わたしの家の隣には、ひとり暮らしのおじさんが住んでいる。
おじさん、とゆーか、おじいさん、かな。それくらいの年齢の人。
うちは角なので、道に面した部分が大きい。でもお隣さんには少ない。
そしてお隣さんは、花が好き。植物を育てたいというので、うちの家の前を貸している。
つまり、うちの玄関前から角(角の家って、そこだけ壁が削られたよーになってるよね?)のあたりまで、お隣さんが育てているお花がずらりと並んでいるの。植木鉢、プランターなどがずらり。
わたしはひとり暮らしの独身の女の子。もういいトシだが、独身だから「女の子」だ。
女の子がひとりで暮らしている家の前が、花であふれている、てのは、良くないか? 良いだろう?
わたしは植物を育てるのは苦手だが、眺めるのは好きだ。そして、お隣のおじさんは育てるのが好き。
両者の利害は一致した。
だもんで、わたしの家の前は花でいっぱい。
最初のうちは、かわいいもんだった。
植木鉢がいくつか並んでいる程度。
12月になればポインセチアなんかが置かれ、とっても女の子らしい、かわいい玄関になった。
時が経つにつれ、花の数は増えていく。
どこまでも、増えていく。
……あの、おじさん。どこまで増やすんですか……? もう置き場所、ほとんどないですが……つーか、そこは長年自転車を置いていたスペースなんだけど……わ、わかりました、自転車の方を移動させます。
お隣のおじさんは、花だけではなくどーやら、かわいいものも好きみたいだ。
植木鉢の間や中に、陶器の動物たちが置かれている。
小首を傾げたリスさんとか、かわいいクマさんとか、七人のこびととかな。
……これもだんだん、増えている。
そーいやおじさん、一人暮らしなのに、彼の家の表札は季節のお花があしらってあるリースだ。玄関だけ見たら、女の子の家だと思われるぞ?
なんか、わたしの性格とはかけ離れた玄関になってきている気がする……と、小首を傾げたリスさんと目が合うたびに思う。
そして、お花たちの間に、ある日奇妙なものが置かれていた。
全長150センチくらいでしょうか。
巨大な、細長い赤いガラスの花瓶。
さすがにこれには、おどろいた。
「あの……なんなんですか、コレ……?」
目を点にしたまま、お花にお水を遣っているおじさんに聞きました。
「ああ、あるお店でもういらないって言うんで、もらってきたんだ」
おじさんは意気揚々と答える。
もらってきたって……。
どう考えても、ホテルのロビーとか、大きなお店とかでライトをあびて飾られているよーな花瓶なんですけど。
だって高さが、こどもくらいありますぜ。
当然大きすぎるから、花なんか活けられない。これに活けることができる人は、プロのコーディネーターだけだろう。
道を行くいろんな人が足を止め、おじさんに話しかける。
「これ、なんですか……?」
おじさんはうれしそうに説明する。
そりゃ、理解できずに質問するだろーよ。
道ばたに巨大な花瓶(しかも花は活けてない)があったら。
かわいいものが好きな、花好きのおじさん。
そう思っていたんだけど。
この花瓶のあたりから、疑問が生じる。
そして、今日。
わたしは信じられないモノを目にする。
お花で埋まった、わたしの家のエアコンの室外機の上に、それはあった。
木彫りの、熊の置物(黒塗りの台付き)。
ふつー玄関とか、応接間なんかによく置いてある、躍動的な姿をした熊の置物。
もらうもんなんですかね、たいていの家にあるよね。こんなの趣味じゃなかったり、置きたくなんかないだろうな、って人の家にも、何故かちゃっかり置いてあるから、なにかしら日本家屋には必要不可欠な因習があるのかもしれない。
その、熊の置物。
それが、わたしんちの外壁に沿ったお花畑の中に。
エアコンの室外機の上に。
……ガーデニングをたのしむ人たちは、たしかにお花の間に陶器の置物を置く。動物を置いたりする。
でも。
木彫りの熊は、置かないだろおっ?!
おじさん。
かわいいものとお花が好きなおじさん。
ひょっとして。
ひょっとしておじさん、実は飾れるものなら、なんでもいいの……??
