飛ぶー、回るー、滑空するー。@HERO
2003年9月4日 映画 『HERO』を見てきました。
監督チャン・イーモウ、出演ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン。
最初に『HERO』の予告編を見たのは、なんの試写会でだったかな? ふつーの映画館の予告よりずっと早くに目にした。周囲からもなんの情報もなく、とにかくそのものすげー映像に口が開いた状態。
これはもう、見るしかないなあ、と思った。
わたしは当たらなかったので試写会には行けなかったけれど、先に試写を見た友人知人たちから情報が入りはじめる。
これがもー、全員口をそろえて「駄作!」と叫ぶ。
唯一、WHITEちゃんだけが苦笑いとともに「所詮中国映画と思って見たら、それなりにたのしめるよ」と言っていた。
百聞は一見に如かず。
自分の目で見、心で味わいませう。
つーことで、残暑のなかいつもの映画館へ自転車をとばす。
映画は映画館で、芝居は劇場で。本はひとりで。自宅で小さな画面でビデオを見るのでは、その映画や芝居のほんとうの力はわからない。ひととおしゃべりしながらぱらぱらめくっても、その本のほんとうの力はわからない。
とくに、『HERO』みたいな映画は、映画館で見なきゃ絶対おもしろくないだろー、とわかりきっているので、自転車ぎこぎこ。
映画館でなきゃ絶対たのしめない、とはじめからわかっている、という前提からして駄作のかほりはしているよ。
でもそれは、悪いことではないと思うんだ。映画なんだから、映画館を前提に作られていてもいいじゃん、と思う。
たとえば、携帯電話の待ち受け画像のつもりで作った画像を、大きなモニターに映して「解像度が悪い!」と文句つけても仕方ないよーなものでね。
映画は映画館で上映されることを前提に作られているのだから、わたしは映画館へ行く。わたしもわたしの書いた仕事用の文章を、正しい状況で読んでから評価して欲しいからな。自分がして欲しいことは、ひとにもしてみるさ、できる範囲で。
てなことを、えんえん最初に書くのは、「誉める人がいない」映画を、わざわざお金を出して映画館に行って、「駄作! 金返せ!」と言う場合の布石だ。言い訳だ。
わたしは映画を正しく味わうための努力はしたわ。だから、文句を言ってもいいわよね? と(笑)。
ここまで言い訳しておいて、覚悟も決めて、見たのよ、『HERO』。
ストーリーは……ええと……あんまし、なかったよーな……。
王様と、王様を狙う刺客を退治した男が、向かい合ってお喋りするだけの話。
……それだけ、なんだよな。
ただ、男の語る物語が、一転二転する。
最初はAと言っていたのが、王に「それはおかしい。ほんとうはBだろう」とつっこまれ、「おしい。じつはB’です」ということになり、でもさらに真実はCだった、てなふーにころころ変わっていくの。
かなしいのは、真実が最後のCだけであるにもかかわらず、嘘八百のAやBやB’も全部、長い時間をかけて「映画」として作られてしまっていること。それを長々と見せられたあとで「てのは全部嘘」てのを何回もやられると、「じゃあ今までの時間はいったいナニ?!」と詐欺にあったよーな気分に。
見ながら『MISTY』(制作時は天海祐希主演、フタを開けてみたら豊川悦司主役、だけど現在発売されているDVDには「金城武主演」と印刷してある、みょーな映画。もちろん映画館で見たさ)みたいだなー、とか思ったよ。
ストーリーはほとんどない、もしくは単純、と言っていいだろう。
この映画を駄作と言う人は全員、ストーリーを責めている。
そりゃーまー、わかるさ。
しかし。
わたしはこの映画、たのしかったのだわ。
あららびっくり。
これだけ覚悟して見たのに、ぜんぜんOK、ふつーにたのしかったわ。
もちろん、覚悟して見たのがよかった、てのはあるだろうけれど。
でも、なんの予備知識もなく試写会で見ていても、わたしはけっこー好きだったと思うよ。
ツボがあるから。
わたし、「王者の孤独」というテーマが好きなのだわ。
『王家に捧ぐ歌』で、アムネリスが泣きながらでも、ラダメスを処刑するしかないこととかね。
数年前にヒットした壮大な中国映画があったよね? もータイトルも覚えてないが。中国皇帝と刺客の話。アレもツボだったのよね。
暗殺をおそれ、10年間、誰ひとり100歩以内に近づけたことはない、という孤高の王。
彼の心を理解した者は、100歩以内に入ってきた者は、ただひとり、彼を殺しにやってきた刺客だけだった……。
刺客はあえて剣をおさめ、王を殺さずに去る。
3年後、その刺客を討ち取ったという男が、王の前に現れる。男女の痴情のもつれを利用して刺客を討ち取ったという。
王は言う。あの崇高な刺客が、痴情のもつれごときで死ぬはずがない、と。
もしもあの刺客が死んだというなら、それは命を懸けて男に使命を託したはずだと。
使命……すなわち、王の暗殺を。
王様、それって……刺客が命がけで自分を愛しているはずだと言っているよーなもんですが?(笑)
