猫のエサが、缶詰になった。
 それまではドライフード、カリカリだっのに。

 猫の愛を得たいがためだけに、わたしの親たちが猫に缶詰を与えたせいだ。
 口の肥えた猫は、おかげでカリカリに見向きもしなくなった。
 朝起きると、「親の家に連れて行け」と鳴く。
 つれていけば、親たちが「おー、よしよし」と缶詰を食べさせる。
 家に連れて帰ろうとしても「イヤっ」と言って、わたしの手から逃げる。

 むかーっ。
 アンタ、どこの家の子よっ?!
 飼い主は誰よっ?!

 そうやって数日が過ぎた。
 猫は、1日の大半を親の家で過ごした。わたしの家には、夜、寝に帰ってくるだけだ(わたしが無理矢理連れ戻す)。

「ほら、缶詰買ってきてあげたから、アンタんちで食べさせなさいよ」
 と、ある日母がわたしに猫缶の束をくれた。
 えっ、わたしの家でも缶詰を?
「用事があってアンタんちに行くじゃない。そのとき、家に猫がいないのがさみしくてねえ」
 そりゃいないよ。猫は今、缶詰で餌付けされて親の家にいるんだもの。
「アンタがアンタの家にいなくてもなんとも思わないけど、アンタの家に猫がいないとさみしくてしょうがないわ。だから、缶詰あげるから猫と一緒に家に帰りなさい。そして、わたしが用事があってアンタの家に行くときに、猫がいるようにしなさい」

 …………そんな理由ですか。

 とゆーわけで、わたしの家でも猫に缶詰をあげることになりました。
 猫缶を食べさせるようになった途端、猫は「親の家に連れて行け」とは言わなくなりました。
 ほんとーに、缶詰だけが目的だったんだな、おまえ……。

 

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