……道行く人たちに、どう思われてるんだろう。
木彫りの熊を植木鉢の間にディスプレイする、ひとり暮らしの30女の家、って。
おじさん、とゆーか、おじいさん、かな。それくらいの年齢の人。
うちは角なので、道に面した部分が大きい。でもお隣さんには少ない。
そしてお隣さんは、花が好き。植物を育てたいというので、うちの家の前を貸している。
つまり、うちの玄関前から角(角の家って、そこだけ壁が削られたよーになってるよね?)のあたりまで、お隣さんが育てているお花がずらりと並んでいるの。植木鉢、プランターなどがずらり。
わたしはひとり暮らしの独身の女の子。もういいトシだが、独身だから「女の子」だ。
女の子がひとりで暮らしている家の前が、花であふれている、てのは、良くないか? 良いだろう?
わたしは植物を育てるのは苦手だが、眺めるのは好きだ。そして、お隣のおじさんは育てるのが好き。
両者の利害は一致した。
だもんで、わたしの家の前は花でいっぱい。
最初のうちは、かわいいもんだった。
植木鉢がいくつか並んでいる程度。
12月になればポインセチアなんかが置かれ、とっても女の子らしい、かわいい玄関になった。
時が経つにつれ、花の数は増えていく。
どこまでも、増えていく。
……あの、おじさん。どこまで増やすんですか……? もう置き場所、ほとんどないですが……つーか、そこは長年自転車を置いていたスペースなんだけど……わ、わかりました、自転車の方を移動させます。
お隣のおじさんは、花だけではなくどーやら、かわいいものも好きみたいだ。
植木鉢の間や中に、陶器の動物たちが置かれている。
小首を傾げたリスさんとか、かわいいクマさんとか、七人のこびととかな。
……これもだんだん、増えている。
そーいやおじさん、一人暮らしなのに、彼の家の表札は季節のお花があしらってあるリースだ。玄関だけ見たら、女の子の家だと思われるぞ?
なんか、わたしの性格とはかけ離れた玄関になってきている気がする……と、小首を傾げたリスさんと目が合うたびに思う。
そして、お花たちの間に、ある日奇妙なものが置かれていた。
全長150センチくらいでしょうか。
巨大な、細長い赤いガラスの花瓶。
さすがにこれには、おどろいた。
「あの……なんなんですか、コレ……?」
目を点にしたまま、お花にお水を遣っているおじさんに聞きました。
「ああ、あるお店でもういらないって言うんで、もらってきたんだ」
おじさんは意気揚々と答える。
もらってきたって……。
どう考えても、ホテルのロビーとか、大きなお店とかでライトをあびて飾られているよーな花瓶なんですけど。
だって高さが、こどもくらいありますぜ。
当然大きすぎるから、花なんか活けられない。これに活けることができる人は、プロのコーディネーターだけだろう。
道を行くいろんな人が足を止め、おじさんに話しかける。
「これ、なんですか……?」
おじさんはうれしそうに説明する。
そりゃ、理解できずに質問するだろーよ。
道ばたに巨大な花瓶(しかも花は活けてない)があったら。
かわいいものが好きな、花好きのおじさん。
そう思っていたんだけど。
この花瓶のあたりから、疑問が生じる。
そして、今日。
わたしは信じられないモノを目にする。
お花で埋まった、わたしの家のエアコンの室外機の上に、それはあった。
木彫りの、熊の置物(黒塗りの台付き)。
ふつー玄関とか、応接間なんかによく置いてある、躍動的な姿をした熊の置物。
もらうもんなんですかね、たいていの家にあるよね。こんなの趣味じゃなかったり、置きたくなんかないだろうな、って人の家にも、何故かちゃっかり置いてあるから、なにかしら日本家屋には必要不可欠な因習があるのかもしれない。
その、熊の置物。
それが、わたしんちの外壁に沿ったお花畑の中に。
エアコンの室外機の上に。
……ガーデニングをたのしむ人たちは、たしかにお花の間に陶器の置物を置く。動物を置いたりする。
でも。
木彫りの熊は、置かないだろおっ?!
おじさん。
かわいいものとお花が好きなおじさん。
ひょっとして。
ひょっとしておじさん、実は飾れるものなら、なんでもいいの……??
……道行く人たちに、どう思われてるんだろう。
木彫りの熊を植木鉢の間にディスプレイする、ひとり暮らしの30女の家、って。
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