焼き直ししかできない作家は、もう終わってる気がする…。@薔薇の封印
2003年11月21日 タカラヅカ コメディだとは、知りませんでした……。
月組公演『薔薇の封印』初日観劇。
ちょっとついでがあったもんで、ふらりと劇場へ行ってみた。さばきは適度にあった模様。めんどーなのでとっとと立ち見券を買って、いつもの定位置を取る。人数多くないから、楽な立ち見だった。
いつもと同じで、予備知識はなんもナシ。知っていたのは、ヴァンパイアものであることと、いくつかの時代にまたがるオムニバス形式らしいということぐらい。
いやあ……まさか、コメディだとは。
お笑いだとは思わなかった。
あのポスターでこの内容は、かなり詐欺ちっくだなー。
ひとことで言うと、『LUNA』の焼き直し、でした。
開いた口がふさがらなくて、苦労しちゃったよ(苦笑)。
『LUNA』は1回こっきりだから、笑って観ることができた。このレベルの作品なら、何年も経ってから別キャストで「過去の名作を再び!」なんて言って再演されることはまずないだろうから、今回限りの駄作ってことでスルーできるわ、と。キャラは合ってたし、役者への愛だけでなんとか観られるわ、と。
それに『LUNA』は1時間半で終わったしな。そのあとにショーがあったしな。
……まさか、もう一度『LUNA』を観せられるとは。
しかも、1本モノですよ!
あの『LUNA』が装いも新たに、2時間半の大作となって復活ですよ!
誰が想像したでしょう。まーさーかー、もう一度あの駄作を、水増しして観せられるなんて!!
ヴァンパイア一族の長の娘リディア@エミクラを愛したふたりの人間の男の物語。
ひとりはリディアにも愛され、彼女の父にも認められ、ヴァンパイア一族の後継者として選ばれた美青年フランシス@リカちゃん。もうひとりが、リディアに歯牙にもかけられなかったふられ男のミハイル@さえこ。
リディアにふられたミハイルは逆ギレ、「薔薇の封印」を自ら破り、悪しきヴァンパイアに変身。
封印を元に戻さないと、悪のヴァンパイアが野放しになるってことなんですかね。リディアの遺言が、封印を元に戻せってことだったんで、彼女の意志を継いだ正義のヴァンパイア、フランシスは封印の薔薇を探して1000年ほど彷徨うのでした。
さまざまな時代、さまざまな場所で、封印の薔薇を探し、正義のフランシスと悪のミハイルは出会い、戦うのでした。はー、やれやれ。
なにがおどろいたって、『薔薇の封印』ってタイトル、まんまだったんだねええ。もっと抽象的なものかと思ってた。精神的なものを象徴する、とかさ。
ゲームのステージクリア・アイテムみたいに、集めるものだったのよ。マンガで言うなら、ドラゴンボールみたいな。
それにしても、軽い。
あまりにも軽い物語なので、歌いそうになっちゃった。「かるい〜、かるい〜」って、『野風の笛』の爆笑ソングを。
永遠の命だの愛だのをネタにしながら、この軽さはなんだ?
あまりにも、「痛み」のない物語。
愛する女を失い、永遠を生きる主人公フランシスにも、愛する女に拒絶され、永遠を生きる敵役ミハイルにも、生きる「痛み」がまったく感じられない。
なんてうすっぺらな人たち。
そりゃあんたたち、「永遠」を生きるのなんか簡単でしょうよ。だって情緒に著しく欠けていそうだものね。
重いテーマを軽妙に表現した、というよりは、たんに軽薄なだけに思えた。
コメディだからじゃない。笑いに走ったって、「重さ」は表現できる。
テーマの重さなんかはじめから眼中になく、ただお手軽にドタバタやった結果、という気がする。
そもそも、主役ふたりの動機が弱いんだよなあ。
フランシスがリディアを愛する心の動きが納得できない。恋に落ちる宿命感を演出できないなら、はじめから「ぼくたち宿命の恋人同士です!」と力一杯ラブラブにしておいてくれよ。くちばしをはさめないくらいの「前提」として掲げておいてくれよ。
結局のところ、フランシスは大してリディアを愛しているようには見えなかったし、だからこそなにをしたいのかさっぱりわからなかった。
ヒロインが3人(全部エミクラだから、同じ顔)にわかれた分だけ、愛情も薄くなり、主人公の誠実さが薄れ、作品が軽くなる。
もうひとりの主役、悪の男ミハイルの描き方は、最悪の部類。ふられて逆ギレときたもんだ。しかもふられる理由が、「弱くてダメダメな人だから」。
あのー、敵役ってのはね、強くかっこよくないと、意味がないのよ。敵役がいい男でないと、それと対峙する主役の価値も下がるのよ。
「弱くてダメダメな人」に勝つ主役より、「強くてカッコイイ人」に勝つ主役の方が、さらにカッコイイでしょう? 「弱くてダメダメな人」に勝てなくて1000年彷徨う主人公なんて、かっこ悪すぎる……(でも、いかにもかっこよさげに描いている。それがまた、かっこわるい)。
弱いダメ男だから、ってふられて、逆ギレするよーな最悪な男が悪のヴァンパイアに変身しても、ちっともありがたみないよなあ。かっこわるいだけだよなあ(でも、いかにもかっこよさげに描いている。それがまた、かっこわるい)。
で、このかっこわるい人は、結局なにがしたかったの? 世界征服? 女にふられたから?
