
 心の傷は全部、財産だよね。モノを創り出すための。
 他の芸術家たち、モディリアーニ@タニちゃん、ユトリロ@まとぶんも、そうやって自分を傷つけながら、芸術を生み出す生き方を選んでいたね。

 それにしても、主役カップルがかわいいんですが(笑)。

 最初は、アリスティドのわざとらしい「俺様喋り」が気持ち悪くて耳障りだったんだけど、「実はお貴族様」で、ふつーに喋ることもできるんだってのがわかってからは平気になった。そっか、わざと柄悪くしてるうちに、あんな行きすぎたキャラになっちゃったのね、アリスティド(笑)。
 アデルは、等身大のかわいい女の子。元気で向こう見ず。そうでもなきゃ、「謎の伯爵夫人」に化けたりはしないよなあ。オペラ歌手を目指すより、女優目指した方がいいよ……。

 もちろん、音痴のふたりが天才シャンソン歌手だったり、オペラ歌手志望だったりするのは、耳の暴力でしかないですが……。
 アリスティドの歌を絶賛する、舞台上の人たちの姿が寒いです……勘弁してくれー。

 今回わたし、ほんとにワタルくんの歌、ダメだった……。

 ラダメスのときは気にならなかったのに。
 今回は苦痛で苦痛で。
 しかも彼、天才歌手役だから、オープニングからえんえんえんえんえん、歌い続けるし。
 誰か助けて。
 つらい、つらすぎるよ。

 ぜえぜえ。
 導入部分から消耗。
 そのうえうすら寒い「俺様喋り」だし。

 ああなのに、好きだわ、この役をやっているワタルくん(笑)。ラダメスも大好きだったけど。アリスティドも好き〜。

 バカでかわいい。

 ワタルくんの得意分野だよね。バカで善良な男って。

 そしてなんといっても、檀ちゃん。
 そうなのよ、檀ちゃんの本領は「ちょいとタカビーな貴婦人」よ。アムネリス様がハマリ役なのよ。地味で善良な平民は似合わないのよ(笑)。
 だから、謎の伯爵夫人のタカビーさと美しさ、気品と性格の悪さはすばらしかったわ。
 いいなあ、勝手に「伯爵夫人」を名乗っても周囲の貴族たちが納得してしまう迫力があるんだもの。

 今回の檀ちゃんがおいしいのは、美しい伯爵夫人と、等身大の気の強い女の子を同時に見られてしまうことでしょう。
 地味で善良でおとなしいヒロインじゃないの。この間の『永遠の祈り』みたいな。猪突猛進逆ギレ娘。『Practical Joke』のジルがハマっていたようなもんですわ。
 檀ちゃんはこーゆー爆走女も似合いますね。

 そしてなんといっても、最後の啖呵。

 檀ちゃん、かっこいい……。

 アムネリス様の「鎮まりなさい!」にも匹敵する決め台詞。
 檀ちゃんはその繊細な美貌に似合わず、オットコマエな台詞が決まるよねええ。

 そしてまた、文字数が足りないので次の欄へ続く。

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