宝物をいっぱい持っている。
2002年10月31日 その他 今日はヤマダさんとデート。
ヤマダさんは旧友なので、どーしても昔の話が出る。
「あのころ、緑野んちはすごいことになってたねえ」
「ああ、毎週誰か来てたよね」
「毎日だったでしょ?」
……そういや、毎日だったよーな。
あのころ、というのは、学生時代のころだ。
まだうちにおじーちゃんとおばーちゃんがいて、盲目の猫がいたころ。
わたしが3人と1匹で暮らしていたころ。
「おじーさんとおばーさんには、悪いことしたと思うよ。あたしたち毎日押しかけてたじゃない?」
「なれてたと思うよ。高校生んときもわたしの部屋って、友だちのたまり場だったからねー」
「それにしても、毎日はひどかったよね。緑野にはプライベートなかったでしょ、あの状況じゃ」
なかった。
たしかに、なかった。
ほぼ毎日、誰かがわたしの部屋にいた。遊びに来ていた。
たとえわたしが留守でも、勝手に部屋にあがっていた。
「緑野んちに行けば、かならず誰かいるからさー。当時は携帯電話なんかなかったから、誰かと連絡取りたかったらまず、緑野んちに電話かけたよね」
「そーねー。ぺーちゃんから電話かかってきて『緑野には用ないの、WHITEちゃんに渡すモノがあるんだけど、WHITEちゃんいる?』とかな。『いるよ』って返事したら、10分後にはぺーちゃんも現れているという」
「WHITEちゃん、ほとんど緑野んちに住んでなかった? 絶対にいたよーな」
「あの子は電話嫌いだったから、絶対前もって電話でわたしの都合を聞いてきたりしなかったからねー。勝手に現れて、勝手にくつろいでいたよ……ほぼ毎日」
友人たちの間でいちばんせまい家に住んでいたのは、たぶんわたしだと思う。
なのに何故か、わたしの部屋がたまり場だった。
たぶん、楽だったんだろうね。
友人たちにとって、老人ふたりと暮らすわたしは、ほとんどひとり暮らしと変わらなかったんだ。「オヤ」という気疲れする生き物と一緒に暮らしていない友人、てことで、訪問しやすかったんだと思う。
まあ、せまい部屋にあらゆるオタクグッズをそろえていたせいもあるな。
自分の家では見られないビデオ(笑)なんかは、わたしの部屋に持ってきて見てたもんなー、あいつら。
毎日、誰かがいた。
みんなお菓子やマンガ、ビデオをさげて、勝手に現れては帰っていった。
えんえんえんえん、他愛ない話をしていた。
ハタチそこそこの娘たちの、楽園だった。
終わらない祭りだった。
「あのせまい部屋に、よくあれだけの人数が入ったよね……今ならひとりとして泊まったりはできないよ……足の踏み場ないし」
「6人くらい泊まったりしてた? 坐ったまま寝たりしてたよね、横になるスペースなくて」
「泊まりじゃなくても、ベッドの上はWHITEちゃんの定位置だったしな。あの子、わたしの部屋に入るとまっすぐにベッドに行くから」
「コミケにもみんなで行ったね」
「大森だっけ、あの一升瓶伝説!」
「TAMAちゃん30回コール事件とか」
「サンルートに泊まれなかった事件もあったよね」
「『ホテルも揺れるぜ』はサンルートだっけ。クリスマスの日にチェックアウトしてる女はただひとり。他はみんな男だよーっ」
「そりゃ、チェックアウトは男だよねえ。女の子はみんなロビーのソファで待っている(笑)」
「『触っていい?』は大森だっけ」
「あれは三條苑。『さよなら三條苑』って作ったじゃん」
「作った作った。ていうかあたしたちなんで、ことあるごとに本作ってたの?」
「自分たち主役の内輪受け本を、なにかしら事件があるたびに作っていた……」
「アイタタタ」
「アイタタタ」
人生でいちばんバカだった、あのころ。
むやみやたらなパワーだけはあった。
「今、若い子が多少バカでおいたをしてても、目くじらたてる気にはならないよ。わたしたちもバカだったもん、君たちの年頃には、って」
「そうそして、今バカでおいたをしている子どもたち、君たちもいずれ、『なんであんなに恥ずかしい真似ができたんだーっ』と穴を掘って埋まりたくなる日が来る(笑)」
そして、人生でいちばんバカな時代を共有した友は、みんなが宝物になる。
