ひさしぶりに、おもしろくない映画を見た。

 映画ってのはまあ、大抵ある程度はおもしろいもんなんだが。
 とくに洋画は、わざわざいろんな人の手とお金を使って、輸入されてくるわけだからな。邦画の駄作よりは、いくらかマシだったりする可能性が高い。

 「アンバランスなハートが絡み合う、衝撃のラブ・サスペンス」というコピーのつけられた『ケイティ』という映画を見てきた。
 監督・脚本スティーブン・ギャガン、出演ケイティ・ホルムズ、ベンジャミン・ブラッド、チャーリー・ハナム。

 女子大生ケイティ@ケイティ・ホルムズの恋人エンブリー@チャーリー・ハナムは2年前に失踪した。そのことについて、ハンドラー刑事@ベンジャミン・ブラッドが調査にやってきた。
 それをきっかけにするかのように、ケイティの周りにエンブリーらしき人影がつきまとうようになった。そこへ、新たな失踪事件が起こる。ケイティをずっと愛していた友人が、彼女に愛を告白した日から行方を絶ったのだ。
 エンブリーは果たして生きているのか? 行方不明になった友人は、エンブリーの手にかかったのか?
 緊張の続く毎日のなか、ケイティはいつしか、ハンドラー刑事に惹かれていくが……。

 いやあ、長かった。
 2時間半くらいある?
 ……と思ったら実際は、1時間半くらいしかなかった。

 あまりにつまらなくて、時間の感覚が狂っちゃったよ。

 けっこう早いウチから、オチが読めてしまうのに、いつまでたってもスクリーンの中では同じよーなことをちんたらやっている。
 なんなんだろうなあ、このタルさは。

 ネタ自体はべつに、悪くない。
 オチは読めたが、それでももっとサスペンスらしく盛り上げることはできただろう。
 だからすべては、演出が悪いってことだろうな。
 見ている者を退屈させるよーな演出は、勘弁してくれよ。
 わたしは退屈で退屈で、仕方なかった。
 なまじ青春映画風の繊細物語を意識しているよーな感じだから、サスペンス部分との相性の悪いこと。どっちも中途半端。

 オチが読めすぎてしまうのは、ズルをしていないからなんだろうな。
 ヒロイン・ケイティは、正しくサイコ女だった。……はっ、いかんコレはネタバレか? タイトルにネタバレ注意出しておかなきゃだな。

 エンブリーはハンサムでお金持ちで、しかも天才劇作家ときたもんだ。そんな彼に、才能を見いだされ、愛されたケイティ。
「君は他の凡人どもとはチガウ。愛しているよ。さあ、ボクと天才だけの世界を共有しよう」
 ……平凡な女の子があこがれる最高峰。まあ、わたしって実は天才だったんだわ。天才であるわたしは、天才であるうえにハンサムでお金持ちのダーリンに愛されて当然なんだわ。

 そのハンサムな天才が行方不明になり。

 気がつくと、ケイティの周りには、彼女を愛する男たちばかり。
 友人として彼女を見守ってきたやさしい彼、超一流企業の人事権を持つ彼、繊細な彼女のセラピーをする精神科医の彼、心に傷を持ったセクシーな刑事の彼。
 彼女に出会う男たちは、みーんな彼女の虜。

 当然よね、だってわたしは、天才で美人でエレガントなんですもの。
 この世のすべての男が、わたしを求めて争っても仕方のないことだわ。

 失踪したはずの天才ハンサムのエンブリーが、ストーカーと化してわたしを監視している。わたしに近づく男を許さないと言う。
 ああ、当然だわ! だってわたしは、天才で美人でエレガントなんですもの。天才のエンブリーは、わたしを独り占めしたがっているんだわ!

 ……えーと。
 これって彼女の、妄想だよね?
 と、オチがわかりきってしまうんだよなあ。

 もちろん、男たちは彼らなりにちゃんとケイティを愛してはいるけど、彼女が思う「だってわたしは天才で……以下略」とはちがっているだろう。いくらでも代わりのきく、ふつーレベルの恋愛感情だろう。
 つまり、ふられたらあきらめられる、ケイティがいなくてもふつーに生きて生活していける、ふつーの好意。
 それが、ケイティ視点になると「わたしを愛するゆえに犯罪者になる」「わたしを愛するゆえに死んでしまう」とかになる。

 ケイティがゆがみまくってるからなあ。
 彼女視点でどんなに「何者かにねらわれているわたし!」をやられても、しらけるだけ。それ、君の妄想でしょ? ちっともこわくないです。

 オチに気づかなければ、おびえるケイティに感情移入して、一緒にこわがることができたのかなあ。

 エンブリーはとっくに死んでいて、その犯人がケイティだった、てのがどうやら最大のどんでん返しらしいのだが、とにかく、早い段階からその「最大のどんでん返し」がバレちゃってるもんだから、そこにたどりつくまでが退屈で退屈で。
「君は他の凡人どもとはチガウ。愛しているよ。さあ、ボクと天才だけの世界を共有しよう」
 という、才能と愛と二本立ての欲を満たしていてくれたダーリンが、
「君はダサいだけで才能なんかないし、もちろん愛してもいないよ。もうボクにつきまとわないでくれ!」
 てなことを言って捨ててくれたら、そりゃ逆ギレするしかないよなあ。
 どっちかひとつならまだ、救われたかもしれないが、両方だからな。
 才能と愛、両方を否定されたら、存在意義が崩壊してしまう。
 天才のわたしってすてき! 天才に愛されてるわたしってすてき! と、舞い上がってたんだもんなあ。

 とまあ、ズルなしで、ヒロインのキャラクタ造形も、ストーリー展開も伏線も、正しく造られています。

 しかし。
 いくらズルなしでも、つまらなかったらなんの意味もない。

 という見本のような話。

 いくらフェアでも、犯人も動機もトリックもまるわかりのミステリは、読むに値しない。

 とゆー見本のような話、でしたよ。

 ほんと、これほどつまらない映画は、ある意味見る価値があったかもしれない(矛盾・笑)。

 

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