さみしい……なんてさみしい千秋楽なんだ……。

「緑野さん、今日来るとは思わなかったよ」
 と、殿さんに言われた。
「そりゃ来るよ。主演のファンだもん」
 と返しながらも、わたしの方が聞き返したよ、
「殿さんこそ、今日来るとは思わなかったよ」
「だってチケットさばけそうになかったもん」
 そうか……そうだよね……。チケットさばけないもんね。自分で観るしかないよね。

 とゆー、さみしい会話がかわされた、雪バウ『ホップスコッチ』千秋楽。

 楽日だってのに、サバキの嵐。
 そして、案の定空席だらけ。
 わたしの前の席は空席、そしてその横にはいつものダフ屋が坐っていた。彼を客席で見るのははじめてだ。……売れなかったんだね……。
 前方センターに坐っていた殿さんは、「あたしの隣ずらっと空いてるんだよ、居心地悪いよ」と泣き声を上げる。

 そして千秋楽は、リピーターだらけ。
 ……笑いが起こらない……。
 が、がんばれ出演者。
 手に汗握る緊迫感。

 こんなにいろんな意味で疲れる公演もめずらしい。

 でもさでもさ、ほんとにがんばってたよ、出演者。
 いろいろ小技を効かしていてさ、前に観たときよりよくなっていたよ。
 とくに壮くん。
 がんばったねえええ。ほろり。

 そして、わたしの愛するしぃちゃん(笑)。
 そこにいてくれるだけでいいのよ、ああ、癒されるわ……。
 スーツ姿を眺めているだけでうれしい。だから目でたのしむ。たのしむ。そ、それだけだが……それだけしかないが……それでもいいの、そのために4500円払ったのよ、わたしはっ。

 『ホップスコッチ』を観ているはずのわたしは、何故か『アンナ・カレーニナ』のことを考えていた。
 あのときのしぃちゃん、良かったなー。善良で一生懸命だけが取り柄のヘタレ男って、大好きなんだよなあ。
 『ホップスコッチ』を観ているはずのわたしは、何故かグンちゃんさよならバウのことを考えていた。
 あのときのしぃちゃん、良かったなー。自分を二枚目だと信じているけど、じつはちっともかっこよくない、カンチガイしたヘタレ野郎って、大好きなんだよなあ。

 何故なの、神様。
 わたしは今、ここで『ホップスコッチ』を観ているはずなのに。
 わたしの心は過去を見つめたままです。
 神様、とてもかなしいです。
 神様、『ホップスコッチ』の作者を憎んでもいいですか……??

          ☆

 第九の練習、友人たちは欠席。ひとりぼっちだった。
 帰りは知らないおばさまと世間話なんぞしながら帰る。

「お仕事は……あらごめんなさい、まだ学生さんよね」

 わははは。
 まだ学生で通りますか、わたし。
 夜道の力(笑)。
 つーか、年配のご婦人ってたいていわたしの肩より背が低いから、きっと顔なんかろくに見ないで喋ってるんだろーなー。服装と体型だけで判断するんじゃないかしら。

  

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