ホモネタはおくとして、純粋に「王の孤独」がツボでした。
この世でただひとりの、魂の親友をその手で処刑しなければならない痛みと、それでも立ちつづける強さと誇りと責任と。
そして、暴力による支配から、平和のための力の集権へと変わっていくあたり、『王家…』のラストのようですな。
きれいごとにすぎなくても、わたしはこーゆー展開が好きです。
好きなタイプの物語が、美しい映像で展開していくのよ。そりゃー、たのしいでしょう。
映像は、ものすっげーことになってます。
美しさだけにこだわった、現実無視の潔い作り。
ストーリーは後付けで、とにかくこの映像を作りたかったんだな、というのがまるわかりの、愉快なほどのものすごさと美しさ。
あちこち、マジで吹き出しました。
壮大すぎるとお笑いになるという、見本がそこに。
今どきマンガでもここまではないよ、というバカバカしさを、本気でやっているあたり、笑いはときに感動の域に達します。
この映画を嫌いな人の気持ちも、バカにする人の気持ちもよくわかる。
すべてにおいて、やりすぎてるわ。
でも、嘘を嘘とわかってヅカで萌えることのできるわたしには、こーゆータイプの虚構はまったくもって問題ナシ、純粋にたのしかった。
あー、きれーだわー。
個人的には「赤」のシーンの情念が好きだなー。ツッコミどころは満載だが、いちばん人間の愚かさが出ていて、昼メロを美しく演出するとこーなる、みたいなスタンスが俗物のわたしにはウケた。ヒロインがいちばん妖艶で美しいのもこの「赤」じゃないか?
主役の無名(ウーミン)@ジェット・リー、たしかにみんなが言う通りのタカシ・オカムラだなー。彼がもっと男前なら、あるいはせめて岡村に似ていなければ、もう少し突発的な笑いの発作も少なくすんだかもしれないんだが。
飛雪(フェイシュエ)@マギー・チャンがあちこち「フケた常盤貴子」「少し若い浅野温子」に見えてしょーがなかった。わたしは吹き替えで見たんだけど、声が浅野温子に似ていて、余計に愉快だった。美人なのかおばさんなのか、とても微妙だが、それでもたしかに美しい。しかし、化粧は濃い(笑)。
トニー・レオンは言うまでもなくかっこいいし、王様役の人がまた色気のある男前で、いい感じ。
そして、これぞ中国映画、の人海戦術。いいなあ、こーでなきゃなー(笑)。
とにかく、意外なほどたのしかったのよ、『HERO』。
でもここまで評判が悪いと、大きな声で言えないなあ(笑)。
監督チャン・イーモウ、出演ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン。
最初に『HERO』の予告編を見たのは、なんの試写会でだったかな? ふつーの映画館の予告よりずっと早くに目にした。周囲からもなんの情報もなく、とにかくそのものすげー映像に口が開いた状態。
これはもう、見るしかないなあ、と思った。
わたしは当たらなかったので試写会には行けなかったけれど、先に試写を見た友人知人たちから情報が入りはじめる。
これがもー、全員口をそろえて「駄作!」と叫ぶ。
唯一、WHITEちゃんだけが苦笑いとともに「所詮中国映画と思って見たら、それなりにたのしめるよ」と言っていた。
百聞は一見に如かず。
自分の目で見、心で味わいませう。
つーことで、残暑のなかいつもの映画館へ自転車をとばす。
映画は映画館で、芝居は劇場で。本はひとりで。自宅で小さな画面でビデオを見るのでは、その映画や芝居のほんとうの力はわからない。ひととおしゃべりしながらぱらぱらめくっても、その本のほんとうの力はわからない。
とくに、『HERO』みたいな映画は、映画館で見なきゃ絶対おもしろくないだろー、とわかりきっているので、自転車ぎこぎこ。
映画館でなきゃ絶対たのしめない、とはじめからわかっている、という前提からして駄作のかほりはしているよ。
でもそれは、悪いことではないと思うんだ。映画なんだから、映画館を前提に作られていてもいいじゃん、と思う。
たとえば、携帯電話の待ち受け画像のつもりで作った画像を、大きなモニターに映して「解像度が悪い!」と文句つけても仕方ないよーなものでね。
映画は映画館で上映されることを前提に作られているのだから、わたしは映画館へ行く。わたしもわたしの書いた仕事用の文章を、正しい状況で読んでから評価して欲しいからな。自分がして欲しいことは、ひとにもしてみるさ、できる範囲で。
てなことを、えんえん最初に書くのは、「誉める人がいない」映画を、わざわざお金を出して映画館に行って、「駄作! 金返せ!」と言う場合の布石だ。言い訳だ。
わたしは映画を正しく味わうための努力はしたわ。だから、文句を言ってもいいわよね? と(笑)。
ここまで言い訳しておいて、覚悟も決めて、見たのよ、『HERO』。
ストーリーは……ええと……あんまし、なかったよーな……。
王様と、王様を狙う刺客を退治した男が、向かい合ってお喋りするだけの話。
……それだけ、なんだよな。
