ようやく『エースをねらえ!』を最後まで見た。
 WOWOWで放送していたやつを、録画だけしていて、まだ見ていなかったんだ。

 「3部作一挙放送!」というウリだったが、なんでTVシリーズは全部放映してくんねーんだ?
 TVアニメ『エースをねらえ!』のあとには『新・エースをねらえ!』があったはずだよね? 「♪泣きたいときはコートで泣けと あの人はあの人は教えてくれた♪」の主題歌で、ひろみたちはアメリカかどっかに行ってなかった? アニメの登場人物が英語で喋り、字幕が出ていたのが、子ども心にショッキングだったよ。

 わたしがリアルタイムで見た『エースをねらえ!』はこの『新・エースをねらえ!』だ。『エースをねらえ!』の方は見てなかった。のちにTVで映画版を見たから、それで得心していた。

 それが何年か前に再放送されたんだよね、『エースをねらえ!』。
 火曜日の深夜枠『アニメ大好き!』で。
 そのときはじめて、まともに『エースをねらえ!』を見た。
 いやー、おもしろかった。
 ビデオを録らなかったことを後悔したよ。
 たしかにね、笑える。時代のギャップに。お蝶夫人と藤堂さんに関しては、ギャグにしか思えません。身悶え系の恥ずかしさとおかしさ。

 だけど、おもしろかったんだ。

 時代のギャップに笑いの発作は起きるけど、それでもなお、おもしろかった。
 ひろみの成長と努力に、感動したさ。

 エンタメって、こうあるべきだねえ。
 気持ちいいよ、盛り上がりが。

 悪役は顔をゆがめて目がきらーん、あっ、靴に画鋲が! 口の下までもみあげ(カール付き)のある王子様はチャリンコで「乗りたまえ、送ってあげよう」、あこがれのお姉様はロングドレスで広大な西洋館に住み、とーぜん土足。
 いいなあ。なにもかもが「パーツ」として独立した強さがあるよ。
 ひとつひとつのモノが出来事が「そうでなくっちゃ!」というお約束で最高です。

 今回またその『エースをねらえ!』を1から見て。
 やっぱり藤堂さんのカール付きもみあげや、お蝶夫人の堂々たる「花の16歳、高校2年生♪」ぶりに目眩はしましたが、それでもたのしかった。感動した。
 前半の絵の汚さはすごかったが……。後半は原作の絵をなんとかモノにしたな、って感じでほっとする画面になっていたし。

 
 そして、『エースをねらえ!2』。
 わたしこれ、アニメで見るのははじめてかな。たぶん。前に放送していたのは知ってるけど、見損なっていた。
 原作では読んでいた。だから桂大吾コーチのことは知っている。

 Be-Puちゃんが「WOWOWのCMでちらりと見たんだけど……あれってホモの話?」と大真面目に聞いていたとーり、正気ぢゃねえ男の友情の物語。

 いやふつーさ……親友が不治の病だと知った途端、出家するかね。アンタ変だよ。
 なにかっちゃー、親友の幻と会話するなよ。それもドリーム入ってるよ。そのうち、桂さんの脳内の宗方さんの背中には、ピンクの羽が生えてくるんじゃないか?
「俺の天使、宗方。今日もきれいだよ」とか、話しかけそうでこわいな。

 桂コーチに関しては、まなあたたかい笑いを禁じ得ません。

 ま、それはともかく。
 起伏に富んだ物語を大変たのしく堪能しました。
 それは完結編の『エースをねらえ!ファイナルステージ』も同じ。

 独立した物語として、おもしろかった。
 でも。

 でもさ。

 あれって、『エースをねらえ!』なの?

 
 わたし原作、最後まで読んでないのね。『ファイナルステージ』の話はまったく知らない。アニメで今回はじめて見た。
 だから原作がどうだから、という話はわからない。
 原作まんまなのかそうでないのか知らないし、実はそんなことはどーでもいい。

 ただ、『2』と『ファイナルステージ』は、わたしにとっての『エースをねらえ!』ではないなと思った。

 だって、トンデモ度が下がり過ぎちゃってるもん。

 お蝶夫人も藤堂さんも、ふつーの人じゃん。
 『エースをねらえ!無印』のときの、トンデモない人たちじゃないじゃん。
 地に足の着いた、ふつーの人たちじゃんよー。

 こんな高校生いるか!(ビシッ!)
 こんな日本人いるか!(ビシッ!)
 こんな人間いるか!(ビシッ!)

 と、いちいちつっこみ入れずにはいれないよーな、バカバカしいけどものすごく濃い、魅力と破壊力を持った人たちだったのに。

 お蝶夫人は池田昌子の声でなきゃいやだ〜〜。あの気品あふれる声で「あたくし」って言ってくれなきゃいやだ〜〜(じたばた)。
 いつでもどこででもドリーム入って、勝手に自己完結する、こまったちゃんのお蝶夫人でなきゃいやだ〜〜。
 そしてそして、傲慢な女王様でなきゃいやだ〜〜!!
 弱くてヘタレなお蝶夫人なんか、わたしのお蝶夫人じゃない〜〜!!