ヤマダさんは旧友なので、どーしても昔の話が出る。
「あのころ、緑野んちはすごいことになってたねえ」
「ああ、毎週誰か来てたよね」
「毎日だったでしょ?」
……そういや、毎日だったよーな。
あのころ、というのは、学生時代のころだ。
まだうちにおじーちゃんとおばーちゃんがいて、盲目の猫がいたころ。
わたしが3人と1匹で暮らしていたころ。
「おじーさんとおばーさんには、悪いことしたと思うよ。あたしたち毎日押しかけてたじゃない?」
「なれてたと思うよ。高校生んときもわたしの部屋って、友だちのたまり場だったからねー」
「それにしても、毎日はひどかったよね。緑野にはプライベートなかったでしょ、あの状況じゃ」
なかった。
たしかに、なかった。
ほぼ毎日、誰かがわたしの部屋にいた。遊びに来ていた。
たとえわたしが留守でも、勝手に部屋にあがっていた。
「緑野んちに行けば、かならず誰かいるからさー。当時は携帯電話なんかなかったから、誰かと連絡取りたかったらまず、緑野んちに電話かけたよね」
「そーねー。ぺーちゃんから電話かかってきて『緑野には用ないの、WHITEちゃんに渡すモノがあるんだけど、WHITEちゃんいる?』とかな。『いるよ』って返事したら、10分後にはぺーちゃんも現れているという」
「WHITEちゃん、ほとんど緑野んちに住んでなかった? 絶対にいたよーな」
「あの子は電話嫌いだったから、絶対前もって電話でわたしの都合を聞いてきたりしなかったからねー。勝手に現れて、勝手にくつろいでいたよ……ほぼ毎日」
友人たちの間でいちばんせまい家に住んでいたのは、たぶんわたしだと思う。
なのに何故か、わたしの部屋がたまり場だった。
たぶん、楽だったんだろうね。
友人たちにとって、老人ふたりと暮らすわたしは、ほとんどひとり暮らしと変わらなかったんだ。「オヤ」という気疲れする生き物と一緒に暮らしていない友人、てことで、訪問しやすかったんだと思う。
まあ、せまい部屋にあらゆるオタクグッズをそろえていたせいもあるな。
自分の家では見られないビデオ(笑)なんかは、わたしの部屋に持ってきて見てたもんなー、あいつら。
毎日、誰かがいた。
みんなお菓子やマンガ、ビデオをさげて、勝手に現れては帰っていった。
えんえんえんえん、他愛ない話をしていた。
ハタチそこそこの娘たちの、楽園だった。
終わらない祭りだった。
「あのせまい部屋に、よくあれだけの人数が入ったよね……今ならひとりとして泊まったりはできないよ……足の踏み場ないし」
「6人くらい泊まったりしてた? 坐ったまま寝たりしてたよね、横になるスペースなくて」
「泊まりじゃなくても、ベッドの上はWHITEちゃんの定位置だったしな。あの子、わたしの部屋に入るとまっすぐにベッドに行くから」
「コミケにもみんなで行ったね」
「大森だっけ、あの一升瓶伝説!」
「TAMAちゃん30回コール事件とか」
「サンルートに泊まれなかった事件もあったよね」
「『ホテルも揺れるぜ』はサンルートだっけ。クリスマスの日にチェックアウトしてる女はただひとり。他はみんな男だよーっ」
「そりゃ、チェックアウトは男だよねえ。女の子はみんなロビーのソファで待っている(笑)」
「『触っていい?』は大森だっけ」
「あれは三條苑。『さよなら三條苑』って作ったじゃん」
「作った作った。ていうかあたしたちなんで、ことあるごとに本作ってたの?」
「自分たち主役の内輪受け本を、なにかしら事件があるたびに作っていた……」
「アイタタタ」
「アイタタタ」
人生でいちばんバカだった、あのころ。
むやみやたらなパワーだけはあった。
「今、若い子が多少バカでおいたをしてても、目くじらたてる気にはならないよ。わたしたちもバカだったもん、君たちの年頃には、って」
「そうそして、今バカでおいたをしている子どもたち、君たちもいずれ、『なんであんなに恥ずかしい真似ができたんだーっ』と穴を掘って埋まりたくなる日が来る(笑)」
そして、人生でいちばんバカな時代を共有した友は、みんなが宝物になる。
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