ただ、男の語る物語が、一転二転する。
最初はAと言っていたのが、王に「それはおかしい。ほんとうはBだろう」とつっこまれ、「おしい。じつはB’です」ということになり、でもさらに真実はCだった、てなふーにころころ変わっていくの。
かなしいのは、真実が最後のCだけであるにもかかわらず、嘘八百のAやBやB’も全部、長い時間をかけて「映画」として作られてしまっていること。それを長々と見せられたあとで「てのは全部嘘」てのを何回もやられると、「じゃあ今までの時間はいったいナニ?!」と詐欺にあったよーな気分に。
見ながら『MISTY』(制作時は天海祐希主演、フタを開けてみたら豊川悦司主役、だけど現在発売されているDVDには「金城武主演」と印刷してある、みょーな映画。もちろん映画館で見たさ)みたいだなー、とか思ったよ。
ストーリーはほとんどない、もしくは単純、と言っていいだろう。
この映画を駄作と言う人は全員、ストーリーを責めている。
そりゃーまー、わかるさ。
しかし。
わたしはこの映画、たのしかったのだわ。
あららびっくり。
これだけ覚悟して見たのに、ぜんぜんOK、ふつーにたのしかったわ。
もちろん、覚悟して見たのがよかった、てのはあるだろうけれど。
でも、なんの予備知識もなく試写会で見ていても、わたしはけっこー好きだったと思うよ。
ツボがあるから。
わたし、「王者の孤独」というテーマが好きなのだわ。
『王家に捧ぐ歌』で、アムネリスが泣きながらでも、ラダメスを処刑するしかないこととかね。
数年前にヒットした壮大な中国映画があったよね? もータイトルも覚えてないが。中国皇帝と刺客の話。アレもツボだったのよね。
暗殺をおそれ、10年間、誰ひとり100歩以内に近づけたことはない、という孤高の王。
彼の心を理解した者は、100歩以内に入ってきた者は、ただひとり、彼を殺しにやってきた刺客だけだった……。
刺客はあえて剣をおさめ、王を殺さずに去る。
3年後、その刺客を討ち取ったという男が、王の前に現れる。男女の痴情のもつれを利用して刺客を討ち取ったという。
王は言う。あの崇高な刺客が、痴情のもつれごときで死ぬはずがない、と。
もしもあの刺客が死んだというなら、それは命を懸けて男に使命を託したはずだと。
使命……すなわち、王の暗殺を。
王様、それって……刺客が命がけで自分を愛しているはずだと言っているよーなもんですが?(笑)
ホモネタはおくとして、純粋に「王の孤独」がツボでした。
この世でただひとりの、魂の親友をその手で処刑しなければならない痛みと、それでも立ちつづける強さと誇りと責任と。
そして、暴力による支配から、平和のための力の集権へと変わっていくあたり、『王家…』のラストのようですな。
きれいごとにすぎなくても、わたしはこーゆー展開が好きです。
好きなタイプの物語が、美しい映像で展開していくのよ。そりゃー、たのしいでしょう。
映像は、ものすっげーことになってます。
美しさだけにこだわった、現実無視の潔い作り。
ストーリーは後付けで、とにかくこの映像を作りたかったんだな、というのがまるわかりの、愉快なほどのものすごさと美しさ。
あちこち、マジで吹き出しました。
壮大すぎるとお笑いになるという、見本がそこに。
今どきマンガでもここまではないよ、というバカバカしさを、本気でやっているあたり、笑いはときに感動の域に達します。
この映画を嫌いな人の気持ちも、バカにする人の気持ちもよくわかる。
すべてにおいて、やりすぎてるわ。
でも、嘘を嘘とわかってヅカで萌えることのできるわたしには、こーゆータイプの虚構はまったくもって問題ナシ、純粋にたのしかった。
あー、きれーだわー。
個人的には「赤」のシーンの情念が好きだなー。ツッコミどころは満載だが、いちばん人間の愚かさが出ていて、昼メロを美しく演出するとこーなる、みたいなスタンスが俗物のわたしにはウケた。ヒロインがいちばん妖艶で美しいのもこの「赤」じゃないか?
主役の無名(ウーミン)@ジェット・リー、たしかにみんなが言う通りのタカシ・オカムラだなー。彼がもっと男前なら、あるいはせめて岡村に似ていなければ、もう少し突発的な笑いの発作も少なくすんだかもしれないんだが。
飛雪(フェイシュエ)@マギー・チャンがあちこち「フケた常盤貴子」「少し若い浅野温子」に見えてしょーがなかった。わたしは吹き替えで見たんだけど、声が浅野温子に似ていて、余計に愉快だった。美人なのかおばさんなのか、とても微妙だが、それでもたしかに美しい。しかし、化粧は濃い(笑)。
トニー・レオンは言うまでもなくかっこいいし、王様役の人がまた色気のある男前で、いい感じ。
そして、これぞ中国映画、の人海戦術。いいなあ、こーでなきゃなー(笑)。
とにかく、意外なほどたのしかったのよ、『HERO』。
でもここまで評判が悪いと、大きな声で言えないなあ(笑)。
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