すっかり忘れていた宙組初日。
 とりあえず行ってきました。仕事が切羽詰まっているので、仕事目的でもありました。家にいると誘惑が多くてはかどらないけど、電車の中とかだと他にすることがないからはかどるのよ。
 往復の電車と、客席で仕事する気満々で、出掛けました。

 ……仕事できたの、往きの電車だけだった……。

 早く客席に坐って仕事しようと、大して選り好みもせず、てきとーなチケットを買った。
 にもかかわらず。
 たまたま、隣席のサバキを同時に買った人がいて、なんかなりゆきでその人と同行。ずっとお喋りしてました……なんのために早く行ったの、なんのためにあんなどーでもいい席を早々に買ったの。
 その方は、サバキには慣れていらっしゃらないのか、とっても純なことをいろいろとおっしゃっていました……。
「初日なのにサバキがあるなんて、ラッキー」
 あの、初日は大抵サバキの嵐です。
「この間の星組の初日がサバキだらけだったから、トップサヨナラでもなんでもない宙組も、サバキあるかもと推理してみたの! 当たってたわ!」
 星組初日はすごかったらしいですね。1000円あれば観られたと報告を受けていました。
「しかも、こんないい席を安く買えるなんて! なんて幸運なのかしら!」
 2階S席が4000円なんて、ぜんぜんすごくないっす……。今まではもっと……。
「**のときとか、**のときとか、当日券に並んで、やっと取れたのよ。B席の端っこだったけど」
 ……サバキでならその公演、ふつーに1階S席取れたと思います……。しかも、安く……。
 とまあ、全部この調子で。
 なんだかわたし、自分がとってもヨゴレた人間のように思えました。
 もっと謙虚にならなきゃだわ。そうよね、前売りを押さえていない身でふらりと劇場に行って、S席を4000円で買えたんですから、もっと感謝しなきゃいけませんね。どこでもいーや、早く席に着きたいから、と適当に買っただけだなんて……罰当たりな。
 なんかいろいろ、心洗われる想いで、その方とお喋りしていました。
 また「学生さん?」と聞かれた。いやその、たぶんわたし、あなたと似たよーな年齢だと思います……。

 んでもって帰りは、大劇場勤務のワゴンねーちゃんとばったり会う。
 そのまま、おねーちゃんと一緒に帰った。おねーちゃんちとわたしんちは、駅2つしか離れてないのよ。つまり電車の中で仕事をする予定は、崩れ去った……。

 なんのためにわざわざ今日行ったんだーっ。仕事するためだろーっ?!
 純粋に観劇だけなら、来月でも良かったのに……めそめそ。
 すべて、流されやすいわたしが悪いのよ……。

 
 で。宙組公演。

 最近とんと本を読まなくなったわたし。
 そーいや、本業でひどいめに遭ってから、小説ってほとんど読まなくなってるんだよなあ。昔は活字中毒の小説中毒だったんだけど。今じゃさっぱりさ。……まだ立ち直ってないのかな、わたし? あれから8年くらい経ってると思うんだが。
 いやとにかくわたし、原作読んでないんだわ。読んでないどころか、存在も知らなかった。昔のわたしからは、考えられないことに。

 原作なんかなーんにも知らないまま、なんの予備知識もないままに観る。
 『傭兵ピエール』。

 いちばん「こまった……」と途方に暮れたことは。

 ピエールがかっこよく見えない。

 ってことですなー。
 わたしはたかこファンなので、たかこがやっているってだけで、ピエールには好感を持っています。持っているけど……こまった。この男、どーでもいー。
 感情移入できない……どこを観ればいいんだ、この芝居?

 荒くれ傭兵部隊の隊長ピエールは、ジャンヌ・ダルクという少女と出会う。略奪者とその被害者として。「神の声」に導かれ、フランスを救おうとしているジャンヌは、「使命を果たしたあとに純潔を捧げるから、今は見逃してくれ」と懇願し、ピエールはそれを受ける。
 ジャンヌはそののち「救世主」として有名人に。ピエールと再会してすったらもんだら、戦争しながら純潔をどーするのなんのと大騒ぎ。ならず者と聖女の恋はどーなるの?!てか。

 そのままの勢いで走ってくれればいいのに、途中でピエールはただののんだくれになるわ、時は流れるわ、たるいっす……。
 個人的に、クライマックスが最大の引っかかりなんだが、あれはいいのか? 原作がああなのか?

