今だ。
今なら、彼は眠っている。
抜き足、差し足。
音をたてないように、こっそりと支度をする。
これから家族で外食に行くの。
彼が眠っているうちに……。
家の前で待っている母に、
「やったわ、アイツは熟睡中だから、気づいてない」
と報告。
彼は寂しがり屋。干渉されるのはキライだけど、ひとりぼっちはさらに大嫌い。
家にひとりで残されるのなんか、耐えられない。
だからわたしが出掛けるときは必ず、
「どこへ行くんだ、オレを置いて行くな、ひとりにするな、オレもつれて行け!」
と、ぎゃんぎゃんさわぐ。
仕方ないのでいつも、親の家に預けに行く。
でも今回は、家族総出でお食事だ。親の家も空っぽになる。
彼を預けることができない。
だから抜き足忍び足。
彼が眠っているうちに……。
玄関でコートを着ているときに。
2階に、気配を感じた。
まさかっ。
振り返れば階段の上に、彼の姿が。
「がぁー……ん!!」
彼の顔には、驚愕がわかりやすく文字になって貼り付いている。ええ、マンガなみにわかりやすい。ベタフラ背景に白目になった姫川亜弓ばりだよ。
オレが寝ている間に、ナイショで出掛けようとしている……!!
裏切られた!!
とゆー、驚愕と傷心の顔なんだな。
しばし「がぁー……ん!!」と硬直していた彼は、はっと我に返り、大慌てで階下に降りてきた。
ぎゃんぎゃん、にゃーにゃー。
足元で鳴きわめく。
ああっ、うるさいっ。
エサをやって、水をやって、彼がよそ見している隙に家を出た。
つれて行けないのよ、親の家にも預けられないの。帰ってくるまでたかだか数時間、おとなしくしてろっつーの。
たかが猫。
たかが猫一匹ですとも!
でも、小さな生き物に足元にすがりつかれて、
「どこへ行くんだ、オレを置いて行くな、ひとりにするな、オレもつれて行け!」
と鳴かれたら、いい気はしませんて。
「あんたがもし将来、腰を悪くしたら、それは猫のせいね」
と、母は言う。
「1日何時間も、猫を膝に乗せてるせいね」
と。
わたしは在宅ワーカー。仕事は自宅でパソコンに向かうこと。
そして働いている間、猫はずーーーっと膝の上にいる。重い。
「そして、あんたが肩をおかしくしたら、それは猫のせいね」
と、母は重ねて言う。
「毎晩、猫に肩枕をしてやってるせいね」
と。
夜は猫と一緒に寝ているのだけど、1日何時間かは絶対、わたしの脇の下から腕の上に乗り、肩を枕にして寝るのよ。重い。
愛って……。
今なら、彼は眠っている。
抜き足、差し足。
音をたてないように、こっそりと支度をする。
これから家族で外食に行くの。
彼が眠っているうちに……。
家の前で待っている母に、
「やったわ、アイツは熟睡中だから、気づいてない」
と報告。
彼は寂しがり屋。干渉されるのはキライだけど、ひとりぼっちはさらに大嫌い。
家にひとりで残されるのなんか、耐えられない。
だからわたしが出掛けるときは必ず、
「どこへ行くんだ、オレを置いて行くな、ひとりにするな、オレもつれて行け!」
と、ぎゃんぎゃんさわぐ。
仕方ないのでいつも、親の家に預けに行く。
でも今回は、家族総出でお食事だ。親の家も空っぽになる。
彼を預けることができない。
だから抜き足忍び足。
彼が眠っているうちに……。
玄関でコートを着ているときに。
2階に、気配を感じた。
まさかっ。
振り返れば階段の上に、彼の姿が。
「がぁー……ん!!」
彼の顔には、驚愕がわかりやすく文字になって貼り付いている。ええ、マンガなみにわかりやすい。ベタフラ背景に白目になった姫川亜弓ばりだよ。
オレが寝ている間に、ナイショで出掛けようとしている……!!
裏切られた!!
とゆー、驚愕と傷心の顔なんだな。
しばし「がぁー……ん!!」と硬直していた彼は、はっと我に返り、大慌てで階下に降りてきた。
ぎゃんぎゃん、にゃーにゃー。
足元で鳴きわめく。
ああっ、うるさいっ。
エサをやって、水をやって、彼がよそ見している隙に家を出た。
つれて行けないのよ、親の家にも預けられないの。帰ってくるまでたかだか数時間、おとなしくしてろっつーの。
たかが猫。
たかが猫一匹ですとも!
でも、小さな生き物に足元にすがりつかれて、
「どこへ行くんだ、オレを置いて行くな、ひとりにするな、オレもつれて行け!」
と鳴かれたら、いい気はしませんて。
「あんたがもし将来、腰を悪くしたら、それは猫のせいね」
と、母は言う。
「1日何時間も、猫を膝に乗せてるせいね」
と。
わたしは在宅ワーカー。仕事は自宅でパソコンに向かうこと。
そして働いている間、猫はずーーーっと膝の上にいる。重い。
「そして、あんたが肩をおかしくしたら、それは猫のせいね」
と、母は重ねて言う。
「毎晩、猫に肩枕をしてやってるせいね」
と。
夜は猫と一緒に寝ているのだけど、1日何時間かは絶対、わたしの脇の下から腕の上に乗り、肩を枕にして寝るのよ。重い。
愛って……。
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