猫は狭いところが好き。

 最近の彼のお気に入りは、家具の隙間。部屋の角、ふたつの家具と家具の間に、20cm四方の隙間がある。そこにわざわざ入る。
 なんといっても20cmしかないので、なにもできない。苦労して入ってなにをするのかと見ていれば、そこで彼は神妙に正座している。
 正座。
 両手両足をきちっとそろえ、正面を見て坐っている。
 ただ、正座。
 他の体勢はとれないので、寝ることもできない。
 ずっと、正座。
 他になにもできない。
 ……やがて、彼はまたもそもそと出てくる。

 なにがしたいんだ?

 1日に1回は、絶対そこへ入る。
 入ってただ正座をし、また出てくる。

 猫は狭いところが好き。

 彼はマウステーブルの上がお気に入りだ。
 ぴったりと収まっている。
 たしかに、マウステーブルは猫が丸くなるにふさわしい大きさだろう。専用に作ったのか、と言いたくなるくらい、ぴったりだよ。
 猫は、カラダにぴったりの場所に入る、という習性がある。それも、飼い主のそばで、「ぴったりの場所」を探す。パソコンの前にいることの多いわたしの飼い猫だから、マウステーブルの上がお気に入り、ってのは、仕方のないことかと思う。

 でもな。
 すごく、不便だ。

 今も、彼のカラダの下敷きになっているマウスを使うべく、手を突っ込んだ。
 すると彼は、「なにするのっ?!」という驚愕の顔をしてわたしを見る。
 いや、なにするのって、マウスがね、あんたの腹の下なんだよ。
 ごそごそと猫のカラダ越しにマウスを動かす。
 猫は「信じられない……ッ!!」という顔でわたしを見る。
 なにを大袈裟な顔してんだよ、こっちは使いにくいのを我慢してマウステーブルの上を貸してやってるってのに。ああそれにしても使いにくい。ん?
 ふと見ると、わたしの手は猫の股間に突っ込まれる形になっておりました。
 ……えーっと……でも、そこにマウスがあるわけで……。
 両足の間に手を突っ込まれた猫は、まことにいやぁな顔でわたしを凝視している。

 ……えっと。
 わたしべつに、アンタの股ぐらをいじりたいわけじゃなくてだね。
 ただ、マウスを……。

 猫は傷ついた顔で去っていきました。

 ……痴漢? アンタわたしを痴漢だと言いたいのかっ?!
 ムカつくぞ、猫!!

 とゆー穏やかな昼下がり。

 

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