6日に、弟に出したメール。
『SIREN、買うよね?
昨日、阿呆父のせいでいっぱい泣いた、かわいそーな姉のためにも、買ってくるように(笑)。』

 『SIREN』というのは、6日発売のプレステ2のゲームソフトだ。弟は買うかどうか悩んでいる様子だった。
 理由はひとつ。月末に、『零−紅い蝶−』を買う予定だから。忙しい彼は、今新しいソフトを買っても、プレイする時間がない。
 でもでも。わたしはやりたいのよ、『SIREN』が遊びたいの! でもって、びんぼーなわたしは、自分では買えないのよ、それなら弟にねだるしかないでしょう!(笑) 買ってよ買ってよ、そしてわたしにプレイさせてー。

 そしてその昨日、わくわくと弟の帰りを待っていたら。
『いつも行くゲーム屋で、SIREN、売り切れてた』
 と、メールが届いた。
 うっそぉーっ、売り切れ?! つーか、そんなに売れてんの?! 腐ってもソニー・ブランドっ?

「そんなら、別のゲーム屋行きなよ! アンタの職場の近所、ゲーム屋くらいいくらでもあるでしょ」
 あきらめきれないわたしは、帰宅した弟に言いたいことを言っておく。彼は無言で聞いていたが。

 本日、1日遅れで買ってきてくれました、『SIREN』!!
 家庭内でいろいろあり、すっかりぐれていたわたしに、多少同情してくれたのかもしれんな、弟よ。

 ホラーゲーム『SIREN』。
 ドラマ『トリック』の舞台になりそーな山の中の村が舞台。謎の伝承、儀式、迷い込んだ人々と、襲いかかる屍人……「村」と「人間」の描写がリアルでこわそう。
 『ファミ通』の記事を読んで姉弟そろってわくわくしていたソフトだ。腐っても「ソニー・コンピュータ・エンタテインメント」製タイトルだからなっ(いや、ソニー製のタイトルでも、ヘボはいろいろあるが。『レジェンド・オブ・ドラグーン』とか、とか…笑)。『零』と同じ月に発売でさえなければ、弟もなんの躊躇もなく買っていたはず。
 パッケージの写真も、マニュアルもいい感じだ。ああ、この血まみれの老婆なんて、こわくていいよなー。

 ひとしきりパッケージやマニュアルを見ながら、姉弟で喋る。プレイする前にあーだこーだ想像してお喋りするのもたのしいんだよねえ。

「いつもとはチガウ店で買ったわけなんだけど。新発売のタイトルで、いちばん大きくコーナーが作られていたのは『スパロボ』だった」
「そりゃ『スパロボ』でしょ。わたしが店の人でも、『スパロボ』で大々的にコーナー作るよ」
 と言うわたしは元ゲーム屋の店員だ。
「んで、『SIREN』は2番目の扱いだった」
「ほお。それでも2番目なんだ」
「うん、それでその店、『SIREN』に購入特典っつーか、おまけが特別についてたんだ」
 と言って弟は、さらに鞄をがさごそする。

 おまけ? その店独自の? ホラーゲームの「おまけ」なんて、なにがつくのよ? まがまがしいもの?

 出てきたのは、

『零−紅い蝶−』の映像DVDだった。

 爆笑。
 こうきますか!!

「すごいだろ、コレがコレの購入特典だよ? 信じられる?」
「すごいっ、たしかにすごい!!」

 大ウケするわたしたちのそばで、母がぽかんとしている。
「なにがそんなにすごいの?」

 化粧品にたとえて説明しましょう。
 A社の製品を買ったお客さんがいるとします。もしこれにおまけをつけるとしたら、ふつーは、「A社の」試供品だとかノベルティです。資生堂の化粧水買った人に、わざわざカネボウの乳液をおまけであげたりしないってこと。
 メーカーは、自分とこの製品を買ってもらうために、おまけをつけるわけだから。
 『SIREN』はソニー、『零』はTECMOなんだよね。メーカーがチガウの。だから、業界のルールからいうと、おまけにはならない。
 ところが。
 A社の製品を買ったのに、B社の試供品をおまけでもらってしまった。何故か。
 それは、買った製品が、特殊なジャンルだったから。
 A社のダイエット用サプリを買ったら、B社のダイエット用サプリの試供品をおまけでもらってしまった、てな感じです。
 メーカーや商品名を中心に考えて買うのではなく、「ダイエット用サプリ」という特殊な製品を中心に考えた買い物である場合、こーゆーおまけの付け方はアリだよね。
 なにがなんでもダイエットしたい人は、別のダイエット商品だって試してみるだろうから。

 ホラーゲーム『SIREN』を買った人に、ホラーゲーム『零』の宣伝DVDプレゼントか!

「さすが、日本橋のゲーム屋はチガウねえ」
「オタクの街だからなあ。店員がゲームの内容を理解してなきゃ、できない特典だよなー」
「『SIREN』買う人が『零』の映像見たら、そりゃ買うでしょう!」
 ぱちぱち。すばらしいおまけです。

 とゆーわけで、緑野姉弟は本日から『SIREN』のプレイをはじめました。

 まず、最初にやるのは購入者である弟。
 深夜にわたしの部屋にソフトを配達に来た彼は、差し出しながら、
「なかなかいい感じ。……しかし、むずい。アクションがかなりシビア」
 と、言う。
 ア、アクションがシビア? ちょっと待て、アクションゲームなの?
「かなりアクションだな」
 ……あたし、できるかな?
「さあ? 苦労するんじゃない?(にやり)」

 弟が見学している前で、とりあえずプレイしてみる。みる……が。

 スタート1分で死んだ……。

 ななななにこれ。あっ、また死んだ。またやりなおし。ええっ、なにこれえっ。

「どうも、死んでおぼえるゲームらしいな」
 ひええ、マジっすか。
 ゲームオーバー、リトライの連続!!

「まあ、がんばれ」
 死に続けるわたしに、にやにや笑いを遺して、弟は自分の家に帰っていった。

 ホラーゲーム『SIREN』。
 こわいというより、忙しい……。

 

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