 クライマックスというのは、物質的な盛り上がりと、精神的な盛り上がりが必要でしょう。
 物質的っちゅーのは、「動き」、アクションとしての派手さ。戦争だったり人の生き死にだったり、とにかく見た目に派手に盛り上げる、「動いている出来事」。
 精神的っちゅーのは、「成長」、主人公の心が、物語の最初とはちがったところへ変化すること。悪人が改心したりとか、劣等感を乗り越えたりとか、そういうやつね。
 このふたつを派手にぶちかましてこその、クライマックス。

 『傭兵ピエール』のクライマックス、アレは……。
 物質的には、修道院襲撃とそのあとの宮廷のシーンだってわかる。
 んじゃ、精神的には?
 ……ヅカに精神を求めるなってか? まあ、そりゃそーなんだが。
 精神的クライマックス(=目に見えないものの盛り上がり)をヅカでは無理だとあきらめたとしても、わたしはあのクライマックスが納得できない。
 だって主人公、なにもしてないじゃんよ?
 すべてお釈迦様の掌の上、かよ。

 わたしの逆ツボのひとつなのよー、「お釈迦様の掌の上」ってやつ。
 我ながら逆ツボ多いとは思うけどさー。

 タカオくんは内気な男の子です。ある日タカオくんは、クラスのいじめっ子が子犬をいじめているところを見つけました。タカオくんは内気です。いじめっ子と戦うなんてこと、到底できません。ああ、でも、子犬が可哀想です。タカオくんはついに、勇気を振り絞って、いじめっ子の前に出ました。
「弱いものいじめはやめろ!」
 そこに現れたのは、学校の先生や、タカオくんのお母さんです。いじめっ子も一緒になってタカオくんに拍手を送ります。
「すごいわ、タカオ! なんてやさしくて、勇気のある行動なんでしょう。お母さんは内気なタカオが勇気を出すことができるように、お芝居を頼んだのよ」
「嘘ついててごめんな、タカオ。お前が勇敢な男の子になれるように、わざといじめっ子のふりをしていたんだ」
 勇敢なタカオくん! やさしいタカオくん!
 よかったね!!

 ……てな話が、大嫌いなのよーっ。
 タカオくん、それでほんとにいいのか? アンタそれ、操られてるだけじゃん。
 「タカオのため」だからって、嘘ついていいのか、お母さん。だましていいのか、クラスメイト。
 この場合、お膳立てがすべて嘘でも、そこでタカオが勇気を出したことは本当だから、ってことで、すべての嘘が正当化されるのよね。
 嘘は嘘。罪は罪。
 なのになんで、ぜんぶ「善」になるの? 「すばらしいこと」になるの?
 それ、「偽善」って言わないか?
 タカオが勇気を出さずに逃げ帰った場合は、どうなるんだ? いじめられていた子犬の立場は?

 ママというお釈迦様のお膳立てなしに、タカオが自分で悩んで傷ついて、それでも勇気を振り絞って立ち向かうこと。
 それでなきゃ、いやだ。
 主人公が、強大なものに都合良く操られて、それゆえに都合良くハッピーエンドなんて、いやだ。
 クライマックスならば主人公よ、自分で動け。他人の掌の上で棚ぼたの幸福で終わらせるな。

 ピエールがかっこよく見えない……。
 クライマックスでなにもしてない、他人に操られ、流されるだけの幸福をうれしそーに恭順する男なんか、ちっともかっこよくないよー。

 
 お花様のジャンヌは、とってもかわいかったです。さすがだなー。
 『聖なる星の奇蹟』の日記では文字数制限で書きそびれていたが、あの超絶駄作をそれでもなんとか支えていたのは、ひとえにお花様の踏ん張りがあったからだ。あのときのお花様は、痛々しいほどがんばっていたよ。ひとりで舞台全部背負ってたよ……涙。
 今回の役も、お花様だからこその清涼感がある。さすがだ。

 たかちゃんはなー、もう少しはじけてくれ。たのむ。

 みずしぇん(こう呼ぶとWHITEちゃんが嫌がるので、呼ぶ・笑)はかっこいー。女を使ってどんどん出世、が納得できる色男ぶり。

 かなみちゃん、いい女だ。うまい。
 アリスちゃんはお花様の二役かと思った。声で区別するしかない……。
 あいり、とても美しい……が、何故に退団公演で女役?
 リッキー、また悪役ですか……(笑)。健康的な丸い顔に貼り付けた悪の表情が、いかにも小物っぽくてよし(笑)。

 右京くん……あなたまたそんな役ですか……。脛が美しいけどさ……。

 コメディなんで、もっと日が経った方がたのしめるだろーなー。初日の喜劇はきついわ。

 とゆーあたりでもう、文字数がない。

 

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