そのあとで悪の組織のボスにおさまったとしても、最初の動機が「『アンタなんかおよびじゃないのよ!』ってふられちゃったよー、え〜ん(泣)」だと、情けなさ過ぎる……。
最初に烙印されるように、「弱いダメ男」とするなら、最後まで同じ扱いをしてくれよ。なんでそんな理由でスタートした男が、「超絶美形敵役」として描かれるの? ダメ男が成長したというなら、その過程を描いてくれなくちゃ。
うすっぺらなんだよねえ、なにもかも。
でもってこの作品で退団するリカちゃん。
トップになってからは白い正当派の王子様キャラばっかだったのが、今回よーやくヴァンパイアってことで黒い役だー、と本人も言っていたし、ファンもわたしもよろこんでいたはずだが。
このフランシス役ってさ、白い正当派の王子様キャラですがな。
ただ、髪が黒くてダーク系の衣装を着ているってだけで。
それとも、黒い衣装を着ていることを、「黒い役」って言うの?
黒い役ってのは本来、ウラノスネットのブライアン社長……あ、ちがった、エヴァーライフ社のミハイル社長みたいな役のことを言うんじゃないの?
あまりの潔い駄作っぷりに、わたしは口が開いたままだったんですが、リカちゃんファンのキティちゃんが
「感動して泣いたわ」
と言っていたので、これでいいのかもしれません。
ファンにはファンのツボがあるからな。
ツボにさえはまれば、作品のクオリティなんかどーでもいいのがタカラヅカ。
ただわたしには、この作品にはどこにもツボがないので、もう観ないと思います。
せめて1幕もので、ショーと2本立てならよかったのに。1本立てにする意味はどこにもなかったよ。4話構成なんかにせず、ひとつの時代だけを描けばよかったのに。そうすれば、主人公があそこまでうすっぺらにならなかったろうに。
「痛み」のない物語は、好きじゃないんだ。
たんに、好みの問題。
月組公演『薔薇の封印』初日観劇。
ちょっとついでがあったもんで、ふらりと劇場へ行ってみた。さばきは適度にあった模様。めんどーなのでとっとと立ち見券を買って、いつもの定位置を取る。人数多くないから、楽な立ち見だった。
いつもと同じで、予備知識はなんもナシ。知っていたのは、ヴァンパイアものであることと、いくつかの時代にまたがるオムニバス形式らしいということぐらい。
いやあ……まさか、コメディだとは。
お笑いだとは思わなかった。
あのポスターでこの内容は、かなり詐欺ちっくだなー。
ひとことで言うと、『LUNA』の焼き直し、でした。
開いた口がふさがらなくて、苦労しちゃったよ(苦笑)。
『LUNA』は1回こっきりだから、笑って観ることができた。このレベルの作品なら、何年も経ってから別キャストで「過去の名作を再び!」なんて言って再演されることはまずないだろうから、今回限りの駄作ってことでスルーできるわ、と。キャラは合ってたし、役者への愛だけでなんとか観られるわ、と。
それに『LUNA』は1時間半で終わったしな。そのあとにショーがあったしな。
……まさか、もう一度『LUNA』を観せられるとは。
しかも、1本モノですよ!
あの『LUNA』が装いも新たに、2時間半の大作となって復活ですよ!
誰が想像したでしょう。まーさーかー、もう一度あの駄作を、水増しして観せられるなんて!!
ヴァンパイア一族の長の娘リディア@エミクラを愛したふたりの人間の男の物語。
ひとりはリディアにも愛され、彼女の父にも認められ、ヴァンパイア一族の後継者として選ばれた美青年フランシス@リカちゃん。もうひとりが、リディアに歯牙にもかけられなかったふられ男のミハイル@さえこ。
リディアにふられたミハイルは逆ギレ、「薔薇の封印」を自ら破り、悪しきヴァンパイアに変身。
封印を元に戻さないと、悪のヴァンパイアが野放しになるってことなんですかね。リディアの遺言が、封印を元に戻せってことだったんで、彼女の意志を継いだ正義のヴァンパイア、フランシスは封印の薔薇を探して1000年ほど彷徨うのでした。
さまざまな時代、さまざまな場所で、封印の薔薇を探し、正義のフランシスと悪のミハイルは出会い、戦うのでした。はー、やれやれ。
なにがおどろいたって、『薔薇の封印』ってタイトル、まんまだったんだねええ。もっと抽象的なものかと思ってた。精神的なものを象徴する、とかさ。
ゲームのステージクリア・アイテムみたいに、集めるものだったのよ。マンガで言うなら、ドラゴンボールみたいな。
それにしても、軽い。
あまりにも軽い物語なので、歌いそうになっちゃった。「かるい〜、かるい〜」って、『野風の笛』の爆笑ソングを。
永遠の命だの愛だのをネタにしながら、この軽さはなんだ?
