わたしはイベント好きのうれしがり屋なので、ヅカは初日に行くし、気になるお店はオープン日に行く。
 ミナミのビックカメラもそうだったし、キタのヨドバシカメラもそうだ。
 ビックカメラはなかなかにおいしかったが、ヨドバシはハズレ。特売品はなにも残ってなかったし、スタッフ少なすぎ。大阪をナメてるな、って感じだったよ。
 そのヨドバシのオープン日、わたしが買ったものは、電化製品ではなく、コムサストアの、人形だった。

 コムサストアの3階に、「コムサドール」っちゅーのがある。
 20種類くらいはあるだろう、やたらめったらかわいいぬいぐるみたちの中の1匹に、どーにもこーにも、惹かれてしまった。
 それは、サルだ。
 ひょうたん型の顔をした、茶色いサル。テナガザルらしく、手足はひょろりと長い。髪はふさふさと真ん中だけが立ち、今で言うならベッカム様ヘアかしらね。
 そのサルが、わたしのハートを直撃した。

 …………フアンに似てる…………。

 そう。『血と砂』の、フアンだ。我らがケロちゃんおめでとう初主演! の、フアンだ。
 そのころはまだ、『血と砂』の舞台の興奮が残っている時期だった。

 べつに、ケロがサル顔だと思っているわけでも、言っているわけでもない。ただ、そのぬいぐるみが、わたし的にみょーーーに、フアンを連想させるカオをしていたのだ。
 後日、同じくケロファンのクリスティーナ嬢にそのサルを見せたところ、「わかるような気がする(笑)」と言っていたので、わたしの目の錯覚だけでもないと思う。

 フアンに似ているなら、もうこれは買うしかないっ。
 せっかくのヨドバシオープン日に、なんでコムサで、よりによってぬいぐるみっ?! とゆーセルフつっこみは置くとして。

 さて、このコムサドール。
 なかなかに、愉快なシステムなのだ。

 売っているぬいぐるみたちは、おなかがからっぽ。綿が入っていないんだな。客が自分の好みで詰めることになってるの。
 わたしは自分で選んだサルの中に、願いごとを書いたカプセルを入れ、自分で選んだオルゴールを入れ、スタッフのおにーさんに、専用マシンで綿を入れてもらった。
 おにーさんが適量を入れてくれたのに、「なんかたよりない。もっと入れて」と言う。おにーさんは首を傾げながらも、さらに入れてくれた。
 教訓。プロの助言には従おう。
 わたしが「もっと」と言ったがために、わたしのサルはでぶでぶになった。腹がぼーんと張ったサルになっちゃったのよ。涙。
 次に、お洋服を選ぶ。
 いったい何種類あるんだ? 和洋の結婚衣装、スポーツ、民族衣装、職業服と、バラエティに富む。
 かわいい服は山ほどあるのに、わたしのサルには似合わない。でぶだからだ。腹が出ているので、トップスが腹の上で反っちゃうの。
 何着試着したかしら。自分の服でもこんなに迷わないぞ、ってくらい、迷ったわ。

 客にはスタッフがマンツーマンで付くのだけど、わたしに付いてくれたおねーさんは、快く試着三昧につきあってくれ、「でぶはなにも似合わないんだ……」と悲しむわたしをなぐさめてくれていた。
「ほら、この服がいちばん似合いますよ、かわいい!」
 スタッフのおねーさんと、同行していた友人のきんどーさんが口を揃えて誉めてくれた服は。

 赤いレスリング服だった……。

 あんなにいろんなかわいい服があるのに、よりにもよって……レスリング服……。
「たしかに、いちばん似合いますね……」
 と、わたし。
「ねえ。かわいいですよ」
 と、おねーさん。

「たしかに、かわいいです。でもわたし、レスリング服を着たサルを愛せるかどうか、自信がありません」

「………………」
「………………」
 無口になるおねーさんと、きんどーさん。

 でもま、買いました。
 だってこれしか似合う服がないし。

 さて、次は出生証明書発行手続き。
 なんとこのぬいぐるみたちは、ここで「生まれる」ことになっているそーな。お買いあげするお客様が「親」になるらしい。
 で、パソコンの前に坐らされ、データを入力する。
 ぬいぐるみに名前をつけるのはいいさ。
 問題は、親っちゅーか飼い主のデータの入力だな。

 わたしは、相当とほほな気分だった。
 だってこれ、絶対子ども対象に作ってあるよ。「おなまえ」とか「おとし」とか入れるんだぜぇ?
 最高年齢じゃないのか、オレ? とか思いながら、正直に入力する。
 次に待っているのは、「記念撮影」だ。
 生まれたばかりのぬいぐるみを抱いて、記念撮影。
「お願い、一緒に映って!」と懇願したのに、きんどーさんは「恥ずかしいからヤだ(笑)」と言って、わたしをひとりにする(涙)。
 どーせわたしはイベント好き、アンティークな椅子に坐ってサルと一緒に記念撮影。

 ……身長170近い、いいトシの女が、ぬいぐるみと記念撮影……。
 寒い。寒いよママン。

 写真付きの出生証明書には、しっかりとわたしの名前が「ちゃん付け」で、シャレにならない年齢と共に印刷されていた……。ふふふ(涙)。

 祭りの恥はかき捨て。
 その意識のもとに買った、サルのぬいぐるみ。
 名前はフアン。男の子。
 今はもうどこにやったかおぼえていない出生証明書に、ちゃんと記載してある。

 とまあ、長々とした前置きだが。
 この、サルのフアンの服を試着しまくっていたときに、迷わずわたしはスタッフのおねーさんに聞いたのだ。

「闘牛士の服はありますか?」

 いろんな職業服や民族服があるから、聞いたんだけど。答えはNO。
「ぜひ作ってください」
「企画室に伝えておきます」
 そんな会話をした。

 そして、あれから10ヶ月ほど経ったのかな。
 コムサドールから、手書きのダイレクトメールが来た。「新しいお洋服全27種入荷しました!」
 昨日壊れたプレステ2のメモリーカードを買いがてら、コムサドールへ寄ってみる。
 全27種っていったって、闘牛服はないよねぇ。と、思いつつ。

 …………あるし。

 あるんですよ、闘牛士!!
 ちょっとぉぉおおおっっ。

 買うしかないでしょう、奥さん!!(誰?)

 ジャケットとズボン、白いシャツにネクタイ。そして深紅のカポーテのセット。
 念のため、お店のサルに試着させてもらったけど、どーせうちのフアンはでぶだから、同じ着こなしにはなんないし、フアンがフアンである以上、闘牛服は買うしかないんだけどさっ。(へんな日本語)
 買いましたよ、闘牛服。
 色は黒。
 ちくしょー、なんで白じゃないんだ、フアンの闘牛服なら白だろおっ、とか思うけどもーそれはいい。

 帰ってさっそく着せましたよ、うちのフアンに。

 か、かわいいっっ。(親バカ)

 多少腹が出ているが、そんなことはどーでもいいのだ。
 フアンが「光の衣装」を着ている。
 そのことが重要なのだ。鼻息。

 わたしの意見でコムサが闘牛服を作ってくれたとは思わないが、自分が言ったとおりのものが目前に差し出されると、興奮するなあ。

 あとは、ゆうひだ。
 たのむコムサさん、レッサーパンダのぬいぐるみを作ってくれえ。あらいぐまでも可。
 そしたらわたし、そいつに盗賊の衣装(たしか第1弾の洋服の中にあったよね?)を着せて「プルミタス」と名前をつけるよ。
 そして、フアンと並べて、部屋に飾る。
 ああ、うっとり。

 

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