 藤堂さんも森功至の濃い〜キザ声でなきゃいやだ〜〜。語尾は「たまえ」でなきゃいやだ〜〜。
 いつも場違いに明るくさわやかで「はっはっはっ」と笑ってくれなくちゃいやだ〜〜!!
 そしてそして、こいつ実は情緒が欠けてるだろ、てなくらい王子様してなくちゃいやだ〜〜!!
 弱くてヘタレな藤堂さんなんか、わたしの藤堂さんじゃない〜〜!!
 

 わたしはどうやら、『エースをねらえ!』の、あのトンデモな世界観を愛していたようです。
 異世界ファンタジーを見るハートで。
 剣と魔法の世界で戦争にあけくれ、身も心もぼろぼろになりながらも明日をめざす主人公に感情移入して感動するように、パラレルワールド日本を舞台にしたファンタジー『エースをねらえ!』を、愛していたのです。

 
 『2』と『ファイナルステージ』は、別ハートでたのしみました。
 でないとちょっと苦しい。
 声優も絵も世界観もちがうんだもん。

 ねえねえ、あの出崎統・杉野昭夫コンビって、どうよ?
 わたし実は、マンガ原作のアニメーション化において、この人たちの仕事はあまり、好きじゃないんだ。
 だってさ、マンガのアニメ化っていったら、原作を大切にして欲しいじゃん。マンガってのは、物語だけでなく、「絵」で語る部分も大きいんだから。
 それが、出崎・杉野コンビの手にかかると、原作無視して「彼らの」作品に作り替えられちゃう。
 同人作家が自分の絵で既存作品をパロディ化するみたいにね。
 その昔、『キャプテン翼』っちゅーマンガのパロディが一世を風靡していたころ、少女マンガのような可憐な日向小次郎や若林源三が当たり前にマンガになっていたよ。
 たしかに髪型や服装は同じ、言動も同じかもしれん。だが、顔の半分が目で星がきらきらして睫毛ぱっちり鼻筋通ってますのお前らが、日向や若林のわけがないだろおっ?! てなノリっすよ。
 たしかにひろみにしろお蝶夫人にしろ、パーツは合ってるよ。でもそれは本物のひろみたちじゃない。出崎・杉野コンビの、ひろみたちだ。
 絵も演出も、出崎・杉野コンビのオリジナルだ。
 出崎・杉野コンビのファンならいいだろうよ。でも原作のファンだったりしたら、つらいよ。

 先日アニメの『ブラックジャック』が放映されているのを見たんだがね。
 …………あれ、『ブラックジャック』じゃないっす。
 だって絵が。絵が、カケラも手塚治虫じゃないっす。ゲストキャラの美女なんて、『コブラ』に出ててもきっと不思議に思わず見てるよ……。
 つまり、『エースをねらえ!2』に出てても違和感ない手塚治虫キャラって、どうよ? てことさ。
 山本鈴美香と手塚治虫って、絵のタッチまったくちがうじゃん。
 なのに、出崎・杉野コンビの手にかかっちゃ、みんな同じさ〜〜。

 もちろん、マンガをそのままアニメにすればいいってもんじゃない。絵も演出も変わって当然だ。
 ただ、出崎・杉野コンビほど原作無視して「自分たちの」作品に変換してしまうことに、疑問を感じているんだ。
 『エースをねらえ!』だって『無印』のころは、がんばって原作の絵に似せようとしていたじゃん。それが、『2』以降は完全オリジナルだよ……。

 うまいんだけどね。出崎・杉野コンビ。
 これだけ実力があるのに、いや実力があるからか?、自己顕示力が強すぎて、残念だ。

 
 んでもって、実はみょーにおもしろかった『ファイナルステージ』。

 ひとりアメリカで黄昏れる藤堂さんのこと、心配にならなかった?
 わたしは心配でしょーがなかったよ。
 藤堂さんあなた、そんな受オーラ全開で「ボクは今傷ついてます。誰でも押し倒してください」てな風情でニューヨークなんかにいちゃダメよっ。シャワーあびたまんまの裸で、無防備にドアを開けちゃダメでしょおっ?! その男、アナタのこと狙ってるのかもよっ?!
 はらはらどきどき(笑)。
 子どものころには思いもしなかった心配だわ(笑)。

 んでもって、お蝶夫人とお蘭。
 どっちが受ですか?
 この人たち、すばらしすぎです。いつこのままカサブランカ群れ咲く世界へダイビングするのかと、はらはらしました。
 つーかお蘭、かっこいいなあ。惚れるよー。

  
 『エースをねらえ!』は変わってしまい、もう昔の『エースをねらえ!』じゃない。
 そして。
 わたしももう、昔のわたしではないのだ。
 ……汚れた大人になったもんだぜ。ふっ。


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