あまりにも、「痛み」のない物語。
愛する女を失い、永遠を生きる主人公フランシスにも、愛する女に拒絶され、永遠を生きる敵役ミハイルにも、生きる「痛み」がまったく感じられない。
なんてうすっぺらな人たち。
そりゃあんたたち、「永遠」を生きるのなんか簡単でしょうよ。だって情緒に著しく欠けていそうだものね。
重いテーマを軽妙に表現した、というよりは、たんに軽薄なだけに思えた。
コメディだからじゃない。笑いに走ったって、「重さ」は表現できる。
テーマの重さなんかはじめから眼中になく、ただお手軽にドタバタやった結果、という気がする。
そもそも、主役ふたりの動機が弱いんだよなあ。
フランシスがリディアを愛する心の動きが納得できない。恋に落ちる宿命感を演出できないなら、はじめから「ぼくたち宿命の恋人同士です!」と力一杯ラブラブにしておいてくれよ。くちばしをはさめないくらいの「前提」として掲げておいてくれよ。
結局のところ、フランシスは大してリディアを愛しているようには見えなかったし、だからこそなにをしたいのかさっぱりわからなかった。
ヒロインが3人(全部エミクラだから、同じ顔)にわかれた分だけ、愛情も薄くなり、主人公の誠実さが薄れ、作品が軽くなる。
もうひとりの主役、悪の男ミハイルの描き方は、最悪の部類。ふられて逆ギレときたもんだ。しかもふられる理由が、「弱くてダメダメな人だから」。
あのー、敵役ってのはね、強くかっこよくないと、意味がないのよ。敵役がいい男でないと、それと対峙する主役の価値も下がるのよ。
「弱くてダメダメな人」に勝つ主役より、「強くてカッコイイ人」に勝つ主役の方が、さらにカッコイイでしょう? 「弱くてダメダメな人」に勝てなくて1000年彷徨う主人公なんて、かっこ悪すぎる……(でも、いかにもかっこよさげに描いている。それがまた、かっこわるい)。
弱いダメ男だから、ってふられて、逆ギレするよーな最悪な男が悪のヴァンパイアに変身しても、ちっともありがたみないよなあ。かっこわるいだけだよなあ(でも、いかにもかっこよさげに描いている。それがまた、かっこわるい)。
で、このかっこわるい人は、結局なにがしたかったの? 世界征服? 女にふられたから?
そのあとで悪の組織のボスにおさまったとしても、最初の動機が「『アンタなんかおよびじゃないのよ!』ってふられちゃったよー、え〜ん(泣)」だと、情けなさ過ぎる……。
最初に烙印されるように、「弱いダメ男」とするなら、最後まで同じ扱いをしてくれよ。なんでそんな理由でスタートした男が、「超絶美形敵役」として描かれるの? ダメ男が成長したというなら、その過程を描いてくれなくちゃ。
うすっぺらなんだよねえ、なにもかも。
でもってこの作品で退団するリカちゃん。
トップになってからは白い正当派の王子様キャラばっかだったのが、今回よーやくヴァンパイアってことで黒い役だー、と本人も言っていたし、ファンもわたしもよろこんでいたはずだが。
このフランシス役ってさ、白い正当派の王子様キャラですがな。
ただ、髪が黒くてダーク系の衣装を着ているってだけで。
それとも、黒い衣装を着ていることを、「黒い役」って言うの?
黒い役ってのは本来、ウラノスネットのブライアン社長……あ、ちがった、エヴァーライフ社のミハイル社長みたいな役のことを言うんじゃないの?
あまりの潔い駄作っぷりに、わたしは口が開いたままだったんですが、リカちゃんファンのキティちゃんが
「感動して泣いたわ」
と言っていたので、これでいいのかもしれません。
ファンにはファンのツボがあるからな。
ツボにさえはまれば、作品のクオリティなんかどーでもいいのがタカラヅカ。
ただわたしには、この作品にはどこにもツボがないので、もう観ないと思います。
せめて1幕もので、ショーと2本立てならよかったのに。1本立てにする意味はどこにもなかったよ。4話構成なんかにせず、ひとつの時代だけを描けばよかったのに。そうすれば、主人公があそこまでうすっぺらにならなかったろうに。
「痛み」のない物語は、好きじゃないんだ。
たんに、好みの問題。
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