「緑野さん……ほんとにコレ、8回も観に行くんですか……」
 かねすきさんは生暖かい目でそう言う。
 コレ、とは星バウ公演『巌流』のこと。
 行きません。余った分、だぶった分は全部手放しました。結局わたしが行くのは5回です。
「コレを5回……ほんとーにファンなんですねえええ」
 ごめんねええ、ファンでえぇぇ。そーよ、かっこいいケロと美しいトウコを見るためだけに、バウで5回観るのよ! 青年館だって行くのよ! かねすきさんだって、ものすんげえ駄作でも愛するえりりんが出ていたらびっくりするよーな回数観るじゃん! 作品を観るんじゃないの、人を見るのよ。それがタカラヅカよ。泣。
 大劇も駄作、バウも駄作。遠路はるばる来ても、楽しみが少ないね、という地方組の友人たちに会うためだけに、ムラへ。
 週末のムラはヅカファンの聖地。会う予定のなかった友人たちも次々にGET。友だちの友だちもみんな友だち状態、誰が誰なの、紹介もないまま入り乱れて喋って時間は流れる。
 結局いちばん長く一緒にいたのはかねすきさんと、デイジーちゃん。
「なんでブーツなのよ、なんでズボンなのよ。不満だわ」
 と、かねすきさん。
「わたしはなにも、太股を見せろと言ってるんじゃないのよ、すねを見せろと言ってるのよ」
 熱弁。トウコとケロの肌露出の少なさにお怒り。
「小次郎はまだいいの、出し惜しみしても。でも、武蔵は見せるべきでしょおっ?!」
 ……えーと。
 ここにも、「汐美真帆はふんどしであるべき」信者が(笑)。
「だって男でしょう、あの人? ケロさんを女だと思っている人が、この世にいるんですか?」
 と、真剣に論じるブラボーかねすきさん。
 わたしの日記を読んだチェリさんからは「ふんどしは勘弁してください、ケロちゃんは女の子なんです(泣)」というメールが届いております、かねすきさん。ケロを女の子だと思っている人がいるんですよ。
 わたしですか? わたしはドリーマー、タカラヅカはファンタジー、男役は男だと思ってますんで、ケロは男でFAです。ふんどしが見たいかどうかは置くとして。あ、でも『巌流』でやほひ小説書いたら、武蔵についてはまちがいなくふんどしの描写をするだろうな(をい)。

 6時間ほど喋っていたわりに、話題をよくおほえてないんですが。
 ゆみこちゃん、また今度ゆっくりお喋りしよーねー。かねすきさん、お仕事がんばって、次は兄貴のお茶会で会いましょうよ。B’zのライヴのために早々に帰っていったWHITEちゃんからは、穴の開いたタイツを写した写メールが来たわ。はじけすぎたそうな。
 なんやかんやでわたしは結局、CANちゃんとふたりで帰りました。長い1日だった……。

          ☆

 ところで今朝、家を出るときのこと。
 今日は月東宝の並びの日。
 寒さと戦うためにもこもこに着ぶくれたわたしの足下で、猫が鳴く。「どこへ行くんだ、おれも連れて行け」
 仕方ないなあ、親の家に預けておくか。
 いつものように猫を抱き上げようとしたら。

 猫は、あたりまえの顔で、わたしの頭の上にのぼった。

 頭の上?
 頭の上ってっ……!!

 いつも猫は、外出するときはわたしの肩の上に乗ります。わたしに抱っこされるより、自分の足で肩に乗る方が安全だと思ってやがる失礼な猫です。
 通行人に「まあ、肩の上に乗るなんて、おりこうね」とか言われますが、ちがいます。わたしが肩に乗れと命令しているわけじゃないですから、ちっとも利口じゃないっす。
 わたしは抱っこの方がいいの。やわらかい体を抱っこして毛並みをたのしんで、かわいい顔を間近で見たいのです。
 肩の上に乗られると、視界をしっぽがふるふる邪魔してくるし、顔に当たるし、爪は痛いし猫の顔は見えないし、お尻とタマタマがわたしの頬の真横で、はっきりいってあまりたのしくないっす。
 されどわたしの感想がどうあれ、「大きな猫を肩に乗せて歩いている女」はめずらしいらしく、いろんな人に声をかけられたりもします。

 いつものよーに、肩に乗るんだと思っていたのに……何故、頭に。

 今日わたしは、例の帽子をかぶっていました。11/1の日記参照の、うちの猫の大好きなあの帽子です。
 猫はあったりまえの顔して、その帽子をかぶったわたしの頭の上に乗ったのです!!

 猫よ! そんなにこの帽子が好きか!!

 猫を飼うようになって、早20年。いろんな猫がおりました。
 しかし、頭の上に乗られたのははぢめてだっ。

 よたよた。
 お、重い……。

 よくマンガやアニメの萌えキャラなんかが、頭の上に猫を乗せてるよねえ?
 しかし現実に乗せてる奴なんか、見たことないよ。
 子猫じゃないんだよ? 成猫だよ? 丸くなってもわたしの頭くらいの大きさはあるのよ? そんなもん、頭の上に乗るなんて、ありか?
 まさか自分がやるはめになるとわ。
 てゆーか、無理だ、こんなの。重くて重くて、顎が首にめりこみそう。
 うちの猫、4kgありますだよ……。

 それでもそのまま、親の家を目指して道を歩きました。
 なんせ頭は肩とちがって丸いから。猫も安定が悪いらしく、もぞもぞ動くし。
 わたしの身長がヒール分も入れて175cmとして、頭に猫を乗せていると……今のわたしは体長2mの怪人?!
 うっきゃ〜〜っ。
 鍵を開けて親の家に入るとき、どの程度頭を下げればいいのか悩む。鴨居にぶつけちゃうよ、猫……。鍵穴に鍵を差し込むためにしゃがむのも、至難の業。重いよ、重いよ、下を向けないよー。
 苦労して親の家に到着。
 早朝の家族は冷たいまなざし。
「あほやな」
 と、弟はすっぱり。
 うるさいっ、あんまりおもしろいから、誰かに見せたかったんだいっ。
 …てゆーか、わたしが見たかったよ……頭に猫乗せた人間〜〜。そんな阿呆な光景、よそでは見られないじゃないかー!

 今、わたしの肩がものすごーく凝っているのは、このせいじゃないかと思うんだがな、猫よ。

 

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