雪組新人公演『Romance de Paris』観劇。

 配役発表までは、期待していたんだよ。
 いづるん主役、いづるん主役、1回ぐらいは頼むよ、劇団! キムにはまだ来年があるじゃないか、いづるんに1回ぐらい主役をさせてやってくれえええ。
 …………配役発表で、ヘコみました。
 結局、キムか……。
 いづるんはなに、樹里ちゃんの役? あれ、チガウ。
 んじゃ、カシゲか。あれ、チガウ。
 ええっ、どこよいづるん!!

 ……いっぽくんの、役?

 ここまで落ちるの? 劇団はいづるんをその程度にしか思ってないってことよね。しょぼん。

 ところが、本公演を観て、希望ができた。
 だっていっぽくんの役って、本来なら樹里ちゃんがやっていそうな、2番手格の役じゃん!
 いっぽくんのディディエに失望した瞬間から、希望は新公になった。
 いづるんなら、いっぽくんよりうまいに決まってる!(失礼)

 痛感したのは、「正塚芝居」であるということだった。

 某理事長だの古狸作家だのの作品とちがい、正塚作品は「地味」であり「ナチュラル」である。
 主役登場、ジャ・ジャーン!! なんていう手法を取らない。主役だけ不自然な超絶豪華な衣装を着ていたりしない。
 群衆が歩き回るなかに、主役たちもまざる。もちろん、周囲と同じレベルの服装しかしない。

 「スター」とは、群衆のなかであっても、同じ服であっても、光り輝かなければならない存在なのだ。

 理事長作品ではわからない、その生徒自身が持つ「華」がむきだしになる。
 それが、正塚作品なんだ。

 いづるん……。

 演技は、いっぽくんよりうまいよ。ディディエという書き込み不足で半端な役を、それでもよく演じていたよ。心の動きが見えて、納得できる人物像になっているよ。
 だけどね。
 君は……「スター」では、ないんだね……。

 思い知らされた。

 群衆シーンになると、いづるんはどこにいるのか、わからなくなる。ちゃんとライトはあたっているのに。
 いっぽくんを思う。たしかに、彼はへたっぴだ。花組にいたときから、「あちゃー」な下手さだ。だが、彼には「華」がある。群衆のなかで、「あそこにスターがいる」とわからせる光がある。輝きがある。
 そっか……いづるんが新公主役できない意味が、よーっくわかったよ……かなしいけど。
 いづるんは光より影、太陽より月の魅力を持つ男役。その魅力を大切に、耽美キャラのままでいてくれ。男役を惑わせる、妖しい男役でいてくれ。

 その、本来の「華」がむきだしになる正塚芝居。

 主役ふたりの「華」の、あでやかなこと!
 舞台が暗かろうが、地味だろうが、群衆のなかだろうが、関係ナシ。そこが中心、彼らが主役、彼らがスター。
 底上げナシの「華」が開花しているのが見える。

 同じ役に見えません。

 つーか、同じ作品に見えないっていうか。
 なんなんだろう、この力強さは。
 キムもとなみも、「タカラヅカ」だと思った。スター中心のピラミッドの頂点に立つ力。劇団員全員でそのピラミッドを作り、維持し、もてはやす、その特殊な世界の図式を、キムととなみのふたりに改めて気づかされたというか。
 やっぱタカラヅカっちゅーのは、スターあってのもんなんだよなあ。実力より華だよなあ。しかも、キムととなみも実力もあるからなあ。
 このふたりの時代になるときが、たのしみだ。素直にそう思えたよ。

 わたしは本役のコム姫が、正塚の美学を正しく表現しているとは思えない。あんなもんぢゃねえ、と思っている。
 だが、新公のキムはさらに、別モノだ。
 それでも最初は、正塚らしく演じようとしていたように見えた。だからなんとなく、おさまりが悪い。無理をしている感じ。
 ところが、途中からどんどん彼は変化していく。
 抑えていた「華」があふれ出てくる感じ。
 ラストまで行くと、もー開き直りか?
 別モン上等! かかってきな! 状態。
 正塚が描きたかった「ヴァンサン」という男はどこにもいない、「タカラヅカのスター、キム」がそこにいた。
 ラストの銀橋の歌はどうだ、観客まで味方につけて、今までと温度のチガウ拍手のなかで「新しいヴァンサン」として爽快に笑ってやがったぞ?!
 1時間半の芝居の中で、キャラクターがここまで変化するなんて……えらいもん見たなー。

 となみちゃんはひたすら、美しい。まさしく王女様。威厳がありすぎる気はするが、市井の小娘にしか見えないよりはるかにマシさ。
 正真正銘の姫役者なんだなと思う。最近のヅカでは希少な存在。保護せよ保護。
 凛とした風情が、感情移入を加速させる。わたしたちが「見たい」と思えるよーなお姫様だから。
 とにかく、「立っているだけでお姫様」に見える、ってのは、得難い才能だよ。

 ……主役ふたりに関しては、明日から本公演に立っていてくれても、わたしはぜんぜんかまわないぞ……。(小さな声)

 だってコム姫は光より影、太陽より月の魅力を持つ男役。影より光、月より太陽のキムとは持ち味逆じゃん。だから好きなのにさー。
 つーかもともと、真ん中に立つタイプでは……ゲフンゲフン。

 ところで、ひじりんってのは、なんであの位置にいるんですかねえ。
 前回の新公でも、そのへたっぴさにおどろかせてもらったんだけど、今回もまた、ひとり群を抜いて下手なんですが。
 華があるようでもなく、とりたてて美しいわけでもなく……何故あの役なの?
 スタイルはいいけどさー。それだけであれほどの扱いが続いている、というのはわたしには理解不能。

 小天狗くらまちゃんはかわいいなあ、元気だなあ。きりやんとアサコを足して2で割ったよーな男の子顔に、さわやかな華。目がいくわー。

 舞咲りんちゃん、WHITEちゃんとふたりでひそかにファンしてるんだけど、ほんと横顔に特徴ありすぎ(笑)。正面からと横からの、ビジュアルのギャップにいつも息をのむ。

 あとはひたすら、真波そらくんの美しさに見とれていました。
 うおー、なんて美しいんだー。
 台詞がねーから、演技力はぜんぜんわかんないけど、それにしたってかっこいいぞーっ。
 目の保養だ、寿命が延びるぞー。

「チケットを譲ってくれたキムファンのココちゃんに、感想を言う約束してるんだけど……どう言えばいいのか、わからないよ」
 と、キティちゃんはわめく。
「ふつーに言えばいいじゃない。キムちゃん、よかったよ、って」
「だって、ココちゃんはコムのファンでもあるのよっ?! コムを悪く言わずに、キムを誉めるなんてできないわ! キムの方がよかった、としか言えないのに!」
「……だから、コムのことはなにも言わず、キムを誉めればいいんだってば」
「だから、そんなことできないって! キムの方がよかったんだから!」
 比較系でしか、感想って言えないものだっけ? そりゃわたしも、比較してモノを語るけどさー。
 大体、「いい」「悪い」は好きずきだから。どちらの方が、と言ってもそれは、あくまでも個人の主観の問題。コム姫の方がよくて、キムなんか最悪!な人たちもたくさんいるんだろーから、相手を傷つける目的でなく「自分の意見」として言う分にはべつに、いいんじゃないかと思うが……。

 さて、キティちゃんは無事にココちゃんに感想を伝えられたのかしら。

 

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